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金曜、蝙蝠の飛ぶ夕暮れ

クリーニング屋のおばさんとの約束の金曜日。
火曜日に持って行ったら金曜日が割引の日だから、金曜日に持っておいで!と言われたのでその時から紙袋に入れたままのしわしわになったシーツをまた持って行った。

クリーニングの受取処理を済ませるとおばさんが話し始める。前回もおばさんの身の上話をひたすら聞いて小一時間クリーニング屋で過ごした。今回もまた家庭の話が始まりつつある。やばい。この話長いよな。子育ての苦労話、息子に比べ(嫁込みだからか?)娘がどれだけ良い子か、嫁姑問題。前にも聞いてるとはとても言えず、笑顔で相槌を打つ。ずっと苦労してきたんだろうな。

申し訳ないが今日はずっと聞いていられる時間が無い。じりじりと入口の自動ドアの方に後退りする。家族の話から仕事の話に切り替わった時、自動ドアが開き他の客が入って来た。助かった!「じゃ、よろしくお願いします!」とデカめの声で言って店を出る。

昼間はそんなことがあって結局行ってみたかった所をひとつ断念した。まあそんな日もある。

太陽が沈み始める頃、チンダル現象とか言う何ともかっこつかないような名前もあるらしいけど、薄明光線っていうの? 雲の隙間から光の筋が幾つもさしていてとても美しい。

写真じゃ分かりにくいかな
ラダーって言う人もいるね


日も落ちて辺りが薄暗くなってきた頃、蝙蝠が飛び始める。鳥とは違って不規則に飛び回るからすぐに蝙蝠だと分かる。かなりの数がいたので撮れたらいいなと思ったけどランダムに飛ぶその動きが速すぎて撮れなかった。


太陽が沈んでからの、深い青に紫が混ざったような、どこかにほんのりピンク色がいるような空のグラデーション。このくらいの青が好きだ。一緒にこのまま夜に溶けていきたいとさえ思う。

いつかキミと話をした。
堤防に座り海に沈む太陽を見ながら本当の夜が来るまで。その時の空にも蝙蝠がたくさん飛んでいた。
夕暮れと蝙蝠の幽けき記憶。

暮れてゆく空は移り気で
ふと目を逸らせばもう別の顔。

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