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ガイドが安彦良和さんだったいう嘘のようなホントのはなし(後編)

どうも、ウクモリ ヒロオです。

【今日も長文になると思いますが、ご了承ください】

昨日の続きです。上映会後のアフタートークで、ひとつ書き忘れてしまったことがあります。それは、安彦先生の画法が他人には決して真似が出来ないという話題。特に人の動きについては、手の動きひとつだけだったとしても、その人の感情まで映し出してしまう・・・安彦先生は逆に「動いてない状態を書く方がよっぽど難しい」と否定していましたが、会場の誰もがその凄さを理解していることなのかなと。「描く人、安彦良和」を担当した兵庫県立美術館の小林学芸員は、そんな表情を大切にしたかったからこそ、図録の収録において、モアレ(印刷時に線が重なりあって発生するマダラ模様のこと)を、いかに解消するか苦慮じたと仰っていました。そんなことを聞き、小林さんもまた、安彦先生の描く繊細な表情豊かな作品に魅せられた当事者のひとりなんだと・・・妙に親近感を覚えました。

さて、話を少し進めると、アフタートーク中に高千穂先生が、「これから展覧会を観に行く」という発言をされたため、私はすぐに行動に移しました(笑)安彦先生がその後、「メッセージボードにメッセージを書いてもらわなきゃ」と言っていたので、兵庫県立美術館へと移動開始。その途中、万が一を考えてコンビニで油性ペンを買い、ふたたび美術館へ。会場に着く直前、小林学芸員が自転車で移動してきたので、お礼を述べたところ、逆に東京から来たということでかなり驚かれていました。

メッセージボードはめちゃくちゃ豪華なので、絶対スルー禁止です。

高千穂先生が日帰りだとSNSで書かれていたので、直感的に高千穂先生は、メッセージボードに直接いらっしゃるんじゃないかと感じ、入館後はダイレクトにそこに向かいました。到着した時点で15:00ちょっと前だったので、高千穂先生が美術館でそんなに時間が取れるとは思っていなかったんです。

ただし、その予想は見事に外れました・・・

遠くで、高千穂先生の声が響くのが分かりました。そして、その声は近くなったり遠くなったりを繰り返しました。どうやら、ゆっくりと回覧を始めてしまったようです。展覧会のフライヤー(チラシ)にサインが貰えるとしたら、それはこのメッセージボード前だけかもしれない・・・そんな予想もしていました。写真が撮影できる唯一の場所だということもあり、その場にステイすることを決断。途中、どうやら安彦先生も一緒に回っているのも分かりました。あとでSNSで知ったところによると、普通に入場口から入って来たそうで、会場にいた皆が驚いたそう。そりゃ、驚きますよね(笑)

安彦先生のサインです。この下に高千穂先生がサインしたので、この状態の写真はかなり貴重かもしれません。

おそらく40分ほど待ちましたが、高千穂先生の声が間近まで到達し、その時が到来しました。

メッセージボードの前に立った高千穂先生は、「安彦さんの近くがいいだろう」と、安彦先生のサイン真下に自らのサインを書き上げました。この時の写真はNGだと学芸員の方が仰っていたので、ここでは公開しません。ただ、高千穂先生が何を書くのか、心配そうに見つめる安彦先生の後ろ姿がなんとも面白かったです(笑)
*高千穂先生のサイン、何気に撮り忘れてしまったため、次回の宿題です。

奇跡的に貰えた佐々木るんさんのサイン。

メッセージボード前には、アルフィン(クラッシャージョウのヒロイン)の声優・佐々木るんさんもいらっしゃっていて、お声掛けしたところフライヤーにサインをいただけました。まさか、るんさんまでいるとは思ってもみません。正直、かなり嬉しい誤算でした。

アフタートークでの発言を聞いていた人は多かったはずですが、さほど混みあってはおらず、最初からついていけばよかったな・・・ちょっと後悔しました。ただ、私はようやくメッセージボードの前から解放されたと同時に、安彦先生、高千穂先生の鑑賞ツアーを、おふたりのすぐ脇で参加させていただくことに。

「天の血脈」のコーナーを観ながら、安彦先生は「歴史上の人物は、写真など観ないで書くようにしている」、「写真を観ちゃうととらわれ過ぎて、どうしても面白くなくなっちゃう」とも仰られていて驚きました。おそらく、インタビューで語らない限りは、絶対に表に出てこないような情報。贅沢にも、そんな会話を真横で聴かせていただきました。

逆に、おふたりの会話が面白かったのは「オリジン」を鑑賞していた時。ここでは絶対に書けませんが、お互いの病気自慢で盛り上がっていました(苦笑)ただし、その会話は、おふたりの信頼関係が凄く深いんだなと感じ取れた一瞬でもあり、会話の内容はとんでもないものだったにも関わらず、思わず涙が出そうになりました。

印象的だったのは、高千穂先生が気にしていたのが用紙だったことです。何を使っているのかという高千穂先生の問いに対し、安彦先生がその都度答えていく・・・そんなやりとりが、かなりの頻度で見られました。安彦先生は、色の乗り方や滲みに関しての独自の見解を詳しく語っていました。ベタ塗りが綺麗な作品を指し、「これは自分でも凄いと思ってるんだけど」と言いつつ、高千穂先生に対し、用紙と筆の乗り具合が自分にとっていかに大切なことなのかを伝え続けていて、かなり印象に残りました。

また、アフタートークで触れていた「足が短い」問題。が、具体的に語られたのが、「ククル・スドアンの島」の作画だったのも衝撃を受けました。言われて初めて気づくのですが、設定資料のアムロの足の長さが、上下で微妙に違うよね・・・高千穂先生がその点を指摘。そんな鋭い指摘に対して、安彦先生は「だから、動いていない姿を書くって難しいんだよ」と。まさか、アフタートークのアフタートークが聞けるとは・・・ほぼ真隣で聞いていたからこそ聞けた、とても貴重な会話。ここで語った会話を直に聞けたことだけでも、早朝から新幹線で移動して良かったと実感出来ました。

夢のような時間は、30~40分くらい続いたんじゃないかと思います。今回はクラッシャージョウの上映会と、アフタートークが楽しめればそれで満足だと思いつつ、強行的に遠征しました。結果としては、いくら最近運が良いとはいえ、まさか安彦良和さんのガイド付きで、展覧会を堪能することになるとは思ってもみませんでした。

会場を出た時は、16時ずぎとなっていました。物販では最低限のモノを買い、次回の訪問を心に誓いました。なにせ、展覧会の前半の部分、クラッシャージョウも含めてほとんど見ていないので(笑)そして、昼食も取っていなかった私は、三ノ宮まで移動し、ようやくラーメンと餃子を堪能。ただ、その時もまだ・・・いや、新幹線に乗ってもまだ、夢のような瞬間を振り返っていました。

帰路、私の投稿にSNSで多くの人から反響がありました。残念ながら、映画館から離脱してしまった方もいた一方で、一緒にあの奇跡の時間を共有していた方もいて、そんな方々との会話も遠征の楽しみの一つとして堪能させていただきました。

神戸から4時間。地元に着いた時にはスッカリと遅くなっていましたが、心地好い疲労感と、それ以上の幸福感に包まれた中、1日の終わりを迎えました。あれから2日経った今でも、あの時をふりかえってニヤニヤしています。

そんな奇跡の時間、ようやく振り返りが終わりそうです。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。感謝!



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