浅井由剛

京都芸術大学院 学際デザイン研究領域 准教授をやりながら、株式会社カラーコードという東…

浅井由剛

京都芸術大学院 学際デザイン研究領域 准教授をやりながら、株式会社カラーコードという東京神田でブランディングを得意とする小さなデザイン事務所を経営しています。20代は絵の勉強と海外放浪の日々。30代は仕事に明け暮れて、40代で起業。50代になってデザインのことが少しわかって来た。

マガジン

  • アートなのかデザインなのか

    デザイン思考・アート思考ことを通して、どうやったらこれから必要とされるクリエイティブな人になれるかを、日々のデザインの仕事の中で考えたり感じて来たことを書いています。

最近の記事

創造性とCOLOMAGA Project

「アート思考とは何か」を研究していくと、やはり「創造性とは何か」にたどり着くことになる。 アートを生み出すアーティストの思考も、正解のない「創造性」の一部であり、創造という人間の基本的な営みの中に包含される。 この「創造性とは何か」は、自分の力量ではテーマが大き過ぎて手に負えないが、知の巨匠たちがライフワークとして取り組んだテーマは挑戦的であり、創造性がいったいどの様な構造をしているのか知りたいという知的欲求は止まらない。 自分が創造性のある人間かどうかは一旦保留にすること

    • アートなのかデザインなのか:創造的な人

      創造的な人の特徴過日、アート思考研究会の代表幹事を一緒にやっている秋山ゆかりさんとの会話の中で、創造性の研究で有名なミハイ・チクセントミハイの名著「クリエイティビティ」の創造的な人の特徴の話題になった。 その著作の中でチクセントミハイは、創造的な人々の10の特徴をあげている。 1:身体的エネルギーがあるが、しばしば物静かで落ち着いている。 快活さと情熱のオーラを放ちながら高い集中力を保って長時間働くことができる。 2:頭脳は明晰ありながら、同時に単純な側面も持っている。

      • アートなのかデザインなのか:創造とアート(与謝野晶子の言葉から)

        婦人公論から1919年の婦人公論の記事に、女性の参政権に関する与謝野晶子の投稿がある。 婦人公論のホームページにアーカイブされているその記事の中に、創造に関する思いを述べた部分がある。 少し長いが引用する。 創造は過去と現在とを材料としながら新しい未来を発明する能力です。この能力は個人のものです。個性的のものです。多数は之を助長し、併せて之を受容し、之と同化する作用はあっても、或(ある)一つの新しい文化内容を創造すると云うことは、厳格なる意味に於て全く不可能なことだと思われ

        • アートなのかデザインなのか:クリエイターは地域資源

          デザイン塾とは前回の記事で、三島市で開催したデザイン塾について少しだけ書いた。 デザイン塾とは、2016年と2017年に開催した、三島市クリエイティブシティ構想に基づく、地元のクリエイター(主にデザイナー)と企業のマッチングを進め、約半年間かけて新規事業やプロジェクトを開発推進するプロジェクトのことだ。 筆者である私は、そこにディレクターとして関わり、自らも講師として登壇しながらプロジェクトを進めていった。 プロセスはおおよそ以下の通りである。 まずは、参加者をクリエイ

        創造性とCOLOMAGA Project

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        • アートなのかデザインなのか
          30本

        記事

          アートなのかデザインなのか:今だからクリエイティブクラスを考える

          クリエイティブと町づくりを徒然と…。日本を海外に売り込むという政策を掲げていた経産省のクール・ジャパン質を設立したのが2010年。 その後、官民ファンドとして海外需要開拓支援機構を立ち上がったのが、2013年である。 この「クール・ジャパン」はイギリスの国家ブランド戦略「クール・ブリタニア」を参考にしたネーミングで、日本の文化的資産を海外に発信するものであった。 後述する三島デザイン塾の開催をするにあたり、クリエイティブシティについての知見をいただいた三菱UFJリサーチ&

