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アートなのかデザインなのか:創造的な人

創造的な人の特徴

過日、アート思考研究会の代表幹事を一緒にやっている秋山ゆかりさんとの会話の中で、創造性の研究で有名なミハイ・チクセントミハイの名著「クリエイティビティ」の創造的な人の特徴の話題になった。

その著作の中でチクセントミハイは、創造的な人々の10の特徴をあげている。

1:身体的エネルギーがあるが、しばしば物静かで落ち着いている。
快活さと情熱のオーラを放ちながら高い集中力を保って長時間働くことができる。
2:頭脳は明晰ありながら、同時に単純な側面も持っている。しかし、彼らがどれほど賢いのかに関しては疑問の余地がある
3:遊び心と自制心、あるいは、責任と無責任といった相互に対応する組み合わせ。極端な行動をする
4:一方に想像や空想を置き、もう一方にしっかりと根づいた現実感覚を置いて、その間を行き来する。
5:外向性と内向性の間に横たわる連続体の両極端を漂っているように見える。
6:非常に謙虚であると同時に傲慢である。
7:こうした厳格な性役割の固定観念から自由である。
8:反逆的で独立心が強い。
9:自分の仕事にとても情熱的であるが同時にきわめて客観的でもある。
10:開放性と感受性によって苦悩と苦痛、そして、多くの楽しさにさらされている

ミクセントミハイは上記の特徴を基に、結果として「複雑な性格」を創造的な人に必要な特性としている。
周囲の知人のクリエイターたちを見ても、上記の特徴は納得のいくところである。

また、以前紹介したコロンビアカレッジシカゴのジェシカ・ジェイコブ氏の論文「Intersections in Design Thinking and Art Thinking: Towards Interdisciplinary Innovation」に書かれていたファインアート系のアーティストのマインドセットは以下のようになる。

1:実験的(失敗を恐れない)
2:あいまいさを許容する(指示や決定はあまり意味がない)
3:未来志向である(作品をつくる際はどんなものでも未来をみている)

チクセントミハイの言う複雑な性格や、ジェシカ・ジェイコブの言うアーティストのマインドセットは、自分の周囲のクリエイターたちの特徴を表していると言ると思える。

生きやすいかどうか

上記の特徴は、決して遺伝的な特性ではなく、環境や、自分の意識により変化させることの出来る特徴である。

しかし、今のところは、教育や環境によって創造的になったと言うよりも、生まれつきの特性で、創造的な人になったケースが多いように思う。

自分も含めてそうだが、複雑な性格の創造的な人間は、生きることに少々、力を使う必要がある。
複雑な中で、両極端を行き来すること自体かなりのエネルギーを消耗するし、意識して両極を行き来する訳ではないので、気づかないうちに自分のエネルギーを消耗する場合が多い。

自分自身のことを創造的な人間か判断することは置いておけば、私自身もかなり落ち込みやすく、反対に調子づきやすい人間であり、様々な意味で複雑過ぎて自分自身がわからなくなる時が多い。

そういう自分を意識して自制していることが多い。
年齢を重ねるごとにそれが出来るようになって来たというのが正しいだろう。

生まれついての上記の特徴を備えている人は、HSPやADHDなどの特性を持つ人がある場合が多い。またジェンダー的な複雑さを持つ人も創造的な人であるということである。

ここ最近のビジネス界のトレンドとしては、いかにイノベーティブな製品やサービスを生み出し、創造的な企業になるかと言うテーマが多い。
と言うことは、企業自体が創造的になるということは、従業員自体が創造的でなければそれは望めないと言うことである。

創造的な特徴は教育や環境でも変化させることが出来るが、まずは、複雑性な人を受け入れる土壌を作ることが、創造的な環境を整えていくことになるだろう。
少なくとも今の状態では、複雑性のある人間が仕事をしやすい環境の企業は少ないように思われる。
それは、トップの企業を導く方向性というよりも、同僚や上司の、その複雑性に対する接し方であり、理解であり、その人自身が創造的であるか、またはありたいかと言う意志が重要である。

アート思考に興味のある企業も、そのあたりに留意して、創造的な環境を作ってもらいたいと願う。


Cover Graphic : Vintage European style key engraving from Six Semaines de Vacances by Paul Poiré

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