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2020年ミラノサローネが中止になったので

今年は、残念なことにミラノサローネが中止になってしまいました。出張で行く予定だったフランス人の同僚達も、キャンセルになってしまい残念そう。パリが世界で一番オシャレな国だと自負していそうな彼らでも、ミラノは特別なもののようです。同僚のひとりは「イタリアは大好きだけど、イタリア人とイタリア語は嫌い」と言っていました。イタリア人はよく喋ってうるさいし、イタリア語の音が美しくないと。なかなか言いますね。

ミラノサローネはなくなってしまいましたが、6月15日から21日の期間、フォーリサローネがネット上でデジタル開催されるようです。
フォーリサローネとは、ミラノサローネ(Salone del Mobile.Milano)の展示会場の外、ミラノの街中で行われているものです。ミラノサローネの本会場の展示参加費の高さに嫌気をさした、若いデザイナーや学生たちを中心に始まったといわれています。今となっては、小規模な展示だけではなく、企業が大型展示を行ったり、こちらも本会場に負けず注目のイベントになっています。
他にもミラノサローネに時期を合わせて、いくつもイベントが行われるのですが、それらをまとめてミラノデザインウィークといいます。
私の勤務先からは、サローネ本会場以外のミラノデザインウィークをみてくるようにいわれています。ただ、私達の間では、ミラノデザインウィーク、フォーリサローネという呼び方がいまだ馴染めず、引き続き「ミラノサローネ」と呼んでしまっています。

超今更ですが、2019年のおさらいとして、昨年、私が行ってみて、気になったものを以下、3回に分けて、ご紹介したいと思います。今年のは中止になったので、今のところはまだ最新ということで。

・ブランドイメージが強く印象に残ったもの3選
・体験展示が素敵だったもの3選
・これイイ!と思ったプロダクト5選

ブランドイメージが強く印象に残ったもの3選

Kvadrat
デンマークのテキスタイルブランド、Kvadrat。ミラノ市内では6つの異なるコンセプトの展示を発表していました。その中でも、「No Man’s Land」と、「SCRAP AND REPRINT」という、2つの展示が印象的でした。

「No Man’s Land」は、Garage 21という倉庫のような広々とした空間の中に、建築家ジャン・プルーヴェの小さな小屋が3つ。その中に、Kvadratの新作のテキスタイルを使った家具が展示されていました。元ディオールのラフ・シモンズによるインスタレーションで、Kvadratにとってメインの展示会場だったといえるでしょう。

エントランスの大きな花壇は、少し離れてみると新作の混紡テキスタイルに雰囲気が似ています。近くで見ると花なのに、離れてみると新作のテキスタイルにみえるとは、まるでジョルジュ・スーラの点描画のようです。会場のあちらこちらに細かくカットされたテキスタイルが芝のように散らばり有機的な印象。静かで落ち着いた空間の中でも、自然物とテキスタイルの組み合わせの妙が際立っていました。

「SCRAP AND REPRINT」は、Kinnasand showroomという小さな展示スペースで、Kvadratのショールームと同じ敷地の中にあります。Garage 21とは打って変わり、こじんまりとした空間で、カシャンカシャンと鳴り響く印刷機の音。印刷機にかけられた紙のような展示のテキスタイル。印刷工程で出る廃棄物「ヤレ紙」をモチーフに作られたテキスタイルで、グラフィックデザイナー長嶋りかこさんとKinnsand LABのコラボレーション展示でした。
不規則な擦れや、インクの汚れを、テキスタイルの柄に昇華する感性が、日本的。

倉庫と小さなギャラリー、自然と機械、規模もコンセプトも全く異なる2つの展示会場は、Kvadratが表現する世界観の広さに気づかされました。

COS
2007年にできた洋服ブランドで、ファストファッションH&Mグループです。H&Mブランドよりも、上質でシンプル、ひねりのあるカッティング、北欧テイストで、パリでも大人気です。毎年、ミラノサローネでの展示は斬新なものが多く、注目を集めています。ファッションブランドですが、商品である服の展示はなく、企業理念を伝えるコンセプトを伝えるインスタレーションを行なっています。
2019年は、Conifera(針葉樹)というタイトルの、巨大なインスタレーションでした。幾何学的な立体物は、3Dプリントされたバイオプラスチック「PLA」です。

立体物をモジュールとして、繰り返し組み上げてる設計は、フランスの建築家アーサー・マモウ・マーニーによるもの。モジュールの集積によって、歴史的建造物を貫通しているような構造物が生まれました。
建物の中庭側は白と乳白のバイオプラスチッlク、エントランス側はバイオプラスチックに木材パルプを混ぜた茶色で構成されていて、色と質感の違いで全く違う表情を見せていました。

バイオプラスチックというエコマテリアルを、3Dプリントのテクノロジーで、建築レベルの大きさで表現した展示は、非常にインパクトがありました。
大量消費されるサイクルが短いファストファッションが抱える問題に対して、少しでもエコというメッセージを伝えようとしている姿勢も受けました。

Moooi
マルセル・ワンダースとキャスパー・フィッサスにより設立されたオランダのインテリアブランドです。オランダ語のmooi (美しいの意)にさらに1つ”o”を加える事で、更なる美しさやオリジナリティのあるデザインをめざす意味で名付けられました。(オフィシャルサイトより)
"o"がいくつ付くのだったか、いつもわからなくなります。これぞミラノサローネといった王道の展示でした。アンティークなアイコンを残しつつ、モダンな素材使いが特徴的です。

展示会場は、入り口の階段から流れ出る、水彩画のような絨毯から始まります。全体的に、アジア文化からのインスピレーションを強く受けているようで、弁髪帽をかぶったようなキャラクターの照明、温泉に入った猿柄のテキスタイル、折り紙を模した照明、などがありました。小物にだるまも。

インディゴをテーマに、藍の絵付けや、藍染の実演コーナーも人気でした。

非常に盛りだくさんで、1回では見切れず、期間中、2回も行ってしまいました。
今までは、他国の文化を表層的に取り入れたものって、あまり好きではなかったのですが、この展示は楽しんで見ることができました。日本人として、グローバルにウケるアジアらしさのポイントを教えてもらった気がします。

本当にたくさんの企業が参加していて、あくまで私一個人の見解なのですが、Kvadrat、COS、Moooiの3ブランドは、毎年、楽しさと驚きの提案があり、注目してます。

次回は、体験展示が素敵だったもの3選をご紹介します。

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