パワーストーン②

「パワーストーン」
 という言葉を聞いて、なぜか小学六年生の頃を思い出した。
 修学旅行で、勾玉を家族のお土産として買って帰った記憶が、パワーストーンに呼び起こされたらしい。
 特に有名でもない土産屋で、かなりの時間を悩みながら買っていた記憶だ。最初はちょっとした出来心だった。勾玉って格好よいな、と一つ買ってから、なぜか家族の分を買うことになっていた。それも、どれがよいだろうか? と自分の財布と相談をしながら、大事な時間をそれなりに費やしていた記憶がある。
 最終的に、家族の分と、自分のためにもいくつもの勾玉を買って、首にかけていた。その当時は、勾玉には不思議な力があるんじゃないかと思えていたし、自分なりに勾玉をお土産とする行為は、最大級の奉仕なんだ、となぜだか思っていた。
 父親には金運の金の勾玉を渡した。
 もしかすると、それで大金持ちになるんじゃないか、なんて期待もあった。
 だけど、結局、父は車のローンを返済することなく二年前にこの世を去った。
 だけど、パワーストーンが本当に全て無意味だとは思わない。それで救われる人もいるのかもしれないし、また、思い出にはなる。
 結果的に父は死ぬまで勾玉をキーホルダーとしてつけていたし、だからこそ僕は彼のことを最後まで憎みきれなかったんだと思う。
 だとしたら、あのお土産には意味があった。
 まあ、勾玉をパワーストーンという部類に入れれば、の話だが・・・。
「あ、ごめんなさい。突然で、その、パワーストーンっていうのは、何ていうか、その、別にいらなければ構わないんだけど・・・」
 僕が特に反応をしないので、琴美は視線を落として、小さくなった。僕としても、どうしたものか、とため息が漏れそうになるのを我慢して、ゆっくりと袖をひく。
「剣城さん、だよね」
「あ、うん! そう!」
 顔を上げた彼女は、とても嬉しそうだった。
「こんなところで会うとは思わなかったけど、どうして?」
 僕は自分で自分を指差した。
 その行為を理解した彼女は、なぜかまた嬉しそうに微笑んだ。
「覚えているのは当然だよ」
 その後、彼女は小さく何かを呟いたようだたが、僕にはそれが聞こえなかった。


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