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BAG ONEイベントレポ #05 | 「MEANINGFUL CITY MAGAZINE」創刊記念トークイベントVol.2 ―特別ゲスト大西正紀氏と探る、ミーニングフルなコミュニティや都市のつくり方


「“コミュニティ”って何ですか?」

と、もし小学生に尋ねられたら、あなたは説明することができますか?
正直に小声で言って「できません」、編集部 saです。

なんとな〜く、もやがかった感じではわかるけれど、はっきりと簡単な日本語で説明できる方は少ないのではないでしょうか?(saの希望的観測含む)

今回のイベントはそんな「コミュニティ」について、改めて真正面から向き合う方々のお話です。


「意味が紡がれていく都市」=ミーニングフル・シティってなんだ?

6月9日、『MEANINGFUL CITY MAGAZINE』創刊記念トークイベントVol.2 ―特別ゲスト大西正紀氏と探る、ミーニングフルなコミュニティや都市のつくり方」が開催されました。


「MEANINGFUL CITY MAGAZINE」は、さまざまな分野のメンバーで構成されたTOKYO PARALLEL GUIDEの皆さんが、約3年以上の活動期間を経て初めて制作されたzineです。
「Meaningful City」とは、「意味が紡がれていく都市」のこと。
まちづくりにおいて、機械的に高層ビルや商業施設を建てていく「作り手」と、都市への関与に無関心な「使い手」の間にある隔たりを埋めていき、「Meaningful=意味ある」都市にしていくための模索を目的としています。
そして、その記念すべき第一号のテーマが「コミュニティ」です。


そもそも、「コミュニティ」とはなんでしょうか? 改めて調べてみました。

村落、都市、地方など、地域性と共同性という二つの要件を中心に構成されている社会のこと。(コトバンクより)


「〜〜性」という言葉って、大抵ピンときませんよね……。(saの希望的観測含む) 
つまり、学校や職場、よく訪れるカフェの顔馴染み同士など、「複数人で関係性を築いている状態」のことを指すとsaは考えました。

今回のトークでは、この「コミュニティ」について、TOKYO PARALLEL GUIDEの6名とゲストスピーカーである「喫茶ランドリー」のオーナー・大西正紀さんが、喫茶ランドリーを実例としてディスカッションをしました。ちなみに、大西さんは今回のzineにも寄稿者として参加しています。


1_全員


登壇者プロフィール

TOKYO PARALLEL GUIDEの皆さん(敬称略)

石川さん

石川由佳子
アーバン・エクスペリエンス・デザイナー、一般社団法人for Cities代表理事/Good News for Cities
ドイツで暮らしていた経験から都市のあり方や人の営みが起こる“源”に関心を持ち、ボトムアップ型の都市づくりをテーマに活動を行う。体験をつくることを中心に「場」のデザインプロジェクトを国内外で手がける。


大谷さん

大谷省悟
301プランナー/ディレクター/CEO
映像プロダクションを経て、2014年に株式会社301を設立。ブランド開発やリブランディングプロジェクトを多数主導。2019年に「新しい仕事観」の発信拠点として代々木上原に「No.」を立ち上げる。


中村さん

中村拓朗
フリーランスデザイナー
2020年慶應SFC卒。大学では脳波と機械学習を用いた記憶されやすい画像生成の研究を行う。卒業後フリーランスデザイナーとして、主にUXデザインやマーケティング戦略に従事。


細川さん

細川紗良
301プロジェクトマネージャー
2019年武蔵野美術大学卒業。301のメンバーとして2019年にNo.を立ち上げ、飲食×デザインの領域でPM、プランニングを行う。


宮崎さん

宮崎悠
MY HEAD Graphic Designer+Director
デザインレーベル「MY HEAD」主宰。グラフィックデザインを軸に事業のブランディングやプロジェクトのディレクションを手掛ける。


山﨑さん

山﨑正樹
日本大学客員研究員/森ビル
大学・大学院で都市開発と公共空間の研究を行う。2010年森ビル入社。都市計画、タウンマネジメント、住宅新規事業の業務に従事。現在、会社員傍ら、都市の文化や個性創出につながるエリア・ディベロップメントの研究に取組む。


〈特別ゲスト〉

大西さん

大西正紀
株式会社グランドレベルディレクター/喫茶ランドリーオーナー
1975年生まれ。2003年日本大学大学院修士課程前期修了後、渡英。2003〜2004年設計事務所Ushida Findlay Architects UK 勤務。2004年田中元子と共にmosaki 共同設立。編集者として、主に建築メディアづくりに従事。2016年「1階づくりはまちづくり」をモットーにした株式会社グランドレベルの設立に参画。日々、世界のグランドレベルを研究しながら、さまざまな「まちの1階」をデザインする。


