2022年5月の記事一覧
【ショートショート】カーネル・サンダースの呪い
〈先日投稿した、短編小説『少年たちの秘密基地』でカットしたシーンを編集して、ショートショートに仕上げたものです〉
僕らの秘密基地は小さな森の中にあって、白い布に囲まれた円筒の形をしている。
使わなくったシーツを利用して、木々の間を輪の形に覆っているのだ。
控えめな蝉の鳴き声が、至る所から聞こえていた。
放課後、僕ら-僕とマナブとシゲチーとよっちゃんと掛布の5人-は秘密基地内で、次にど
【空白小説応募作品】吾輩は狸である。
楽しそうな企画だと思い、Twitterにて応募してみました。
せっかくなので、noteにも掲載しておこうと思います。
「吾輩は猫である」で始まり、「名前はまだない」で終わるショートショートを考える企画です。
【毎週ショートショートnote作品】1分しまうま
一分間だけ、シマウマが局地的に大量発生する地帯がある。
それは僕が通う小学校の校庭だ。
毎日午後二時四十五分になると、決まって学校の校庭に何十頭ものシマウマの群れが突如出現するのだ。
そして午後二時四十六分になった瞬間、シマウマの群れは一頭残らず校庭から消滅する。
この現象は今日に至るまで二十八年間続いていて、我が校の伝統みたいになっている。
入学したての一年生は午後二時四十
ユウヒ飲料の自動販売機【ショートショート】
自動販売機の扉を開けると、その向こうには『昭和40年代の世界』が広がっていた。
* * *
本日9台目になる自動販売機の飲料を補充し、集金を終えた俺は、トラックに乗り込み、車を発進させた。
車内のラジオからは、ブルース・スプリングスティーンの『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』が流れている。
時刻は午後1時半過ぎ。道は空いていて、もう5回は信号に捕まっていない。
俺は自然と『ボーン・
【ショートショート】コーヒーショップの男たち
ティムは五十代半ば、白髪混じりの恰幅のいい男で、私に優先して仕事を回してくれる重要な顧客の一人だ。
我々はいつものように通い慣れたコーヒーショップの店内で、いつものようにビジネスの話をしていた。
サンフランシスコ、ノースビーチの一角にあるイタリア風の古い店だ。
ティムはカプチーノを一口飲んだ。
そしてジャケットから一枚の写真を取り出し、テーブル越しにそれを私に寄越した。「この男だ」