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海外留学先の探し方のすゝめ

日曜午後の男女5人の座談会。本日のテーマは、どうやって留学先を探すか、です。

匿名座談会参加メンバー
 F氏:アメリカ留学中、博士課程進学先を探している
 U博士:デンマークの大学教員
 Y博士:アメリカの大学教員
 T博士:アメリカの大学教員
 H博士:日本の大学教員


F氏:奨学金・フェローシップのデータベースを広めているあまり、自分でお金を採らないと留学できないという神話(日本の医学部通っていたとき周りの先生がよく言っていた)を広めてしまっているのではないかという危惧を個人的には持っています。様々な選択肢とそれぞれpros&consが可視化されるようなバランスの取れた情報発信が理想的です。

フェローシップのみで留学すると現地の大学・研究所の職員扱いにならず健康保険などのBenefitを受けられず出費が余計に増えるなどのconsが発生したという例も聞きます。またポスドクを開始してからPIと一緒にアメリカ国内のフェローシップに応募することもできますし(competitiveだと思いますが)、日本にいる間に自分だけで出すより選択肢も増えるかもしれません。人件費を払って来てほしいと思ってくれるラボに行ったほうが、研究興味や求められているスキルもマッチしていて、PIからもメンタリングエフォートを割いてもらえる気もします。あくまで一般論なのでケースバイケースだと思いますが、これらの情報を示したロードマップ的なものを検索データベースと一緒に広められると、より留学に興味ある人が行動しやすくなるのかなと思いました。

U博士:特にアメリカは、物価高、給料の問題から、ポスドクの求人を出しても、人が来ないラボがたくさんあるので、それらの情報も共有するのはどうでしょう?フェローシップや奨学金のみで留学するのではなく、雇われて行くほうが生活が安定すると思います。

Y博士:アメリカは求人を出しても人が来ない、というのはちょっと疑問で…私くらいの弱小ラボでもけっこう応募はあるんですよ。「(いい)人が来ない」という意味で皆さんおっしゃってるのか「(いいのも悪いのもとにかく数的に)人が来ない」なのか、どっちなのかなと…
奨学金なくても普通にポスドクとして雇われてきたほうがいい、には大賛成です。

U博士:分野や場所にもよりますが、記事にもなっています。
Twitter とかでも、流れて来るので、応募してみる価値はあると思います。後、アメリカにこだわる必要もなく、欧州やアジア、オセアニアにも目を向けるべきだと思います

As professors struggle to recruit postdocs, calls for structural change in academia intensify
13 Jun 2022 BY Katie Langin Science

Y博士:記事の中にも "Many reported not only a drop in the total number of applications, but also in the quality of applications" とありますが、結局competitive applicantを探すのに苦労するとか、以前に比べて減っているというのは私も同意です。
あと日本人全然来ないですね。昔はもっと日本人ポスドク周りにもいたんですけど、激減しましたね

U博士:バイオインフォマティクスの分野では、10年以上、世界的な人不足です。ドイツ、アメリカ、デンマークとPIをしてきて、色々なPIとも関わってきましたが、どの国のPIも日本人からの応募を歓迎しています。今まで、日本人を避けているPIに会ったことがありません。この良い状態を利用すると良いと思います。例えば、ドイツは給料は安いですが、家族で生活できるくらいの給料は出ますし、ポスドクの求人は結構出ています。

ドイツの求人
myScience, online media for careers and science news in Germany.
各国の求人
他にも就職先探しにはNatureScienceLinkedInResearchGateで職種や場所を指定して検索してみましょう。
また各大学のウェブサイトや、研究室のウェブサイトにも公募が出ています。公募が出ていなくてもお目当ての教授には気軽にメールしてみるといいですよ。

F氏:こんなポータルサイトあったんですね。。。知りませんでした。

U博士:ちなみに、3年前までいた、ケンタッキー州のUniversity of Louisville では、コンスタントにNIH R01を2-3持っているラボでも、人の応募がなさすぎて、地元の新聞まで求人広告をでしているラボもありました。

F氏:つまり、日本人のポスドク先探しという文脈でいえば、とにかく興味あるラボにどんどん積極的にアプライしよう。の一言にまとまりそうですね。 結局は精神的なハードルが問題なのかもしれません。ボストンは日本人の知り合いも多いからよさそう、でも生活費高いから家族連れだと難しそう。中西部や南部(やアメリカ以外の国)は家族連れの生活はよりしやすいと聞くが、馴染みが無いのでイメージがわかず不安、みたいな。