「やりたいことを実現できる場所」喫茶ランドリー

喫茶ランドリーは、東京都墨田区森下に2018年にオープンしたランドリー併設の喫茶店。「どんな人にも自由なくつろぎ」をコンセプトに据え、その開かれた佇まいで町の人々に愛される存在となっています。


喫茶ランドリーの唯一無二の特徴は、その「自由さ」です。
大西さんは喫茶ランドリーを「やりたいことを実現できる場所」と話します。
老若男女が、店の中でそれぞれお茶や食事、洗濯から仕事、果ては編み物やイベントまで、各々「好きなことをして過ごす」。そんなとても当たり前のことをきっかけとして、店内ではお客さん同士で会話が生まれることが多くあるそう。


自然発生的にコミュニティが生まれる様子から、
「全国各地から『喫茶ランドリーのようなコミュニテイをつくりたい』とたくさんの人々が訪れてくださいます」
と大西さんは言います。
しかしその一方で、大西さんは
「『コミュニティ』をつくろうとしたことは、今まで一度もない」とも。


このことについて、大西さんは「MEANINGFUL CITY MAGAZINE」でこう記しています。

「私もこういうコミュニティをつくってみたい!」 この言葉に対する違和感は何だろうと、いつも考えてきました。
(中略)いつも意識するのは、できるだけ「コミュニティ」を感じさせない器を、さまざまな「コミュニティ」を受け入れる器をつくろうということ。この視点は、「場」や「まち」や「都市」をつくる側、運営する側の人たちにとっては、大切なことだと考えてきました。
なぜなら、コミュニティとは、そこに生まれた瞬間に「壁」を持つからです。


今回のトークで、この意味が腑に落ちた大西さんの言葉が二つありました。

ひとつ目は、「喫茶ランドリーは店づくりの際、ターゲット層をあえて定めていない」
それは、どのようなお客さんが来てもその人の存在を認めることに重点を置き、訪れる人に合わせた「お店のルールづくり」をするということです。

そしてふたつ目に、「お店への敷居は低く、でもバランスは大切に」
どんな人もお店に入りやすい雰囲気のためには、お店に集まる人にさまざまな人がいること、自分の場所だと思ってもらえるようなお店づくりをすることが重要です。

それはかつて、大西さんがランドリースペースに子どもたちの遊び場となるキッズスペースを設置したものの、撤去に至った経験から学んだそう。
設置の際、子どもたちが以前より多く集まり、「子どもとその家族に特化して」、居心地のいいお店になってしまったと大西さんは話します。そして、喫茶ランドリーが大切にしている「ノーターゲット」のどんな人にとっても訪れやすい場のためには、そういったアプローチは不要だったと反芻します。

人は、自分と似たような性別や年齢、服装、雰囲気の人がいると知ることで、見知らぬお店に入るハードルがぐっと下がると考えられますが、初めてのお店へ感じる心のハードルは人それぞれです。
大西さんは、その人が入店に至るまでの何かしらの「フック」をできる限り平等に多くすること、そして町にその「フック」がいくつかあることが、最終的には「ミーニングフル・シティ」への繋がりになるのではないかと考えます。


2_トーク全員


「コミュニティ」とは他者が定めるもの

結果的に、「コミュニティ」とは一体何なのでしょうか?

今回のディスカッションでは、「コミュニティ」とは他者が定めるものだという認識で一致します。それがよく分かるのが、大西さんの「大人数で集まっていたとしても、コミュニケーションは一対一の会話の積み重ねでしかない」という言葉。喫茶ランドリーにおいては、コミュニティの中にいる当事者に、その当事者意識がないことがわかります。

つまり、この時の「コミュニティ」という枠組みは、「その枠組みの外から眺める」他者が定めたもの。それは時に自分と他者の「壁」となり、関わりにくさを感じさせてしまうものです。
だからこそ、「どんな人にも自由なくつろぎ」を掲げる喫茶ランドリーにとって、「『コミュニティ』を感じさせない器」をつくることが何よりも大切なのではないかと考えます。

ターゲットを定めないあらゆる「フック」をもつ喫茶ランドリーのようなミーニングフルな場所を、町のさまざまな場所で生み出すこと。
そうして「点」を繋ぎ、「面」にすることで、「ミーニングフル・シティ」を作っていく。その過程にはまだまだ話し合っていかねばならない課題がありますが、喫茶ランドリーはその第一歩なのではないかと考える今回のトークでした。


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写真:編集部

文:sa


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【BAG ONE(バグワン)とは】
出版社トゥーヴァージンズが運営する「本を読む人が集まる場」をコンセプトにした「BOOK & CAFÉ BAR」です。

なかなか集まりづらい今の状況ですが、オンラインでのイベントなど、試行錯誤しつつ配慮してイベントを開催しております〜!



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【sa】

入社2年目、4月から編集部配属。今までの人生で触れてこなかった「都市」に関する今回の話題。頭をショートさせながら書きましたが、今までとはちがった視点でこれからは「町」を見ることができる気がします。

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