ブランディングで売上が2倍になりました
"ブランド"や"ブランディング"といった言葉をよく耳にするようになりました。
"ブランディング"というキーワードのGoogleの月間検索ボリュームを調べてみると、4年間で1.7倍程度になっていました。
爆増ではないですが、ジリジリ関心が深まっている感じですね。
私の会社でもブランディング(正確にはリブランディング)を実施して、直接的か間接的かはわかりませんが、ここ3年で売上が2倍以上に増えました。
実際ブランディングをやってみて感じたのは、小さな企業ほどブランディングによる成果が出やすいのではないか、ということです。
一方、多くのブランディング本で「ブランディングはマーケティングと違ってお金がかからない」みたいな論調をよく見かけますが、はっきりいって小さな企業にとってはそれなりのコストがかかります。
だからこそ二の足を踏んでいる経営者もいらっしゃると思いますが、ブランディングは絶対にやった方がいいです。
今日は実際にブランディングをしてみて感じたメリット・デメリットについて書きたいと思います。
なお、私や私の会社についてはこちらの投稿をご覧ください。
弊社がブランディングを実施した経緯
弊社は山形県にある洋菓子店です。
元々はお煎餅の製造会社の洋菓子部門として立ち上がり、その後スピンアウトして12年ほど経ちます。
当時バームクーヘンがプチブームだったから洋菓子を始めたという浅い動機でしたので、ブランドはほとんど作り込まれていません。
パッケージは洋風の箱に和風のフォントで商品名が書かれたちぐはぐなデザインでした。
それでも一定の顧客はいましたが、庄内地方は著しい人口減少の最中にあり、観光客数も減少傾向にあったため、事業は年々縮小しておりました。
私は事業を引き継いだ当時から、店舗周辺を商圏にするよりも、全国、特に首都圏に向けて庄内のいいプロダクトを届ける方が長期的に未来があると考え、ECを重点的に伸ばすことを決めておりました。
ECでは実物を確認できない分、ブランドをしっかり作り込み世界観を伝えることが必要であることは明白でした。
幸いにも弊社の商品は米粉100%であり、グルテンフリーという首都圏の消費者にささりそうな特性を持っておりましたので、グルテンフリーを好むターゲットにあいそうなブランドコンセプト、及びデザインのイメージを固め、ロゴ、パッケージなどすべてをリニューアルしました。
ターゲットから見直したという点で、ブランディングというよりはリブランディングですね。
詳しい内容や成果については別の機会に紹介したいと思いますが、結果としてリブランディング後1年強で、売上は事業を引き継いだ時の2倍以上に成長しました。
ブランディングのメリット
売上が倍増したとはいえ、リブランディングが直接的に売上に寄与したかどうかは、はっきりいってわかりません。
ですが、明らかにリブランディング実施前後で変わったことがあります。
①リピーターの割合が増えた
リブランディング実施後、ECにおけるリピーターの割合が1.5倍程度増加しました。
リブランディングを実施したことで、ブランドの世界観や価値がお客様に伝わり、共感してくれたお客様がリピート購入をしてくれる、という流れができたという肌感があります。
おそらくブランディングを実施したことがない会社だと、伝えるべき世界観や価値がはっきり形になっていないことが多いかと思います。
やはり、ここが曖昧な状態だとターゲットを絞り込みすぎない反面、ブランドに共感してくれるお客様を囲いこむことができず、リピートに繋がりにくいのではないかと思います。
②UGCが大幅に増加した
ブランディング実施後、インスタグラムでタグづけされた投稿をはじめとしたUGC(ユーザー生成コンテンツ)が明らかに増加しました。
実施以前と比べると、同じ期間で3倍以上に増加しました。
やはり、いくら商品がよくてもブランドコンセプトやデザインが微妙だと、UGCはなかなか発生しないでしょう。
ブランディングはほとんどの場合、ロゴやパッケージのデザインのリニューアルも付随します。
ですから、ブランディングを実施すれば自ずとUGCのネタができる可能性が高いといえます。
③企業からの問い合わせが増えた
これはとても意外でしたが、ブランディング実施後、企業や自治体などからのOEM、卸の依頼が明らかに増えました。
私たちのこだわりが伝わりやすくなったおかげか、センスのいいブランドを展開している企業や、高級ホテルなど、従来であればまず問い合わせがこなかったようなところから声がかかるようになりました。
