ショート)薔薇の香りと男の子

ブログで知り合った優くんはいつも私に優しい

男子慣れしてない私は
段々と優くんに惹かれていった
気が合うし「もしかして運命的な出会い?」と
私はブログを書くのが楽しみになった

ブログを上げると
優くんは1番に「いいね」をしてくれ
「いつか会いたいな」
「キミと俺は猫みたいだね」
「キミを居場所にしていいかな」

私の期待は膨らむ一方で、優くんに会いたい
…なんて考える最中
優くんから、問い合わせを通じて
食事の誘いが来た

寝ても覚めても、優くんへの想い
見たことがない、優くん
優しいから絶対イケメンかもしれない
いや、ブサメンだったら…

約束の当日、駅の噴水前
「どの人が優くんなんだろう」
10分前に到着したが、それらしき人はいない

約束の時間になった
私の目の前を
薔薇の香りがする男の子が素通りした

目線だけ男の子に向けると
華奢で清楚な女の子に声をかけた
女の子は少し驚いた様子だったが
男の子に左手を出されて、女の子は右手を預けた

「優くん、まだかな」時間は3分過ぎ
5分過ぎ…電話番号すら知らないので
連絡が取れない

(それにしても、噴水前に女子ばかり
普段からこんなものかな)

不安になっていると、40代ぐらいの女性が
話しかけてきた

「失礼ですが
あなた、ブログをやっていませんか」
唐突に図星を突かれ、頷いた

女性は「もしかして、優くんと待ち合わせ?」
不安になりながらも「はい」と答える

「実は、あたしもなの
優くんから食事に誘われて」
…私、優くんに騙されちゃったのかな
ここにいる女性は、みんなそうなのかな

その女性と、周りにいる女の人に声をかけると
どの人も違っていた
女性は「ごめんね、ありがとう」
少し怒った顔で駅の構内に入って行った

出逢いのアプリにある、体験談みたいな
マヌケな自分が惨めになった
泣くに泣けず、帰宅してもブログは書けない

ベッドを背にして体育座りをしたまま
悲しみや怒りをぶつけることができず
一晩過ごした

悶々としながら3日が経過した、ブログはしてない

昼休憩、食事後に携帯でニュースを読むと
トップページにはあのとき見た
華奢で清楚な女の子に捜索願が出ていると
報道されていた

「うそ…」

そして5日後
女の子は山中からバラバラ遺体として発見され
同時に、綺麗な顔立ちの女が逮捕された

待ち合わせから5分後に
話しかけてくれた40代の女性で
優くんのお母さんだった