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読書感想文『令和元年のテロリズム』磯部涼著

この本を読んだ理由

最近、図書館に行くと「新刊コーナー」を見るようにしており、
その中で、あえて普段なら気に留めなさそうな本を借りるようにしてみている。(とはいえ、最終的に手に取るのは、少なからず興味を持った本なのだが)

「令和元年」というワードの強さに惹かれ、ページをパラパラとめくってみると、
どれもインパクトがあった事件ばかり。
5月に令和がはじまって、立て続けに起こってたのが、
これらの事件なのかというシンプルな驚きがあったので借りてきた。

自分メモ

令和元年だったんだな
→取り上げられている事件は以下の3つ。

* 川崎殺傷事件(犯人:岩崎隆一 / 昭和42年生まれ)令和元年5月28日発生
* 元農林水産省事務次官長男殺害事件(犯人:熊澤英昭、被害者:英一郎 / 昭和50年生まれ)令和元年6月1日発生
* 京都アニメーション放火殺傷事件(犯人:青葉真司 / 昭和53年生まれ)令和元年7月18日発生

 2019年5月1日、令和がスタートして、3ヶ月連続して起こった事件。
 そして、ほぼ同世代の人間が関与していることに不気味さを感じてしまった。

 まあた、筆者の文章も読みやすいな、とどこか親近感を感じたのだが、
 筆者も昭和53年生まれと、これまた同世代だった。


読み応えあり
→ニュースサイトで見かけるような上辺だけの「お知らせ」では拾いきれない小さな断面まで調べあげていて、読み応えがあった。

 熊澤英一郎のツイートは、細かすぎて万人に伝わるのか否か心配になる部分もあったが、
 ドラクエをやってた人間としては、彼みたいなめんどくさいキャラクターというのは、
 当時ゲーム内にいたなと懐かしい気分にもなった。
 ネット上でだけ妙に強気な、絶対に関わりたくないめんどくさい人間だったんだと思う。


芸術が人を苦しめる
→京都アニメーション放火犯の青葉は、
 自分の作品が盗作されたと主張していることは有名な話。
 僕はこの彼の主張を聞いたとき、
 産みの苦しみが、ありもしないような被害妄想をつくりだしてしまうのか
 という得も言えない恐怖を感じた。

 自分も音楽をやってた時期があるし、
 文章を書くことだって、産み出す作業にほかならない。

青葉の半生を辿りながら考えたのは、「芸術/文化はひとを救うのか」ということだった。自分はこれまでライターとして、鬱屈して生きてきた若者たちが芸術/文化に救われる様子をたくさん見た。(略)しかしそれは彼らに才能があったから出来たことだろう。(略)
(略)青葉の犯行のトリガーとなったのも小説の執筆だ。芸術/文化が必ずしもひとを救うわけではないことは当然としても、それは時にひとを狂わせもする。果たして青葉は芸術/文化にのめり込まない方が幸せだったのだろうか。

 ――引用

「読書メーターに書いたレビュー

事件の深堀りの仕方、取材と記事のまとめ方がわかりやすく、読み進めるのに没頭できた。「京アニ」の事件が今後展開をみせるのだろうけど、少しでも真相が解明されればいいなと思う。一方で、今さら真相がわかったところでどうなるのかな?と思わなくもない。文中にもあるように、社会に発生する一種のバグのような人間の起こす事件を解明することに意味はあるのかな?と。考えれば考えるほどわからなくなるのだが、とにかく自分が妙な事件事故に巻き込まれないことを祈ることしかできないのかなと思ってしまった。

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