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社内コミュニティの起こし方

<本投稿は、【1枚目】コミュニティマーケティングAdvent Calendar 2024 12月15日のエントリーです>

みなさん、こんにちは。私は、日本の伝統的な企業(いわゆるJTC: Japanese Traditional Company)の情報システム部門で、情報インフラとセキュリティ全般を担当しております。本記事では、今年2月から取り組んできた、社内でのコミュニティづくりについてお話しさせていただきます。

私自身、コミュニティとの出会いによって人生が大きく変わった経験があります。その詳細については、別途記事がありますので、併せてご覧いただければ幸いです。
https://note.com/ukyo_/n/nc625496c2206


1.きっかけ

情報システム部門に所属する私は、社内へ様々なサービスを展開し、ユーザーの皆さんから問合せや要望を日々受けています。しかし、同じような質問が複数のユーザーから寄せられることも多く、情報提供が一方通行で、ノウハウや知見が効果的に共有されていない状況でした。また、システムに関する課題はすべて情報システム部門が解決するものだという意識も強く、ユーザー自身がITスキルを向上する機会が限られていました。これは、部門間の壁が高く、相互に協力するという発想が生まれにくい環境の影響が根底にあったのではないかと思います。※あくまで私見です。

私は様々なコミュニティ活動に参加するようになり、特にCMC_Meetupへの参加や大阪の運営チームとして、登壇頂いた方々から様々なコミュニティ活用事例を学び、また、CLS高知・道東・三島・出島(長崎)では地域の課題解決に奮闘されている方々と交流することができました。これらの経験を通じて、改めて組織や地域を超えた「越境体験」の重要性を強く実感しました。

CLS高知2024戻鰹編 大人の遠足で訪れた霧山茶園
「土佐茶」をつくる畑や工場を訪問、美味しいお茶と共に生産者のお話を伺う

そうするうちに、この学びを活かして、コミュニティマーケティングの手法を業務でも応用できるのではないか。コミュニティという場を用意して、ユーザーの皆さんに小さな越境体験を積み重ねてもらう。例えば、

  • 社内コミュニティに参加する

  • 自分の知見を発表する

  • 自分が先生となってみんなに教える

  • 社外コミュニティで事例を紹介する 

そうすることで、個人も組織としても成長できるのではないか、と考えるようになりました。

2.事前の準備

社内コミュニティを立ち上げるには、事前に多くのミッションをクリアしておく必要があります。ここでは、その準備過程を振り返ってみましょう。

設計図を描く

以前から、CMC_Meetup主宰の小島さんに社内コミュニティ立ち上げについて相談していました。小島さんからは、「しっかりと計画を立てないと失敗しやすい。一度失敗すると立て直すのが難しい。」というアドバイスを頂いていたので、慎重に施策の設計に取り組むことにしました。その際に活用したのが「OWWH」フレームワークです。

情報システム部門の企画メンバーと一緒に、このフレームワークを使って目標を整理しました。まず、①ビジネスのゴール(Objective)とコミュニティのゴールを結び付けます。次に、②そのゴールを達成するために最初に関わるべき人(Who)を特定し、③その人たちに何を伝えるべきか(What)を考えます。そして最後に、④ゴールに向けてどのような施策を行うか(How)を決めます。

Howから話し始めると、どうしても目先の施策に意識が向きがちですが、「OWWH」フレームワークを使うことで、「これって何のためにやっていたんだっけ?」と目的を見失ったり、場当たり的な施策に陥るリスクを防ぐことができます。また、認識のズレを減らし、コミュニティが目指すべき方向性を明確にすることができました。

成功事例を学ぶ

CMC_Meetupで知り合った製造業の方の会社を訪問し、直接ノウハウを伺う貴重な機会をいただきました。訪問先では、私たちの「根掘り葉掘り」の質問にも快く対応いただき、コミュニティ運営を円滑に進めるためのアイデアや、初期段階でつまずきやすいポイントへの対処法など、実践的で具体的な知見を数多く共有していただきました。

その後、私たちのコミュニティが発足した際には、その方に当社へお越しいただき、実際にコミュニティをやってみたリアルな課題や悩みについて一緒に考える場を設けました。こうした双方向の交流はコミュニティならではの魅力ですし、双方にとって新たな気づきや発見のきっかけになったのではないかと感じています。

ファーストピンをねらえ!

