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「エレベーター内の沈黙シーン」が好き

スゥゥーーーーーーーーーーー


最近、『味』がわかるようになった映画の場面に「エレベーター内の沈黙シーン」がある。「シャイニング」「キャビン」とかの有名エレベーターシーンではなくて、何でもない場面。

色んな人が乗り合わせて、下から上へ上から下へ。移動するだけの場面。みんなで数字を見上げる、例のアレです。


スゥゥーーーーーーーー


 ↓無言。気まずさ。↑


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チーン

そんだけ。

それがすごく面白い。
映画という数秒間の尺を奪い合うメディアにふいに差し込まれる数秒間の沈黙。ソリの合わない関係、敵同士、上司と部下、共通の友人が降りた後、乗ったらには途中で降りることのできない気まずい空気が場面を支配するのが非常においしい。

これまで見てきた作品にも無数に存在していて、おもしろがっていたんだと思うんですが、言語化して飲み込めた(腹落ちした)のは最近になってからですね。

エレベーター内でのアクションとはまた別モノなんです。

「ソナチネ」の遭遇戦よかったですね。
「アウトレイジ」のエレベータの到着を待つワカモノの表情よかったですね。

ちょっとそれとは別。たまたま乗り合わせた人が強制的に味わわされる無為な時間のことです。

「キングス・オブ・サマー」の気まずい空気よかったですね。様々な出来事を経て色々言いたいこともあるだろう人々が沈黙して数字を追うことしかできない時間。最高ですね。

リーアム・ニーソン版「スノー・ロワイヤル」のエレベータシーンの演出が大変よく、特にオススメできます。(この作品は全編を通じて人を上下に動かすシーンの尺が長くてツボにはまる)

UNDERTALEの「長いエレベーター」のシーン。あれもよい空気だ。


もちろんアクション映画にも「その文脈」として登場していて、激しいアクションの中の絶妙な空気感を演出しています。

「アベンジャーズ:エンドゲーム」の「エレベーターのシーン」は非常に美味しいものがありましたし「マイティ・ソー:バトルロイヤル」の仲の悪い兄弟がちょっとアホっぽい作戦を話し合うエレベーターのシーンもとても楽しい。「助けて!」

そもそもこの「味」がわかるようになった、急に輪郭がはっきりしたのは「ブレックファスト・クラブ」を観てからですね。この作品は、強制的に同じ箱に入れられた特に興味もない相手と半日も宙ぶらりんにされてしまう青春映画です。

つまり「ブレックファスト・クラブ」はエレベータぶらぶら映画なわけです。私はエレベータにたくさんの人が乗り合わせて気まずい空気になるたびに彼らのことを思い出して、そして沈黙にこそ面白さを感じる味覚を得ました。

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チーン


やっと着いた。
じゃあ、降りよっか。



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