自作短編小説『ため息の彼方』 第5話「室内」
開放的なロビーは閑散としていた。そこには殆ど誰もいなかった。左奥の窓辺のテーブル席で、一人のスーツ姿の男性が新聞を読んでいるくらいだった。彼は私の存在など気に留める様子もなく、難しい顔で新聞を読んでいた。その近寄り難い彼の雰囲気を、隣の観葉植物が幾分和らげているように見えた。
広々としたロビーの内装は、全体的に白を基調とした絢爛なデザインで統一されており、精緻な造りになっていた。天井にはいくつもの豪華そうなシャンデリアが吊るされていた。そのシャンデリアは煌びやかな照明を