コミュニティには“核”となる存在が必要であり、その良し悪しがコミュニティの成功を左右すると言っても過言ではありません。そのため、人選は非常に慎重に進めました。具体的には、すでに社内サービスやITデバイスを上手に活用している先進的なユーザーをリサーチし、その中から20名程度に候補を絞り込みました。

さらに、営業・設計・保守・バックオフィスといった職種や、活動地域、年齢、性別などを考慮した上で、最終的に精鋭4名を「ファーストピン」として社内コミュニティのリーダーに選出しました。

経営層を巻き込む

JTCでは、上司が「仕事=辛いもの」という認識を持っている場合があり、部下が見慣れないITツールを使って楽しそうにしている所を見ると、「アイツは遊んでいる」と誤解されることが少なくありません。このような誤解を避け、コミュニティの心理的安全性を高めるためにも、コミュニティ活動が業務に直結し、組織にとって価値があることをしっかりと説明し、理解を得ることが重要です。

当社では5月に中期経営計画が発表されました。私自身、その計画の推進担当に任命されたこともあり、経営層に対して「このコミュニティは中期経営計画を達成するための重要な取り組みです」と位置づけました。その上で、リーダーが所属する部門長へ説明を行い、活動への理解と協力を取り付けました。また、研修部門にも働きかけ、オンライン研修の枠をコミュニティ活動に割り当ててもらうなど、全社的な活動としての基盤を整えました。これらの取り組みにより、コミュニティ活動を公式に推進する土壌を整えていきました。

3.コミュニティ始動

いよいよコミュニティリーダーが集まり、これからの進め方についてミーティングを重ねながら準備を進めました。コミュニティを持続可能なものにするために、次の3つのファーストを目標として設定し、取り組みを進めました。

3つのファースト

  • コンテキストファースト
    ITスキルだけでなく、英会話や読書会など、業務効率を高めるためのコンテンツを幅広く取り入れることにしました。また、オンラインとオフラインを使い分け、座談会やランチ会を通じて、ユーザー同士が悩みを共有し解決策を考えられる場も提供しました。

  • トラストファースト
    すべての人が「好き」や「得意」な分野でリーダーシップを発揮し、安心して活動できる環境を整えるために、コミュニティのルールを明確化しました。また、親しみやすい名前を決めるとともに、オリジナルロゴを作成し、コミュニティ活動に愛着を持てるよう工夫しました。

  • アウトプットファースト
    中期経営計画の実現が最終目標ですので、具体的な成功事例を生み出すことを目指して、熱意あるユーザーがスムーズに行動を起こせるよう、社内掲示板を活用して極的にアウトプットを促しました。また、社内ポータルサイトやセミナーを通じて活動を積極的にアピールし、新たなつながりを生み出す機会を広げるようにしました。

そして、やってみた!

様々な準備を経て、今年の9月から本格的に活動を開始しました。オンラインで、全社で利用しているグループウェア(ドキュメント、メール、カレンダー、Web会議)の便利な機能を紹介するところからスタートしました。その後、参加者アンケートをもとに、Slackの活用方法やRPAツールを使ったもくもく会など、ニーズの高いテーマを積極的に取り入れることで、多くの社員に役立つ内容を提供しています。

また、オフラインでランチ会を開催し、普段接点のない部門同士がランチを共にしながら、業務では知ることができない会社の歴史や裏話で非常に盛り上がりました。こういう話が出来るのはオフラインプレミアムですね。

クローズドでスタートしたパイロット版を含め、これまでにオンライン13回、オフライン2回の計15回を開催しました。参加者は延べ250名を超え、活動の輪が徐々に広がっています。

4.最後に

私も運営メンバーとして参加しているCMC_Meetup大阪に、当社のコミュニティリーダーの皆さんが来てくれました。自ら進んで社外のコミュニティに参加してくれるのは、本当に嬉しくなりますね。

コミュニティリーダーが社内・社外を越境して活動し、そこで得た新しい知見や体験を社内に還元する。その体験や熱量を受けて社内のユーザーがコミュニティの良さをさらに社内へ広めていく――このような循環のサイクルを作っていきたい。コミュニティを通じた越境体験によって、ビジネスの成果や、自らの成長に繋がる世界を目指していきます。

これから社内でコミュニティを起こそうと考えている方にとって、この記事が少し早いクリスマスプレゼントとなれば幸いです。

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