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寒空と感覚

いつもの公園に行き、いつものように子どもと遊び、いつものように僕だけが途中でへばりました。

冬の陽が当たる公園のベンチで、1人だけの休憩をしました。

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座りながら、両手をポケットに入れ、肩をすぼめて、ぼーっと前を見ていると、なんだか公園がひっそりとしているように感じました。

決して、人がいないわけではありません。

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奥に見える遊具のゾーンでは、すべり台やブランコで遊ぶ親子連れが見えます。ベビーカーや子供用の小さい自転車もいくつか置いてある。

手前の砂地の広場では、プニョプニョのやわらかいボールでサッカーをしている子どもたちがいる。今日も1人でバスケのドリブル練習をしている少年がいる。なわとびで遊んでいる姉妹もいる。

平和な光景なのに、なぜか、いつもよりも静かに感じられました。

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聞こえる音に集中します。

どこかを走るクルマの音がします。鳥の鳴き声が聞こえます。

空を見上げると、名前の知らない小鳥が2羽、「ピィピィ」とかわいい声で鳴きながら、ちょうど頭上を飛んでいきました。

そうかと思えば、2羽のハトが飛んできて、ちょうど目の前の砂地に着地しました。

2羽のハトは、寄り添いながら、首を前後に動かして歩いています。

(木の実でも探しているのだろうか)

周囲を見渡すと、公園を取り囲むように落葉樹があり、その葉はすべて落ちていました。まるで、樹木たちが 春に向かって養分を蓄えているように感じました。

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それは、いつもと変わらぬ冬の光景でした。

名前を知らない小鳥も、ハトも、落葉樹も、何も変わっていませんでした。

僕だけが変わっていたようです。いつもと同じ冬の光景を、いつもと違う感覚で眺めていたようです。

等間隔に並ぶベンチに座り、間隔を気にして眺めている自分。

でも僕の変化は、今現在に適応し、この先の未来に向けた挑戦なのです。

そして、その挑戦は、鳥たちよりも、樹木たちよりも、ずっと先を見据えて進んでいるはず。

ただなぜか、目の前の光景を見ていると、変わりゆく僕だけが、変わらぬ彼らから取り残されているような気持ちになりました。

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「ケケケケケ」と、突然子どもたちの爆笑が聞こえました。

へばることのない彼らは、小走りに足を引きずり、砂ぼこりをわざと立て、巻き上がった煙の中に全身を突っ込んでいます。

子どもたちには何が見えているのでしょうか。

彼らがおこした煙は風に乗り、どんどん空へ向かって舞い上がる。

雲ひとつない空へ。

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遙か上空を飛んでいる飛行機が小さく見えました。

ひこうき雲でもできないかなあと思いましたが、僕の願いは叶いませんでした。

飛行機はただまっすぐに空高くを飛んでゆきました。

でもそれでよかったのかもしれない。

そこにはいつもと変わらぬ寒空がありました。

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さあ、休憩はおしまいです。









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