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HSP気質に似ている社交不安症(障害)の原因/症状/診断/治療やカウンセリング

最初に

 社交不安症という病気は、相手の視線を意識し過ぎて、変に思われていないかと悩んでしまう病気です。重症になると人前に出ることが苦痛になり、子供のひきこもりの大きな原因になっています。以前は対人恐怖と呼ばれていました。他人の視線に敏感であったり、「変に思われている」と考え過ぎてしまうことはHSPと非常に似ています。




社交不安障害の概要

社交不安障害とは、人前でのスピーチや人との会食、人との会話、電話をかける、注目される、などの場面において、過度な緊張と不安が生じ、十分なパフォーマンスを発揮することができない、不安障害の一つです。また、そのために、そうした場面を回避することにより、生活上、職業上の支障をきたしてしまいます。
これまで日本では対人恐怖と言われることが多くありましたが、DSM-5(精神疾患の診断と統計のマニュアル 第5版)では社交不安障害という名称が用いられ、最近ではこの呼称が広くいきわたっています。
ある研究では、自分のことをシャイである、と回答した割合は約40%に上るとされています。それだけ多くの人が自分自身をシャイであると認識しています。しかし、シャイであったとしても、社交不安障害に該当するとは限りません。DSM-5にもあるように、それが社会的、職業的な支障をきたしているかどうかが線引きとなります。
社交不安障害の生涯有病率は研究によって差はありますが、3%~13%となっています。これは研究によって文化差や年齢構成の違いによって、こうした差が生じているようです。
社交不安障害の発症年齢は平均15.7歳で、概ね思春期に該当します。ちなみに、他の不安障害よりも低い年齢となっています。また、社交不安障害の発症に先立って、幼少期の分離不安、児童期の登校渋りや場面緘黙との関連が指摘されており、そうした既往があると社交不安障害になりやすいようです。
社交不安障害の性差では、男性よりも女性の方が僅かに多いようです。これは他の不安障害の性差では圧倒的に女性の方が多いことから比べると、男性の社交不安障害が多いと理解することができます。ただ、治療に訪れる社交不安障害は男性の方が多いので、カウンセラーや治療者の感覚では男性の方が多いと感じることが多いかもしれません。
同じ社交不安障害でも男性と女性とでは、不安を感じる場面に違いがあります。女性では、目上の人に話しかける、人前でのスピーチ、誰かに見られながら働く、注目の的になる、会議で発言する、反対意見を言う、などが不安を感じるようです。一方で、男性では、商品を返品する、公衆トイレを使う、などが不安を感じる場面としては多いようです。

社交不安障害の文化差では、西洋のほうが東洋よりも罹患率は高いようです。おそらく、内向的な特性に良い価値判断をされる傾向などが関連しているからではないかと考えられています。



社交不安障害の診断

DSM-5における社交不安障害の診断基準には人からの注目を集める少なくとも1つ以上の場面があり、それによって過度な不安や苦痛が生じ、回避したり、耐えたりする、ということが基準には含まれています。また、それらは他の疾患や障害、薬物の作用では説明がつかないことも条件として挙げられています。



【社交不安障害の鑑別診断】

いくつかの精神疾患、精神障害で社交不安障害との鑑別が難しいものがあります。例えば、パニック障害、全般性不安障害、PTSD、気分障害、回避性パーソナリティ障害、スキゾイドパーソナリティ障害などがあります。

パニック障害は回避ということにおいて社交不安障害と非常に似ています。しかし、何を回避するのかで違いがあり、パニック障害ではパニックが起きそうな場所に対する回避です。一方で、社交不安障害ではパニックとは関係なく、人前で恥をかくことに対して回避するという特徴があります。

PTSDも回避がありますが、社交不安障害の回避とは違い、過去のトラウマを想起させる事柄や場所への回避が特徴といえます。

気分障害のうつ症状では学校や職場などの社会活動を回避します。しかし、この回避は気分の低下や意欲の低下の結果で起こっていることです。社交不安障害のような人前での恥を回避することとは違うところで鑑別ができます。

