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理性と感性のバランス


今までずっとこの間(はざま)にいたな、と、ある小説の一節を読んで思い出した。

仕事をしている以上、感性だけではダメだ。
感性だけでは、数字や結果がついてこない時があるからだ。
ただ、理性だけでもうまくいかない。その理由は、人は論理だけでは動かず、感情で動くからだ。

私が客室乗務員という、とてもアナログな仕事をしてきたことは、
その後の仕事に大きな影響を与えていると、時々感じる。

一つは「人相手の仕事」だったため、人の感情や人のある程度の性向がわかるようになったこと。
もう一つは、その相手に合わせることができる、それも表面的であっても何の苦労もなく合わせることができるようになったことだ。

この二つができれば、実はほとんどの仕事はできるのではないか、と思う。
私はたまたま「教える」という仕事を、客室乗務員退職後に選んだが、そのスクールではその後「教務主任」「学校営業」「航空会社営業」を経験し、最終的には「学長」までさせていただいた。
結局、学校の方針についていけず、結果的に今のスクールを設立することになったのだが、これらの経験全てが今の仕事に繋がっていることは間違いない。
多分この道に行くように、全ての経験をする、と言うレールが引かれていたのだと思う。

ただ、独立して自分自身が立ち上げたスクールを宣伝しなければならない営業は、初めは苦痛だった。
何だか自分を自慢しているように感じていたからだ。
生徒さん達の合格実績は、前のスクールのものであって、自分のものではない、という気持ちもあった。
それでも、徐々に大学や短大への営業が功を奏して、多くのセミナーや講演の話を定期的にいただくようになったのは、やはり客室乗務員時代の「人に合わせることができる」ということと、「人相手の仕事に慣れていたから」だとしか思えない。

私が営業の際に気をつけていたのは、相手と接する際には「理性には蓋をする」ようにしていたし、帰りの車の中では、「受け取った感性を、理性で現実化するようにしていた」ように思う。

感性だけで経営をやれば、利益は上がらない。
一方で、「そろばん」(理性)を目の前で見せられたら、人は嫌な気持ちになって動かない。
その感情と理性のバランスをとりながら、ずっと仕事をしてきたな、と思い出したのだ。

私が元々理性と感性のバランスが取れていたのか、と言うと、そうではなく、今まで経験したことをたまたま活かせたことと、必要に迫られてやってきた、という二つがあったからだと思う。
そして、理性と感性のバランスがとれるということは、今自分の大きな強みになっているとも思うし、身について良かったと思う。

人と接して感性で受け止めたことを、具体化して、実現して行くためには理性が必要だ。
逆に、先に計算をしてあとは感性に任せてやってしまうと、多分うまくいかない。
「詰めが甘い」ということになるからだ。
うまくいかないことも経験だから良いのだが、ずっとうまくいかないことが続くのは、自信喪失につながる。だからこそ、うまくいかなかった原因を「理性」で解き明かし、次に生かす必要がある。

あの「渋沢 栄一」の「論語とそろばん」と同じだな、と思う。(偉人と同列にしてしまって、偉そうで申し訳ない)

このバランスは、仕事だけではなく、プライベートでも大事なことだと思っているが、その話は今後書いてみようと思う。

そんな感性と理性のバランスのはざまにいた自分を、思い出させてくれた小説は、これだ。


君たちに明日はない(1~5)合本版(新潮文庫) https://www.amazon.co.jp/dp/B09CKV365J/ref=cm_sw_r_cp_tai_GBZQ09DP1WKCBG4JYWWH


この小説は全て読んでいるが、第一巻を読み返していて、このフレーズで思い出した。

「つまるところ、イメージングなのだ。相手の立場になって付き合えるかどうか。そうすれば自然と涙は出る。飯だって奢る。その共感性の高さがつながりを密にする。相手を、信用させる」

「君たちに明日はない」第一巻 垣根 涼介著

人は、理屈では動かない。
感情で動く。
それを感じさせるストーリーだ。作家の巧さはもちろん、ストーリーとしても面白いし、深い。

興味がある人は、是非読んでみてほしい一冊だ。


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