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心地良さを科学するGoogle

2020年ミラノサローネが中止になってしまったので、2019年のおさらい、前回のブランドイメージが強く印象に残ったもの3選の続きです。
今回は、体験展示が素敵だったもの3選です。最近は、商品を並べるだけではなく、企業イメージ向上のための体験型の展示が増えています。1回につき入れる人数に制限があるので、待ち時間が長いのがちょっとツライところ。人気の展示は、3時間待ちも珍しくありません。

出張後半は、夫と娘が合流し、ベビーカーで回っていたので、様々な展示会場で、並ばず優先的に入れて頂けるという恩恵を受けました。
妊娠中の同僚と松葉杖をついた同僚も、同じように優先的な扱いを受けたそうです。機動力がないと思われていた、妊婦&松葉杖組のレポートは、多くの人が長蛇の列をみて諦めた、人気展示の報告が満載だったのはいうまでもなく。松葉杖の同僚は、ミラノ出発直前に転倒、捻挫しての松葉杖だったので、みんなから同情されていたのですが、まさに怪我の功名。

体験展示が素敵だったもの3選

Google
「A Space for Being」というインスタレーションは、全体空間をニューヨークのReddymade Architecture、家具をデンマークのMuuto design、そして、Johns Hopkins大学の脳科学研究所と提携したもの。

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15分間の体験で、体温、汗、動き、心拍数、呼吸数が計測できるリストバンドを渡されます。3つの異なる雰囲気の空間を、各部屋5分づつ滞在していくのですが、その間の身体情報を、リストバンドが記録します。部屋は様々な音、匂い、質感、光で、五感を刺激するように設計されています。

1つ目の部屋はEssential。ナチュラルな色味と素材が多く使われ、ダウンライトで落ち着いた、リラックスできる空間。
2つ目の部屋はVital。ポップな強い色味で、丸みは帯びているけれど幾何学的な形をした家具で構成された、わくわく楽しい空間。
3つ目の部屋はTransformative。クールな大理石に、シンプルな黒い家具が際立ち、とても明るくスッキリとした、モダンな空間。
全く異なるテイストの中に、Muuto designの最新家具がセンスよく配置されていました。

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体験の最後に、各部屋での計測結果を渡されます。水彩画のような円は、各部屋5分間の身体反応を表していて、測定値が大きく変化したときに、炎が揺らぐように円の滲みが強くなります。真ん中の写真の3つの円ですが、左から右にかけて、1番目、2番目、3番目の部屋で過ごした結果になっています。

一番、身体反応が少なかった部屋が「快適と感じた」とされており、私は1番目の部屋での反応が一番少なかったので、オススメの部屋として記録のカードをもらいました。2番目の部屋で、円の下の部分が赤く変化しているのは、部屋に入ってしばらくして、娘がぐずりだし、焦ったのがちゃんと表れています。
ただ反応が少ない=落ち着ける、というのは今は仮説に過ぎない、と説明員の方は言っていました。「身体反応の多いor少ないは、その人にとっての良いor悪いを判断できるものではないけれども、今後データを集めていくことで、人の趣向性と身体反応の関係性を探っていきたい」そうです。

現時点では、自分の好みの部屋と、身体反応が伴わないということが往々にしてあるのでしょう。確かに、私が一番好きな部屋は、2番目でしたし。でも、研究が進んでいけば、Googleは私達が自分達自身ではまだ気づいていない、良いと思うものを探り当てていくようになるのかもしれません。

ALIITA
MARNIの創業者、コンスエロ・カスティリ オーニの義娘であるシンシアがデザイナーのジュエリーブランド。イタリアは、家族経営で同業種を引き継いでいくことが根強いそうですが、まさにイタリアンデザインのサラブレッドのような人です。とっても遊び心あるデザインなのに、ファインジュエリーというのが魅力的。

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趣のある古いアパートの一室に、研究所というテーマで、ジュエリーを展示していました。コンセプトが研究所探訪なので、入室すると「菌を持ち込まないように」専用の靴を履き、「劇薬がかからないように」メガネと手袋もはめます。

デザイナー本人が、標本になったアイディアソースや、捕獲されたジュエリーを解説してくれました。こどもの頃からの小さいお守り、旅先のチケットなど、ジュエリーのヒラメキの元をシャーレに入れたり、ジュエリーを観葉植物と共に飼っていたり。ジュエリーのデザイン同様、楽しい空間。こじんまりとした展示の中で、デザイナー本人にゆっくり話が聞けて、とても贅沢な時間でした。

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RE HOTEL
正確にはいわゆる体験展示とは少し異なるのですが、広々とした会場に「RE HOTEL」というコンセプトで、複数の業種、家具メーカーが集まり、次世代のホテルを体感できるようになっていました。とても多くのメーカーが集まっているのに、統一感ある場作り、少し先の未来のホテルを感じさせる現実性。実際、その場で商談をしている様子の人達もいました。ホテルという住空間だけど、非日常なワクワク感を演出するアイディアに溢れていました。

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左の緑がかったグレーのソファは、電子制御でゆっくりと左右に揺れます。こういう色、フランスで大人気なんです。フランス語では「vert d'eau(ヴェールドー)」、水の緑、といいます。日本語にも水色ってありますよね。日本人には水は青っぽくみえて、フランス人には緑っぽく見えるのでしょうか。

このソファ、動きがコントロールされている安心感があります。ハイテクロッキングソファといったところでしょうか。モダンな暖炉の炎のリズムに呼応するように動き、癒やしを追求していました。
真ん中はサウナ、木の組み方がモダンで新しく、端末処理まで気を使っています。ホテルの部屋に置けるパーソナルな大きさは、清潔度を気にする人が増えているから需要がありそう。

右はエレベーターです。グレーの混紡テキスタイルは世界中どんな製品にも使われ、大流行中ですが、ついにエレベーターのパネルにまで。混紡テキスタイルを日本では、フランス語で「混合」という意味の「メランジェ」と呼ぶことが多いそうですが、フランスではそう呼ばず、「まだら」という意味の「chiné(シネ)」と呼んでいます。

他にもベッドやバスタブなど、ホテルを構成するアイテムが一同に会していました。どれもオシャレだけど、掃除は大変そうなのが、ホテルならではの贅沢ですね。

次回は、これイイ!と思ったプロダクト5選をご紹介します。


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