社交不安障害と回避性パーソナリティ障害の鑑別は非常に難しいようです。ある研究では、この両者はどういつ障害の重症度の違いにすぎないと結論しているものもあるようです。ただ、対人関係の過敏性において、両者の違いを見出すことができるという研究もあります。

その研究では、社交不安障害では対人関係の過敏性が限定的で部分的であるのに対して、回避性パーソナリティ障害ではそれがより広範で、やや関係念慮に近い症状があります。つまり、回避性パーソナリティ障害では、現実的には批判されないような場所や事柄でも、過度に不安と恐怖を感じてしまうということのようです。

スキゾイドパーソナリティ障害でも社交不安障害と同様に回避があります。しかし、社交不安障害では回避はしつつも、人との親密感を求めていたり、人からの称賛を喜んだりする情緒があります。そのため回避することを苦痛に感じてしまいます。

一方でスキゾイドパーソナリティ障害では、そうしたことに無関心で、回避することが当然のように捉えているところがあります。また、感情が社交不安障害よりも平板で、浮き沈みに乏しいという特徴も見られます。




社交不安障害の予後

社交不安障害の未治療群の寛解率は非常に低く、また、他の精神疾患を併発する率が非常に高いようです。
そして、重症度は寛解率には関係なく、軽症例でも重症例でも未治療のままでは寛解率は同様に低いようです。
さらに、パーソナリティ障害などが併発していると寛解率はさらに低くなることが研究により報告されています。
社交不安障害の自殺率は通常の2~3倍の確率であり、自殺リスクは高いと言えます。
一方で、社交不安障害の治療群の寛解率は高く、治療することにより改善することは複数の研究で確かめられています。




社交不安障害の特徴

【社交不安障害の気質】

社交不安障害の双子研究では遺伝が中程度に影響していることを示しています。そして、この影響している脆弱性は行動抑制であると指摘されています。行動抑制とは、新しい場面では内気になり、ひきこもり、消極的な反応を示すことです。
また、親のしつけや育児も関連しているようです。社交不安障害の人の親は過保護で、過干渉、無関心、恥をかかせる人であることが研究では示されています。
さらに、児童期や思春期にはいじめられることが多く、そのことが社交不安障害の発症に影響していることが研究では明らかになっています。



【社交不安障害の認知行動療法モデル】

社交不安障害の人は特有の信念や思い込み、ルールを持っています。例えば、「自分はバカである」「自分は何もできない人間だ」というような否定的な信念を持っています。こうした信念があるので、パフォーマンスを求められる場面では、失敗するイメージを持ってしまいます。
そのイメージは繰り返しリハーサルされてしまうので、覚醒状態が高まり、その身体感覚に意識を集中してしまいます。そのため、実際に注意を向けないといけない様々な事柄を無視ししてしまい、結果的に実際に失敗してしまいます。その失敗は先ほどの信念を強化してしまうでしょう。
これらは社交不安障害の人は他者のことを注目しているのではなく、実は自分自身のことを注目し、自分自身のことばかりを考えてしまっているということを示しています。
また、社交不安障害の人は回避や安全確保行動(話の内容を準備しリハーサルする、汗を隠すために厚着をする、震えを隠すために力を入れる、など)をしてしまいがちです。社交不安障害の人はこうしたことで不安を隠すことができたり、パフォーマンスを発揮できたりすると信じています。しかし、実際には回避や安全確保行動により、パフォーマンスを発揮することができず、失敗に至ります。
こうした信念や行動、そしてその結果のループが社交不安障害の症状を維持し、時には増やしていってしまいます。