PIに「その街でのポスドク給料での家族生活・子供の学校事情等がどんな感じか知りたいから、家族連れのラボメンバーを紹介してほしい」といえばzoomで必要な情報を教えてもらって生活のイメージを膨らますことはできそうですが、中々そこまで行動を起こすことにハードルを感じる人が多いのかな、と想像します。

今自分がいるラボでは(ボスのスクリーニングを越えた)ポスドク候補の人とはラボメンバー一人ずつがone-on-oneで話しますが、「ニューヨークは生活費高くて一人でも生活する実感がわかないんだけど、どんな感じ?」とよく聞かれるので自分の懐事情を説明したりしています。

Y博士:日本の人達は有名な大学や有名な場所しか見てないんじゃないかな。そうなるとボストンなりニューヨークなりサンフランシスコなり、とにかく物価が高いところが出てくるから、それでもう凹んじゃう。
中西部とか田舎とか、アメリカ以外の国とかのほうが、本当は生活はしやすいんだけど、「有名な大学で大きな仕事して出世」というビジョンには合わない、とかね。

F氏:ニューヨークにいるミーハーマンの僕がいうと完全にブーメランですが、それは確実にあると思います笑。

T博士:奨学金なくても普通にポスドクとして雇われてきたほうがいい、には大賛成です。
僕も妻もNIHのFellowship取りましたが、ボスに給料出してもらっていた時の方が待遇が良かったです!チャンスはめちゃめちゃあるので、Fellowship取らなくてもポジションアプライすべきだと思います。大御所のラボに行って箔をつけるという考え方が多すぎるのは残念ですね。

U博士:それはあるかもしれませんが、分野ごとでみると、世界的に有名な研究者は、そこまで有名な大学じゃないところにも居れるので。

Y博士:いい研究者のところで仕事をしたい、となると、おっしゃる通り世界各地にいらっしゃると思うんですよ。
ただ日本人って、ハーバードでポスドクしたい、的な、大学名に弱いじゃないですか。
私は、大学名関係なく、あこがれの研究者のところに行ったほうがいいと思うんですけどね

T博士:憧れの研究者のところに行こう!というのはいいメッセージですね!
論文だけじゃなく、人柄も含めて憧れの研究者がいるといいですね。
アプライレターにも情熱が入るし、できれば学会などで事前に会ってからアプライするのが理想ですね。
遠くから見ていたけど好きですという告白がうまくいかないのと似ていますね笑

F氏:ラボ選びにPIとのfitは大前提ですが、アカデミック環境でいえばDepartmentを考慮に入れるのもありかなと思ってます。自分のいるNYUはNeuroscience全体力で言えばハーバードに劣るかもしれませんが、僕がいるsystems neuroscienceというsubfieldで考えると、ハーバードに引けをとらず、40-50代のバリバリのPIが沢山いてfaculty間の上下関係も少なく、また大御所も全く威張ってなくて話しかけやすい人ばかりで、とても居心地がいいです。自分の直接のボス以外に気軽に話せる最先端の研究者が複数いるのはとても恵まれた環境だと思ってます。

T博士:良いDepartmentという視点も確かに納得です!
透明性の高いところは情報も得やすいですよね。
ただ、そういう部分が日本からどれだけ見えるかというのは難しいところもありますね。UJAにいるから情報が見えると思ってもらえるとうれしいですね

F氏:はい、自分はこれらのメリットはすべて何も知らずにノコノコやってきた後気がついたので、たしかにアプライの段階で調べるのは難しいと思います。。。
でもそれこそ、onlineでポスドクcandidateと話すとき、こういう話題になったりもするので、こういう視点も頭の片隅にいれておけば、zoomでも現メンバーに聞くことはできると思います。「研究所にいるあの大御所の教授、話しかけやすい人?」みたいに。

H博士:結局は出版した留学のすすめでも書いていますが、留学が気になる前から国際学会に参加して、social capitalを獲得しておくことなんだと思います。留学したいと思って留学先を見つけるのは、就職しようと思って就活を始めて大企業ばかり先に見るのと同じです。
どう雇用されるのか、も大事ですが結局はネットワークを磨く観点と重要性が不足しすぎてるし、UJAはそれを伝えようとしてるところが大きいですが、伝えるのが難しいコンテンツでもあります。



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