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10年続いた音楽イベント運営者の脳内~現場の変遷と考察~

どうも。
雪が降りそうで降らない日はTRFと広瀬香美でしのぐガリバーです。
寒い夜感じたいよね。

さて。
2010年から続くオープンマイクイベント「彩りモノクローム」が2020年2月をもって終了しました。

正確にはイベント自体は続くんだけど、オープンマイクという形式としては終了、というか撤退って感じです。
そりゃ10年やってれば紆余曲折、様々思うところもありました。
それでも続けられた理由、今回の決断に至った理由など、今回はエモい話も織り交ぜつつ、わりとガチ目に語ってみようと思います。


●10年やってて終わらせるとは思ってなかった

例えるなら、10年付き合ってて別れるとか想像もしてなかった!と同じ感覚だと思う。知らんけど。
「しかも、切り出したのオレじゃね?」
「え、なんかサラッと言ってるけど大丈夫か?合ってるかこのジャッジ?」
というのが第一印象。
第一印象から決めてたね。いや何が?

このイベントは、僕がメジャー契約を終えてソロ活動を始めた頃、もともと西麻布のエーライフという会場で誕生した。
外国みたいに、ラウンジで歌ウマも歌ヘタもヤジ飛ばし合いながら歌ってる空間を作りたいなーと思って。ノルマなしで。

今だから言えるけど、初期は電話でビジョン伝えたり、結構頼み込んで来てもらってたよね。
ワケわからん企画に乗ってくれたみんな、先輩方、本当にありがとう。

当時はノルマなしで15分くらい歌える場所ってバーくらいしか無かったから、六本木や渋谷界隈のクラブシンガー仲間もわんさか来てて、ふつうにブッキングイベントよりも豪華なメンツが揃っちゃうときもあった。
Ustreamで配信もしてたんだぜ、嘘みたいだろ。

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で、六本木は色々アレコレあった時期で、2年目からは会場を渋谷UNDER DEER LOUNGEに移して開催することに。
今の店長の多田さんが「社長に土下座します」と言って、ワンコインで入場可能なイベントとして継続が決定。

泣いてやろうか。

胸アツすぎる男気に応えるべく、東日本大震災のチャリティをしたり、代々木公園のクリスマスフェスで出張開催したり、ラジオ番組「かつしか支店」をやったり、中目黒村マルシェで屋外の定期イベント化もさせてもらった。

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このイベントのデザインは、今はヘカテの社長エリカ様のイベントで出会ったデザイナーのdolocy'sさんによるもの。
デザインに一目ぼれして、僕の個人ブランドのウマミタスのロゴと、このイベントのデザインを無理やり頼んだ。

本人は「え、ぜんぜん見えない。なんで?私で合ってます?」と言ってためらい続けたけど、「あなたの絵の目が死んでるところがいいんです。オレには正解が見えてるんで大丈夫っす。」とか狂った情熱を押しつけてやってもらった。
星野源もその時くらいに、この人から教わった。

イベント名の「彩りモノクローム」っていうのは、僕のソロになって初めて打ち込みだけで作った曲の題名で、別所哲也さん主催のTVのライブバトルで優勝した曲だったりで、縁起がいいのでつけてみました。適当っス。さーせん。

あれ、なんの話だっけ?
思い出話と自己顕示欲で流れがぶっ飛んでしまった。

そう、とにかく終わりは突然決めた。

というか、「3月からはこういう感じにしよう!」というLINEを運営メンバーに送った瞬間、それがオープンマイクの終了を意味すると気づいた。

真実はそんなもんなんだけど、なるべくしてなったと思っている。


●奥義「何もしないをする」の誕生

時を戻そう。

自由な空間ゆえに、僕が主催と知ってか知らずか、来るときも帰る時も、一言も話しかけてくれない人も現れた。
これには周りが怒ってたけど、来場者が自由に過ごせるように工夫してきたコンセプトが根付いた証拠でもあるし、僕自身は自分のオーラ不足を反省したよね。

で、どうしたかというと・・・

もっと何もしないことにした。
プーさんマインド発動。

「上手い人と初心者を同列に扱うのはどうなんだ?」
「これじゃレベルの高い人が来なくなる」
「もっと業界人呼んでスカウトとかしてもらおう」
とかの声もあった。

何もしないをした。

まぁ、そういうイベントは他にもあるから、そっちでやってくれたらいいかなと。
ここは誰もが来れるようにしたかったから、できるだけ主催者側からのルールはつけたくなかった。

