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その4. ライターに転向したら、デッサンと記事の「かき方」がほぼ同じだった


以前、「その1. ライターは記事を書く時に、何を考えながら書いているのか」でも触れたのですが、今回は高校1年生から4年間ほどデッサンを描いていた私が、ライターになって気づいた「かき方」の共通点を書いていこうと思います。デッサンそれなりにやってきた人、意外と執筆業もイケるかもですよ!

(描くと書くの両方の意味を持つ場合は、「かく」とひらがな表記にしておきます)

これまでのあらまし

――元々美術大学のデザイン系学部出身で、卒業後もデザイン系の仕事をしていた宇治田は、社会人4年目を目前にした2017年のある日、突如ライターという職業に興味が湧き、あれよという間に執筆業に転向した。

ライターとして働きはじめて最初の数ヶ月。宇治田は得意・不得意を掴むために、とにかくたくさん場数を踏むことにした。SEO対策記事、まとめ記事、ハウツー記事、おでかけ記事、会話形式の記事、インタビュー記事・・・とにかくたくさんだ。

書きまくる日々の中で、宇治田は「あること」との類似性に気付き、記事を書く上での基礎みたいなものを体得した。

「あること」。
それは、デッサンだった――

デッサンとはなんぞや

そんなわけで、私が体験したデッサンの世界を説明するために、一旦私の過去を振り返ってみようと思います。

漫画の「ブルーピリオド」を読んだことがある方はなんとなく想像がつくかもしれません。私が高校生だった当時も、美術大学の入学試験に合格するために、試験科目のひとつであるデッサンで高点数をとる必要がありました。

ちなみにデッサンは日本語で素描といいます。goo国語辞書では「黒・セピアなどの単色の線で物の形象を表し、また陰影をつけた絵。絵画の習作や下絵として描かれるが、完成品としても鑑賞される」とありますが、ここでは主に前者の話になります。

高校1年生から絵画教室でデッサンをはじめて、2年生の冬に美大受験を決意しました。それから1浪で合格するまでの2年間、ステッドラーの鉛筆をたくさん買って、予備校で描きまくりました。

そこからは10年以上描いていないので、今ではこのとおり、すっかり下手になっています↓(文章表現もそうだけど、絵もうまくなると良いな・・・)。

ところで、なぜ美大受験ではデッサンが必要なのでしょうか? 

そりゃ、アートやデザインの分野では絵がうまい方がいいからでしょって話ですが、技術だけの話じゃないんです。デッサンが上達することで、ものの見方や表現するための取捨選択の方法が身につくからなんです。

今となっては、何年も浪人してデッサンを上達させることが良いことだとは考えていません。実際入学後もほとんど描かなかったし。しかし若かりし頃の私はデッサンを習得するために、静物デッサンをはじめ、卓上、人物、細密、大型静物、石膏、受験対策の想定デッサンなど、さまざまなデッサンを経験しました(ヌードデッサンもね)。

絵がうまいの? と聞かれると、正直微妙な気分になります。私は描ける方だけど、繊細に表現する能力は高くありませんでした。独創性もあまりありませんでした。よく言えば豪快で伝わりやすい絵、悪く言えば雑な絵って感じ。ただ、構図を決めることと、モチーフの形を正確にとることに関しては、かなり速くできるタイプでした。つまり完成度の高い芸大系のデッサンは描けないけれど、3時間や5時間という限られた時間で仕上げる、私立美大系の受験デッサンには向いていたんです。

さらにデッサンは描くうえでのコツがあり、そこを的確に押さえれば、ちょっと筆跡が雑でも必ずまとまりがある絵になるため、結構簡単に高得点が取れます。そのコツは自分の中で7つほどありました。

◆モチーフを観察しまくる
◆何を見せるか、意図を明確にする
◆見せるべきところがB3画用紙の中にきれいにおさまるようにする
◆モチーフの形をざっくりだけど、的確にとる
◆全体の見え方を計算しながら、陰影や前後感などメリハリをつけて描く
◆モチーフだけでなく、周辺の空間も描きこむ
◆余白をきれいにして体裁を整える

まとめていうと、見えているもの(見せたいもの)をカメラで撮って、モノクロ写真に現像したらどう見えるかなーって想像しながら絵をつくる感覚です。ここら辺と光の演出や構図などのデッサンセオリーを組み合わせれば、さらに強い絵が作れるし、自分の視点も伝わりやすくなります。

「書くこと」と「描くこと」どこが似ているの?

