アラビア

読むのを止めるな「アラビアの夜の種族」(2001年の小説)

「アラビアの夜の種族」を読み始めました。あまりにスゴイ展開だったので序章を読んだ時点で推薦図書します。

この作品と出会ったのは古橋先生の本を探していた時に「ふ」の棚で見つけたのがキッカケです。TLで話題に上っていた作品※だったので「これも出会いかな」と思い手に取ることにしました。そして、これはまさしく「本に呼ばれた」とでもいうべき私にとって必然性のある作品であったのです。

インタネット上で何かをプッシュされたときに(広告かよ)と思うか(誰かが言ってたやつだ)と思うかで印象がかなり違うので実名を挙げて推していこうな。(@おばけさん太郎さん のTweetより)

命がけで本を読む物語

(これまでのあらすじ)
豪華絢爛な独自文化を築き上げた中世アラビア世界。そこへヨーロッパの覇王ナポレオンの魔の手が延びようとしていた。 高級奴隷のアイユーブは主人の名誉を守るために侵略に対しての秘策を打つ。それは読んだら続きが気になり過ぎて引きこもり死んでしまうという「伝説の魔本」を敵将へ届けるという途方もない計画であった。

この時点でシビれました。まず「読んだら続きが気になって本ごと失踪して死ぬ本」を読まなくてはいけないという時点でヤバい。発狂対策にランダムカットアップした順不同シナリオを翻訳。さらにフラ語に翻訳したうえで装飾もバッチリ施して届けるという職人技術が必要。そのうえ、本としての物質の一意性(ユニークアイテム)の価値を守るために翻訳したものから焼却していく。手法まで信じられないくらいスゴい。

知識、勇気、技術、体力、忠誠心、好奇心、人類がもつあらゆる技量をぶつける必要がある。そこに本があるからだ。これはまるで誰も登ったことがない山へ登る登山家達と同じ心境ではないか。

そして、さらにシビれたのはこの物語の成り立ちが、我々のよく知っているニンジャスレイヤーにも通ずるものがあるということです。

これまで日の目に当たらなかった作品を、翻訳して発表するという意気込み、読者の発狂対策にランダムカットアップされた作品を翻訳次第に生放送、一意性を守るためにボンド&モーゼスの自宅のプリンターを破壊、そして国民を熱狂させて、何かの勝利を得る。

ここで出会ったのは必然であった。ありがとう。

命がけで本を読む話では「ない」。

ということで興奮しながら序章を読み進めていくわけですが、序章の最後でさらなる驚くべきアンブッシュをされることになります。

『……という設定で主人に説明をしたので、我々でその本を創ります。』

筆記屋!歴史家!装飾屋!語り部!プロデュースはこのオレ!時間は迫っている!不眠不休で寝物語を聞き取り最高の「伝説の魔本」を創造ってナポレオンをおもてなししてやろうぜぇ~~!!
俺たちが「夜の種族」だろぉ~~??(ホッコリ)

えっ!!未踏の山を登る人々の話だと思ったら、世界最高の山岳を砂漠の上に創ろうとしている物語だった。 スケールが違う!! てっきり読めない《本》をめぐる物語として「切り取れ、あの祈る手を」とか「ザ・ウォーカー」みたいな話かと思ったのに、話の転がり方がわからない。こいつは続きを読むしかないぜ! だろぉ~~??

未来へ

と、いうことでボンド&モーゼスが実在しなかった場合のニンジャスレイヤーみたいな展開になってきました。しかし、本ができてしまえば作者は実在することになるんです。やるか、やらざるか。ヤルしかないだろ。

私はこれから馴染みの薄いアラビア世界を旅しながら夢の中で見た古代王国の年代記という文庫本三冊分の旅に出ます。探さないでください。

また、奇しくも千夜一夜物語ベースの寝物語ということで、物語中の語り口が「百万光年のちょっと先」とも重なるものがあります。よかったら合わせてお読みください。こっちも面白いよ。

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