・次の人の名前を呼んで終える
・持ち時間は15分まで
・分煙
・迷惑行為は厳罰に処す

そのくらいかなルールは。

その代わり、めちゃくちゃ試行錯誤して、イベントの魅力を模索していた。

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初期はイスやテーブルも毎月全部手作業でレイアウトを変えていた。
ただその行為がおしゃれだと思っていただけで、特に意味は無かったんだけど。

ほかにも、帽子ブランドgrace hatsさんに協賛についてもらったり、フリマゾーンを設けたり、オリジナルメニューも毎月僕が企画していた。
使う具までかなり細かくオーダー。名作は桃のカッペリーニ。

パフォーマンスは、音楽以外でも、ジャグリング、ビートボックス、ヘアメイクショー、ライブペイントなど自由。

チャリティグッズを販売したり、マッサージ、フラワーアレンジメント、詩人などのブースも出してもらった。

気づけば彩りモノクロームは、世代もジャンルも混ぜこぜの空間になっていた。
変態みたいなおかしな人も、数か月に一回現れて、結構それが楽しかったりもした。
一度だけ途中で音量下げて強制終了にしたかな。それも、いとをかし。

要は、僕なりにたどり着いた答えは、続ける秘訣は、いかに何もしないをするかだと思っている。
自分ゴトにして、自分なりの楽しみ方を発見してもらえたら嬉しい。


●アーティストの平均寿命は2年

彩りモノクローム関連で出会ったアーティストは、のべ2,000組以上。
デビューした人も、音楽ファンに顔の知れているアーティストもいた。

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沢山のアーティストとの出会いが楽しかった半面、イベントに来てくれる顔ぶれが、2年くらいの周期でガラッと変わっていった。

純粋にうちのイベントに飽きたのかなーと思いきや、すべてがそうでは無いようで、どこを探しても活発な活動をしなくなるアーティストがほとんど。

【ステップアップ1:他で活躍2:活動からフェードアウト7】
くらいの印象。
あくまでもガリバー調べ。

逆に数年経って懐かしがって来てくれる人もいて、親せきに会うような感覚で嬉しかったりした。

2015年からは、運営を法人でやっていくことにしたので、他の企画やお仕事のキャスティングや、多田店長によるヘッドハンティングで別のイベントに出演してもらう事例も多くなった。

それでも、アーティストの平均寿命や上記の比率はいっこうに変わらない。

元々、アーティストの活動の場のひとつとして活用してもらいたかったイベントだけど、このままでいいのかな?という思いはある時期からずーっと持ち続けていた。


●オープンマイクからの撤退

その時期というのは、オープンマイクやカフェでのイベントが急激に増えてきた2018年くらい。

出演者にノルマを課すイベントに出るより、自主イベントをやるアーティストが増えていた。

音楽の楽しみ方が身近になっていい部分もある反面、スキルUPや集客UPを頑張らなくても、固定のお客さんやメンバーで回せてしまう点は、若手アーティストにとっては麻薬的な危うさもあると感じている。

承認欲求は満たされるかもしれないけど、ステップアップできる可能性へトライしたり、仕事にするための音楽活動の仕方や、メンタリティが身につかないからだ。

プロを目指したい人にとって、オープンマイクは度胸試しであり、まずは初めの一歩を踏み出すための簡易なステージ。
プロがどうとかではなく、純粋に音楽を奏でる空間が好きな人やリスナーさんにとっては、カジュアルに音楽を楽しめる空間。
だと僕は思っている。

もちろん、それを楽しみに通うのもいいと思うし、ガンガン場数を踏んで、人脈も増やすと、音楽が楽しくなる。
僕の中でも、オープンマイクがようやく広まってきているから、ニーズがある限り続ければいいか、という考えもあった。

でも、もっといい音響で、大きな舞台で、自分を目当てに見に来てくれるお客さんの前で輝く可能性があるのに、その努力よりも目先のラクさを選んでいるのだとしたら、このままではいけないと思った。

ストリートにも似た課題があって、僕の主張は前にも書いた。

おまえ何様やねん?と思われるかもしれないけど、日本アーティスト協会も、僕自身のライフワークとしても、アーティストを「子供が目指せる職業にする」のがミッションだ。
ビッグヒットを狙うだけではなく、パラレルキャリアで社会にコミットしながら食っていける職業のひとつとして、アーティスト職を根付かせたい。
そしたら、親御さんも英会話と同じくらいの情熱で音楽教育を勧めるだろうし、結果的に音楽文化も市場も活性化する。
誰が何と言っても、これは実現させるつもりで事業を進めてる。