          アートなのかデザインなのか:今だからクリエイティブクラスを考える

          アートなのかデザインなのか:子どもたちとの取り組みCOLOMAGA Project(2)

          COLOMAGA SUMMITの開催子どもたちと取り組んだ冊子づくりの8年越しの活動が実を結んだようなイベントが2020年10月17日に開催された。 現在、同じ活動を5つの地域(伊豆市・伊豆の国市・沼津市・山梨県北杜市・東京都文京区)で展開している。各地域の活動に携わっている代表が集まって意見交換、コミュニケーションを取ってみようと言うことで、伊豆市で活動している「KURURA制作実行委員会」の方々が企画・運営をしてくれた。 残念ながら、各地域からの子どもたちの参加はでき

          アートなのかデザインなのか:子どもたちとの取り組みCOLOMAGA Project(2)

          アートなのかデザインなのか:子どもたちとの取り組みCOLOMAGA Project(1)

          COLOMAGA Projectとは子どもローカルマガジンの略で、「コロマガ」と名付けたこのプロジェクトは、子どもたちが自分の住んでいる町を調べて、取材して、記事にして、それをマガジン(雑誌)として出版するプロジェクト。 地域活性と子どもの創造性の育成を同時におこないながら、シビックプライドを醸成していく活動として、静岡県伊豆市の仲間たちと始めたプロジェクトである。 このプロジェクトを始めた当時、私たちはひとつの仮説をたてて、この活動をはじめた。 参加した子どもたちは、成

          アートなのかデザインなのか:子どもたちとの取り組みCOLOMAGA Project(1)

          アートなのかデザインなのか:これからのデザインとデザイン経営

          人材育成とデザインの考え方私自身のことで恐縮だが、三浪までして美術大学に入学し、デザインの勉強をしたにもかかわらず、30代の頃はデザイナーの友人はほとんどいなかった。 40代になってもデザイナーとして仕事をしていたにも関わらず、デザイナーの友人よりも、人事・人材育成を生業としている友人が多かった。 私自身のデザイン哲学を形成している主要な部分は、この友人たちからの影響を非常に多く受けていると思っている。 元々、デザイナーとして自分の作品やアイデアで立身出世を図ろうというよ

          アートなのかデザインなのか:これからのデザインとデザイン経営

          アートなのかデザインなのか:クリエイティブと教養

          はじめにあらかじめことわっておくが、筆者の私が教養があるという訳ではない。 むしろ、これまでに教養が必要な場面が数多くあり、自分の勉強不足を感じることが多かった。 何かを創り上げることと、教養は無関係のように言う人が少なからず存在するし、意外性を求める創造力には、教養が邪魔をするという人もいる。 しかし、奇抜なアイデアほど人目は引くものの、その根底にあるストーリーに確固たるものがないと、そこはかとない深みを感じることができない場合が多い。 また、アート作品においても、曖

          アートなのかデザインなのか:クリエイティブと教養

          アートなのかデザインなのか:アート思考への期待と不安

          ○○思考を消費するアート思考研究会の定例会の中で、こんな意見が出て来た。 日本は「〇〇思考」を消費して、またさらに次の「〇〇思考」を探すだろう。「アート思考」もまた同じようになる可能性がある。 (言い方はぜんぜん違うと思いますが、こんな要旨だったと記憶してます) ビジネス界隈では、つい最近まで「デザイン思考」という言葉がよく使われていた。 しかし、この言葉もアーリーアダプターが飛びついたのが10年ほど前であり、そこから時を経てアーリーマジョリティに広がって来た段階であり、一

