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海を見ていた午後 サイダーを飲みながら

目の前の景色を 切り取ると
そこには いつも詩や物語が流れている

ずっと そんな物語を 想っていたら
こんな 企画が目に留まり….,

描かせて頂こうかと

海を見ていた午後  サイダーを飲みながら…..


“髪の毛切ったんだ
違う人みたいだね…..”

そんな言葉を さらっと言って
手にした有休届を 何も言わずに 受けとってくれた…

仕事も 慣れてきた頃 何処かで少し
疲れていた。

“詩織 旅行行かない?”

“うん”
お母さんは そんな気配を知ってか
声を掛けて来た。
二つ返事だった。
何処に行くとも 聞かずに….

気がつくと 飛行機に乗っていた。


空の上は青空 ずっとずっと眺めていた。
“晴れたら いいね”
お母さんは 呟く

天気予報は ずっと 雨。

やはり 雨だった
でも お母さんは 嬉しそう…

何処に行くの?
南の島
それも それも 一番 南の島。

お母さんは 楽しそうにずっとずっと
口ずさんでいる。

“ソーダ水の中を 貨物船が 通る…”

なんの事だか 全くわからなかった。


あの日 名刺をもらってから
気になる事が あった。

“琉”…..

龍さんや 竜さんは いっぱいいるけど

お父さんも お兄ちゃんも
お母さんも 機嫌が良い
“オリオンビール飲み放題だよ”って


私は いつものサイダーを 手にしていた。
“ありがとう”

“大嵐で 船が出ないかも わからないって
でも 大丈夫 きっと晴れる”
酔った お母さんは また 口ずさんいる。
お父さんは 呆れてる…
“また 始まった”....

朝六時 “全便出港” Webを観て
お母さんは 言った。

”晴れたでしょ“っていいながら
同じポーズをしている…..


荷物を手に 船に乗った 揺れなかった。


日本最南端の島 波照間島へようこそ
降りた瞬間 なんて 気の強い場所なんだ
と 
ただ なんだか少しホッとした。
なんなんだろう この感じは....

家族で サイクリングなんて 初めて
お母さんは 変わらず口ずさむ

最南端の碑の前で 写真を撮っていた。

そこに居た 厳つい顔のおじさんに 声を掛けて撮ってもらった。

”いい家族写真撮れましたよ“って

ほんと、皆んな 笑ってる。

”良い旅を“
おじさんはお茶を片手に 去って言った。


”詩織 泳がないの?“
“私は いい こうしていたいから”

いつしか お母さんに 自分の意見を
言えるように なっていた

職場では…. まだまだだな…

ただ 今は 海を眺めていたい

自分にだけは正直でいたいなって

いつしか さっきの 厳つい顔のおじさんが 後に座って居た。

会釈をして さっきのお礼を言った。

おじさんは なんか言っている。
“景色になってもらえますか”

“????”

高そうなカメラを手に ニコニコと

“自然体で.... いいんです“

なんだか その言葉に 力が抜けた。

あっ......

目の前の景色を いつも何処かで観ている

そう サイダーの中

なぜに 琉さんは 青いボトルにこだわっているのか

気が付いたら 同じボトルを 手にしているのか

”琉って...もしかして“


気配が消えた おじさんは
鼻歌混じりで 景色を切り取っている

”ソーダ水の中を 貨物船が通る“

”え?”

おじさんに 聞いてみた。
おじさんは キョトンとしながら 教えくれた。

“海を見ていた 午後だよ“ って

教えてもらった 歌詞を 読んでみた
読みながら なんだか 泣けて来た。
お母さんも 私みたいな時があったんだって

涙が 枯れそうになる前に
サイダーをまた 手にしていた。

でも なんだか スッキリした。

お母さんが やって来た。
“南の島 いいでしょう 見ているだけで
スッキリするでしょ”って

また 歌いだしたニコニコと
“ソーダ水の中を 貨物船が通る.....”

早く 仕事に行きたくなった。
南の島のお土産を持って...

日本最南端の島
波照間島

“海を見ていた午後”



厳つい顔のおじさんから 観た編 ↓


一枚一枚に 物語や詩が流れている

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