そんなわけでデッサン満点をたたき出した私は希望した美大に受かり、紆余曲折を経て晴れてフリーライターになったわけですが、10代の時に身に付けたデッサンのコツが、ときを経てほぼそのまんま記事を書くことに応用できたんです。だからライターの仕事への転向もめちゃくちゃスムーズでした。

で、何がどう似ているの? って話ですよね。さきほどのデッサンを描く上での7つのコツに照らし合わせてみましょう。

◆モチーフを観察しまくる
→リサーチする、取材する、インタビューする
◆何を見せるか、意図を明確にする
→記事のテーマを決める
◆見せるべきところがB3画用紙の中にきれいにおさまるようにする
→記事構成を決める
◆モチーフの形をざっくりだけど、的確にとる
→見出しを決める
◆全体の見え方を計算しながら、陰影や前後感などメリハリをつけて描く
→全体を通して伝えたいことが伝わるように、内容を整理しながら書く
◆モチーフだけでなく、周辺の空間も描きこむ
→全体のトーンを調整して、読者が自然に文章に入り込めるようにする
◆余白をきれいにして体裁を整える
→内容の重複や誤字脱字がなくスムーズに読めるかチェック

以前書いた、その1. ライターは記事を書く時に、何を考えながら書いているのか で書いている流れとほぼ同じなんですが、かき終わるまでの基本のプロセスがめちゃめちゃ似ているんです。もちろん文体とかは別ですごく研究しましたけど、根っからの読書好きじゃなくても、師匠の元で修行しなくても、「あ、はいはい。そうやって書くのね」と特に迷うことなく書けていたという感じでした。

だから他のライターさんがどうやって書き方を習得しているのか、逆にめちゃくちゃ知りたい自分がいます。(よかったらコメントください)

とはいえ、それだけじゃ「かける人」にはならない

フリーライターになってから1~2年、執筆もスピードアップして、たくさんの記事をこのマイセオリーでこなしました。スランプは時々ありましたが、経済的には右肩上がり。とっても順調でした。

ただですね、私のライターとしてのゴールは、効率の良い書き方を覚えることじゃなかったんですよね。

デッサンが美大に受かるための通過点に過ぎなかったように、プロのライターとして事足りる書き方を身に付けたに過ぎない。それに、コピーライティングにもあんまり応用できない。わかりやすく伝えながらも、より深く掘り下げ、読む人の感性に訴えかける表現力が欲しかったんです。

というわけで、3年目(2019年9月)からの私はかなりもがき始めました。そうです、ブルーピリオド7巻目って感じです。

受験時代から「私って集中力が持続しずらいし、見えているのにかき出す精度が低いし、自分らしい表現をとことん追求しようという意欲が足りていないんだよね・・・(´-`)」と思っていましたが、再び向き合う時が来たようです。残された課題はまたやってくるものなんですね。矢口くん、一緒にがんばろうね。

そこから書く本数を減らしてインプットする時間を増やし、興味のある仕事を中心に受けるようにして、じっくり考えながら書くようになりました。インタビューひとつとっても、相手が何を伝えようとしたのか、深い部分まで見つめるようになりました。

それでも何かが足りなくて、まだまだ苦手なことも多くて、こうして書いている時に感覚的に捉えていることをnoteにまとめているのですが。

「かく」うえでの表現力、もっと鍛えようと思います。






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