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【ことばの栞】特別編|詩人・谷川俊太郎さん×ミュージシャン・ASKAさん対談より(2019.3.22)

谷川 歌は初めから聴衆との交流がある。そこはすごく羨ましいところですよね。僕は詩よりも音楽の方が上だと思っている人間なんですよ。音楽がいちばん偉くて。

ASKA  なんででしょう。

谷川 意味がないから、音楽には。意味がないところで人を感動させるでしょう。子どもの頃から感動するのは音楽が先だったんですよ。それで詩を書き始めて言葉に出合って、言葉というのは困ったものだとずっと思っているんですよ。嘘をつくし変な誇張もするし。音楽はそんなこと一切ない。

ASKA  いや、音楽も嘘をつきます。

谷川 そうですか? どうやって嘘つくんですか?

ASKA  音楽はハンサムに映りたいので、ハンサムに映るような詞や曲を書こうとしますから。

谷川 詞がくっついたら嘘をつきますよ。歌は嘘つくことはありえない。メロディとハーモニーは。

ASKA  そうですね、メロディは。

谷川 そこは羨ましいですよ。

ASKA  音楽の力は、新鮮なうちは70%はメロディの力だと思っています。70%を過ぎて残りの30%に入ったときの詞の力は絶大で、時間が経つごとに比率が変わってきて、良い詞を歌ったものは長く残るんですね。人を振り向かせるのはメロディ、振り向かせた人を掴んでいくのは詞だと思っているので、僕はそれを感じた頃から…詞の大切さはそこから始まっていますね。

谷川 僕は言葉というものを疑うところから出発しているから言葉に過剰な期待を持たない人間で、音楽のほうがいいとずっと言い続けているけれど、今そう聞くと言葉もどうにかなるんじゃないかと楽観的な気持ちになりますね。

ASKA  言葉はすごいですよ。メロディで気持ちを豊かにさせることはできるでしょうけど、言葉は人を生かすことも殺すこともできますからね。

谷川 それは確かにそうでしょうね。

(対談の模様はこちらから↓)


視聴後の感想をば。
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言葉を手段に表現する2人の対談は、うなるセリフの連続だった。
言葉使いの第一人者である谷川さんが音楽がいちばん上、とおっしゃっていたことが音楽好きとしてとてもうれしかったし、共感した。音は自然の一部として言葉が生まれる前から存在していて、意義なんて持たずともただそこにあったわけで。しかも結果として人をいい気分にさせたり、エネルギーを与えたり、本当に最強だよなあと思う。
だから、天性の音紡ぎ人・メロディーメーカーであるASKAさんの「言葉はすごいですよ」が、あまりにも心に沁みた。なんてポジティブで素直な、健気な人なのだろう。言葉が褒められて、谷川さん、うれしそうだった。

「音楽も嘘をつきます」のあと、ASKAさんはおそらく谷川さんへのリスペクトからそれ以上を語らなかったけれど、もっと突っ込んで聞いてみたい。きっとメロディもハーモニーも、心と向き合わずとも作れてしまうのだろうし、ASKAさんはつとめて嘘をつかないようにと、曲作りをしてきたのだろうな。

とにかく、まだまだずっと聞いていたい、最高の対談でした。

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