          アートなのかデザインなのか:アート思考への期待と不安

          アートなのかデザインなのか:ファスティング体験と自己意識

          週末リトリートとある縁があり、週末リトリートに参加した。 リトリートとは、退去や引退や避難する等の意味だが、ここでは東京の喧騒から離れ、静かな空間でゆっくり過ごし、自分の体や心の状態を整えることを言う。 すでに同様のイベントやセミナーは数多くあるが、今回は縁もあり、初めてこのようなイベントに参加した。 このリトリートはゆっくりするだけでなく、ファスティング(断食)もおこない身体もデトックスする2泊3日のプログラムである。 慢性的に寝不足であるが、そこそこ健康体を半世紀以上

          アートなのかデザインなのか:ファスティング体験と自己意識

          アートなのかデザインなのか:意識を自分に向ける

          自分へ関心が向けられるかアート思考では、まずは自分が興味関心をあること、自分がワクワクすることが何かを意識するのか大事だという。 実際に表現をする動機は、自己の関心・価値・思想・美意識・社会的地位・影響力など、自分を意識することから始まる。 自分を客観的に観察し、自分のことを理解する試みがアート思考には必要なのである。 それには、意識を自分に向ける必要があり、自分が一体何者であるのかを探求したり、自分の感情の動きをメタ認知する必要がある。 この状態は、自ら何かを表現しよう

          アートなのかデザインなのか:意識を自分に向ける

          アートなのかデザインなのか:カッコイイとはなんなのだ。

          日常的に使われているカッコイイデザインの打ち合わせの際に必ず出てくる「カッコイイ」や「センスがいい」という概念の本質はあまりにも不明瞭で、不明確である。 「カッコイイ」「カッコいい」「かっこいい」「かっこ良い」「格好良い」「恰好良い」など書き方もバラバラだが、それぞれに意味するものも微妙に違っている。 「カワイイ」と同様、「カッコイイ」もカタカナにすることにより、本来の意味を超えて、何らかの感情的な動きを表現し、コミュニケーションを取るための簡便な記号になっている。 基本

          アートなのかデザインなのか:カッコイイとはなんなのだ。

          アートなのかデザインなのか:ヒッピーカルチャー(4)ニューエイジ

          7月からNUMAZU DESIGN CENTER主催で「VISION × DESIGN クリエイティブマインド講座」というアート・デザイン思考をベースにしたセミナーを行っている。 募集したのは0期生。 ほとんど実験に近い内容の講座なので0期生なのだが、これに興味を持って参加してくれた奇特な受講生の方たちは、 いい意味で全員変わり者である。 その受講生の中から「水瓶座の時代」という言葉が出て来た。 水瓶座とは「Aquarius:アクエリアス」である。 そこで、思い出したのは、

          アートなのかデザインなのか:ヒッピーカルチャー(4)ニューエイジ

          アートなのかデザインなのか:気になった論文の話

          先行研究を探すには、論文をあたるのが最適なのだが、日本語だけでなく、英文の論文が読めれば情報ソースが広がるだろうといつも思っている。 英文の論文を読む際は、自分の英文読解能力の低さを嘆きつつも、翻訳ソフトの精度が高くなってくれて本当に感謝である。 これで少しは読むことができるようになった。 アート思考とデザイン思考は、日本においては前号でも書いたように、一般的にはまだまだ認知されていない。 同業のデザインに携わっている人々のSNSの投稿や、記事を読んでいると、創造プロセスを

          アートなのかデザインなのか:気になった論文の話

          アートなのかデザインなのか:アート思考の4つの力

          アート思考に関わっていると、アート思考という言葉がインターネット上で頻繁に見かけるようになり、社会的なトレンドになっているように思えてしまうが、実際は、まだまだ関心をもたれていない。 時々、一般の社会人向け(東京特別区の職員・大手企業のビジネスマンなど)にデザインの研修などを行っているが、デザイン思考やアート思考という言葉を聞いたことあるという質問をすると、手を挙げる人は30人中2〜3人なので、おおよそ1割以下だ。 さらにこのアート思考に関心を持ってもらたいと思う。 一般

          アートなのかデザインなのか:アート思考の4つの力