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アートなのかデザインなのか:ファスティング体験と自己意識

週末リトリート

とある縁があり、週末リトリートに参加した。

リトリートとは、退去や引退や避難する等の意味だが、ここでは東京の喧騒から離れ、静かな空間でゆっくり過ごし、自分の体や心の状態を整えることを言う。
すでに同様のイベントやセミナーは数多くあるが、今回は縁もあり、初めてこのようなイベントに参加した。

このリトリートはゆっくりするだけでなく、ファスティング(断食)もおこない身体もデトックスする2泊3日のプログラムである。
慢性的に寝不足であるが、そこそこ健康体を半世紀以上維持しているという自負心を持っている自分にとって、このプログラムが必要であるかどうか不明ではあったが、思い切って参加してみることとした。
(過信が一番健康を損なうことは理解しているのだが・・・)

主催者は無添加・オーガニック素材で料理代行ビジネスを展開する
株式会社No.8 Goodの清水みちこ氏。
食の安全性を理論で説く才女。

ファスティング

週末リトリートでは、「ゆるファスティング」と称し、48時間断食の状態となる。

まったく食べない訳ではなく、固形食を断つことになる。
清水女史の作る雑穀粥や生姜の味噌汁をお椀に一杯、口にすることができる。

以前に、1日に1食しか食べない健康法を実行した経験があるので、断食は大丈夫かと思っていたが、空腹よりも思わぬ好転反応に苦しめられた。

好転反応とは、体が良くなる過程で、過敏に反応している状態のことだが、私の場合、頭痛に終始悩まされた。
このコラムを書いている、ファスティング終了から1日経った今もまだ頭痛がする。

頭痛など、あまり経験のない健康体だと思っていたが、48時間の断食で、出てきた好転反応は、自分の体の健康状態が幻想だったことを示すものだろう。
カフェイン、添加物、加工食品の摂取が多い体だっただけに、好転反応も強いものになったようだ。
頭痛の他に、かなりの倦怠感、そして強烈な肩こり、これは体の中から老廃物と一緒に、添加物などが出て行く過程で起こるものだという。
それにしてもかなりの怠さだった。

一緒に参加していた男性も女性も同じように頭痛と倦怠感を感じていたようなので、ファスティングの順反応なのだろう。
しかし、この頭痛のおかげで、自分の意識を拡散させることなく、自分の方へベクトルを向けることができた。

私的自己意識にアクセスする

前回のコラムで、私的自己意識と公的自己意識について書いた。
私的自己意識(private self-consciousness)は、自己に対する思考や内省のことであり、自分の感情、気分や動機などを意識することであり、
公的自己意識は(public self-consciousness)、自分自身の社会的なポジションや言動、外見など、他者から見た自分への意識のことである。

私的自己意識にアクセスすることの難易度は高い。
自分を意識していると思っていることのほとんどは公的自己意識であるからだ。
日本人特有の空気を読んだり、相手に配慮する気配りなどは、公的自己意識が促進している可能性がある。
日常生活では、公的自己意識を強くせざるを得ない。

私的自己意識とは、平易に言えば「自分をみつめる」ことである。
この行為は、今回の週末リトリートで過ごした時間の中と比較すると、日常的な生活の中で、私的自己意識にアクセスすることはあらためて難しいとわかった。

アート思考の講座のはじめには、自分と向き合ってもらうのだが、その向き合う方法をずっと探している。
自己啓発的な、自分の生き方を探すこととアート思考は異なる。
また、スピリチャルアプローチもあるがアート思考の場合の自分の向き合い方は、瞑想などとは異なり、抽象概念を言葉にする過程が自分をみつめることになっている。

この自分へのアプローチの方法を探していたのだが、この週末リトリートのプログラムは当てはまるかも知れない。
・他者と話をしない時間
・外部からの情報を止める
・静寂だが、自然の音(風や虫の声)がする環境
・広い空間
・日常の家事など生活のための作業をしない
などの環境は必要だろう。

あくまでも、この自己意識へのアクセスは属人的であり、確かな王道的な方法がある訳ではないが、意識的に環境を変えるのは、やはり自己に意識を向けるには良い。

ここにファスティングが加わったことで、食事への期待感はなく、食事の場での、合宿に参加している人たちとの強制的なコミュニケーションの心配もないことも自分へ意識を向けるよい環境を作り出しているのだと思う。

積極的に環境を変える

すでにファスティングや、その他の健康法を取り入れたり、自分の体や食事に気を使っている人は多いことと思う。
私自身もまったく気を使っていない訳ではないが、それよりも仕事の責任を果たすことを優先することが多い。

今回は健康をテーマにしてのファスティングとリトリートであったが、これは、自己に意識を向けるアート思考の一歩目としても応用できる。

多忙で責任ある使命を持っている方がアート思考をはじめるきっかけとして、日常生活の中で、自己に意識を向けることはかなり難しい作業である。
このように、思い切ってリトリートをしつつ創造性のある思考にシフトしていってもいいだろう。

週末リトリートに興味のある方はこちらをごらんください!

Cover Graphic : Heywood Broun and George S. Chappell (eds). Nonsenseorship (New York: G. P. Putnam's sons. 1922).






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