また、取引ではありませんが、メディアへの掲載依頼も増えました。
ブランディングのデメリット
私はリブランディングを実施して本当によかったと思っていますが、それでもやはりブランディングは万能ではありません。
①コストがかかる
冒頭でも触れましたが、ブランディング本ではよく「ブランディングはお金がかからない」という記述が見られますが、あくまでも広告などのプロモーション費用に比べれば、ということです。
まして、弊社のように従業員が10人もいない小さな会社にとっては、ブランディングにかかる費用はとても「お金がかからない」と言えるような額ではありません。
弊社では具体的に、下記の費用がかかりました。
・デザイナー人件費
・パッケージ制作費
・EC構築費
・写真撮影費
私はウェブの業界にいたこともあり、視覚的な情報が非常に重要だと認識していたため、今後のブランドのことを考えてデザインを内製するため新たにデザイナーを雇いました。
デザイナーを雇わないのであれば、ロゴやパッケージデザインは外注することになります。
ざっくりですが、ブランドがある程度形になるまでに、700万円程度かかりました。
これを高いとみるか安いとみるかは人によって違うと思いますが、弊社にとってはそれなりの投資でした。
②はっきりとした効果が見えにくい
広告やメルマガ、DMなどの施策と異なり、直接的な効果はなかなか見えにくいです。
また、即効性があるわけではなく、常にブランドを磨き上げて効果を積み上げていくのがブランディングです。
弊社の場合も、リブランディング後半年以降でなんとなく効果が見えてきて、そこからコンスタントにKPIが改善されていったような感じでした。
③インナーブランディングが難しい
これはデメリットというよりは課題ですが、インナーブランディングは非常に難しいと感じました。
インナーブランディングとは、対社外ではなく社内に向けてブランドの価値観や世界観を浸透させていく取組で、極端にいうと社員の一挙手一投足までブランドを体現するものとして機能させます。
数多くのブランディング本でインナーブランディングの重要性が説かれています。
なんなら、社外へのブランディングの前に、まずはインナーブランディングをやれと主張している書籍も少なくありません。
私も、インナーブランディングは非常に重要だと思います。
なぜなら、作り上げたブランドを、その後もブランドたらしめるための運用に影響するからです。
例えば、すごく内装のセンスがいいセレクトショップに、どこでも売ってそうな商品が置いてあったら、少しがっかりすると思います。
要するに、お店をつくるまではブランドコンセプトに沿って進めているのに、完成した後の運用についてはブランドコンセプトが意味をなしていないということなのですが、こういうブランドはかなり多いです。
これは、スタッフが自社のブランドについて理解していなかったり、そのビジョンやコンセプトに共感していないか、もしくは表面だけ美しく着飾って中身のないブランドか、のどちらかが原因です。
感覚的にはほとんどが前者だと思います。
いくらトップや経営者がブランドの上流概念を作り込んでも、それが日々の運用を担当する現場社員に落ちていないのであれば、そのブランドやお店はどんどん劣化していきます。
だからこそインナーブランディングはとても大切なのですが、とても難しいのです。
私の会社もここはうまくいっていないと感じることが多々あります。
結論:ブランディングは絶対にやるべき
メリット・デメリットをいろいろと書き連ねましたが、ブランディングは絶対にやるべきだというのが私の意見です。
菓子やスイーツの業界では流行り物やバズる商品ばかりに手を出しているお店やブランドがよくあります。
たしかに短期的な売上をつくって早々と撤退するなら経営判断としては正しいのでしょう。
しかし、長く続くブランドを見ると、ほとんどは安易に流行りにのらず、自分たちの世界観や価値観にあった展開をしているのがわかります。
短期的にお金を稼ぎたい経営者にとっては、コストも時間もかかるブランディングは無用の長物です。
ただ、もしも息の長い、固定ファンのつくビジネスをつくっていくのであれば、短期的な成果をぐっと我慢して、ブランディングの一歩を踏み出すべきです。
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