で、2019年の後半にさしかかるくらいに気づいてしまった。

「あれ?もう全然ワクワクしなくなってるぞオレ」と。

創意工夫をするパフォーマー、「オレの歌を聴け」と言わんばかりのシンガー、デモンストレーションのための出展、そういうものが今はもうWEB上で完結できる。

リアルの場の価値に疑問を感じていた。

何より、いちアーティストとしての自分自身が求めるもの、見て「わぁ~!」と心が弾む景色をもう一度作りたいと思った。

2010年、スタートしたあの頃のように。


●ヒントはスタッフのキャリアアップ

「これはもう次に行こう」と確信に変わったのは、スタッフがスタートアップ企業で活躍を始めたことが大きかった。

スタッフというのは、僕がメジャーデビュー前から応援してくれていて、今はNPO法人の理事としても支えてくれている、「あやべぇ」こと石川。

何かヤバいことをやりたいけど、なかなかエネルギーの消化の仕方を見つけられていなかった彼女に、彩りモノクロームの運営を任せた途端、彼女の人柄やハピネスオーラによって、新たな層のお客さんが来てくれるようになった。

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僕は事業やプロジェクトを立ち上げる時、基本的にその人を軸にした企画を作る。

いきなり責任が発生しちゃって耐えられずに去ってしまう人もいる中(それはごめん)、「夜カフェオープンマイク」として模様替えをし、彼女はひとつの成果と言っていい盛り上がりを作った。

参画したベンチャーの方でもカリスマ的な存在になりつつある彼女にとっても、引き続きイベントに関わってもらうなら次のステップは必要だと感じていた。

苦楽を共にしてきた渋谷UNDER DEER LOUNGEのスタッフの皆さん、ウマミタスのアシスタント、日本アーティスト協会のメンバーのみんな、それぞれが新たな道で輝いてる。
彼らにも、もう一度ワクワクしてもらいたいじゃないですか。

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この空間にもふさわしく、彼らにもふさわしいこと。

それはつまり、ヤバいことだ。

これしかない。


●学べる文化祭

会場の渋谷UNDER DEER LOUNGEでオープンマイクという形式をやることに限界が来てることは、もう何年も前から分かっていて、それをなんとか粘ってやっていた。

収益モデルとしても、アーティストが30人も来たら歌えなくなってしまう構造のイベントで、1,600円カレー付きってもうナニソレハゲルニンゲンクウって話なわけで。

楽しんでくれるアーティストのために続けてきたけど、今回はこちらから10年ぶりに、アーティストのみなさんにも再提案をすることになる。

何より、一般の人にもっと遊びに来てほしい。
繰り返しになるが、僕がやっているイベントの主旨は、啓蒙活動だ。
音楽、アーティスト、表現者の可能性を感じてもらうデモンストレーションでもある。

だから、今の時代に意義のある物を提供して、一般の人にもっと絡んでもらいたい。

ならば、音楽だけじゃなくて、アートとかマジックとか占いとか、興味はあるけど、そのためだけにどこかに行くことにハードルがあるようなものや、雑貨とかどうだろうか?
そういうのを集めた空間があれば僕は行きたい。

あとは、音楽の現場から得られる学びや、他の職業や社会のことを学べる空間も必要だと思っている。
セミナーとかポッドキャストの生バージョンみたいな。

てことで、彩りモノクロームの”シーズン2”は「学べる文化祭」として3/4(水)19時に渋谷UNDER DEER LOUNGEにてスタートする。

出店・出演・登壇をしていただける方、募集中。
情報は僕と日本アーティスト協会のTwitterで発表しようと思う。


●さいごに

ということで、10年やってきたイベントの変遷と今後のことを書いてみました。

結局、新しく本気でやりたいことをやろうとしたら、自然とひと区切りつけちゃうんだわね、不思議ね。って話でした。

僕はもともとアーティストだけど、企画屋であり、経営者であり、パラレルワーカーです。

でも、イベンターじゃないから、興業自体を楽しむ気持ちって無いんですよね。
社会に、というかあなたにとって、良いと思うモノを厳選して提供するソムリエやコーディネーターでありたいと思っています。

それが10年も続けられたことには本当に感謝していますし、アーティストのみなさん、ご来場のみなさんのお陰でしかないです。
関係してくださるみなさん、本当にありがとうございます。

これからもそんなマインドで刺激を届けていけるよう精進します。


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ガリバー宇田川(アーティスト専門家)
メジャー経験のある現役シンガーで日本アーティスト協会代表理事。アーティストの社会進出とキャリア形成の支援がミッション。イベント企画、映像や舞台の脚本・演出、動画、デザイン、企業の採用コンサルもやってます。壇蜜が好きです。📩udagawa@umamitasu.com
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