社交不安障害の治療

【薬物療法】

社交不安障害に効果がある薬物はSSRI、ベンゾジアゼピン系をはじめ、それなりに多くあります。ただし、薬物を中断した場合の再発率が高いので、薬物療法の中断や終了には注意が必要のようです。また、薬物療法よりも心理療法のほうが、治療終了後の再発や再燃は少ないという研究もあります。効果自体には、薬物療法と心理療法は同程度であることが示されています。



【カウンセリング】

社交不安障害に対してどのような種類の心理療法、カウンセリングを行っていくとしても、その前提となる信頼関係を構築する努力を行います。また、見立てや今後の方針などの説明などを行い、インフォームドコンセントに努める必要もあります。
さらに、社交不安障害は関係性の病理であるといえるので、それはカウンセラーとの関係においても生じることは当然でしょう。精神分析では転移とも言いますが、社交不安障害の人とカウンセラーとの関係の質についても注意を払うことはカウンセリングやその後の心理療法をしていく上で重要な情報となります。



【認知行動療法】

認知行動療法といっても様々な技法があります。社交不安障害に効果的な技法としては、認知再構成法、エクスポージャー、SST、リラクゼーションが挙げられます。



【認知療法】

社交不安障害の人は非機能的な認知を多くもっており、それにより症状を維持、悪化させてしまいます。認知には、自動思考のレベル、信念のレベル、スキーマのレベルがあります。
まず、自動思考とは、その時の状況によって非自発的に頭に思い浮かぶ考え方や物の見方です。こうした自動思考を記録していき、機能的な認知を発見していきます。さらに、その自動思考に影響を与える、信念やスキーマを同定し、変化を促していきます。
こうした作業を日々の生活の中で思考記録をつけ、自ら見出していく訓練をクライエントには行ってもらいます。またカウンセリングの中ではカウンセラーはソクラテス問答を用い、発見的に対応していきます。




【エクスポージャー】

エクスポージャーは曝露療法とも言われます。恐れている事柄や状況に曝露し、恐れていることが実際には起こらないことを確かめ、そして、不安に順応し、不安が低下してさせてます。

こうしたエクスポージャーに取り組むために、まずは不安階層表を作成することからはじめます。不安の高い順に状況を設定します。そして、不安の低いところから徐々にエクスポージャーをはじめ、クリアするごとに不安の高い状況へのエクスポージャーの行います。その不安の高低は同じ社交不安障害の人でも各個人によって違いがあるので、個別的に作成していきます。

エクスポージャーのポイントは、回避や安全確保行動をさせないようにすることです。そのために、クライエントはエクスポージャーの意義や意味をしっかりと理解する必要があります。カウンセラーも励ましや承認を用い、クライエントが勇気をもってエクスポージャーに取り組めるようにサポートします。




【SST(ソーシャルスキルトレーニング)】

社交不安障害の人は対人スキルや社会スキルが乏しいことが研究では見出されています。そこで、SST(社会技能訓練、Social Skills Training)を用いることにより、その対人スキルの向上を目指します。
ただし、社交不安障害にSSTを単独で実施しても、効果がないことが研究では示唆されていますが、他の技法に付属させ、補足的に実施することで、効果の上乗せができることが示されています。

ですので、SSTはオプションとして追加することが良いようです。




【リラクゼーション】

社交不安障害のリラクゼーションでは、漸進的筋弛緩法と呼吸法の効果が認められています。リラクゼーションによって、全般的な不安やストレスを低下させ、不安のコントロールを行っていくことは社交不安障害のカウンセリングには有効のようです。



社交不安障害のカウンセリングを受ける


社交不安障害の概要、原因、診断、疫学、予後、鑑別、モデル、アセスメント、治療、治し方、カウンセリングなどについてまとめました。
社交不安障害は手当てがないと予後は不良です。
しかし、これは言い換えると適切な手当て(治療やカウンセリング、認知行動療法)があれば改善するということです。

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もうすぐ8月も終わりですが、寒暖差にお気をつけ下さい。
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