出版社トゥーヴァージンズ(TWO VIRGINS)
トゥーヴァージンズ発の新たな連載メディアです。 本線(本来の道)とは別の“もうひとつの道”。 そんな脇道にふと入っていった先に、 まだ見ぬ言葉や文章、景色との新たな出会いがありますように。 エッセイ・散文を中心として、各連載、毎月1回更新していきます。 (メインビジュアルはカヤヒロヤさん作)
日本で唯一のブルース/ソウル/ゴスペルの音楽専門誌『ブルース&ソウル・レコーズ』の公式noteです。トゥーヴァージンズnoteへ移動しました!
本と仕事と人にまつわるあれこれを発信します。
友人がなか卯の「天然うにいくら増し増し丼」を激賞していた。これまで、わたしから友人にセブン-イレブンの「エリックサウス監修 ビリヤニ」や、松屋の「シュクメルリ鍋定食」を薦めたことがあった。だが、友人から布教されるのは初めてだったので、珍しいなと思いつつも、その熱量に面食らった。以下は実際のメッセージからの引用である。 都心やオフィス街でまともな丼ものが食べられる 札幌でも同じ値段で食べられないのではないか 1,690円の段階でもウニとイクラが2倍設定になる
基準とは、心拍数のことなのだろう。 歩くピッチも、話す速度も、おにぎりを握るテンポも。 我々は生身で、その要の酸素を送る血のポンプが、心臓という指揮者なのだから。 ランナーズハイとは、心拍数が多すぎる走者が見る、早送りの白い楽園である。 鬱とは、心のリズムが心拍数とシンクロしない、一人無言絶唱団のことである。 子どもは、初めて測った自分の脈が時計の秒針のカウントに近いことに、興奮を覚える。 なんで、秒針と脈の速さは似ているんだろう? それは、心拍数を基準に秒針の速度を
003. アカデミー賞なんかこわくない 後編 Edit & Text by Shigemitsu Araki あともう数時間で米アカデミー賞発表というタイミングで、この原稿を書いています。 さて、前回のコラムでオスカーの作品賞にノミネートされた女性監督の3作品『落下の解剖学』『バービー』『パスト ライブス/再会』に登場する男女の共通点として「仕事ができる女と哀れなるマッチョたち」という設定を挙げました。 女性監督ではありませんがヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるも
最近どうも寝つきが悪い。目的地の入り口がわからずにその周辺をぐるぐると周っている感覚。そもそも、睡眠というのは明日の自分を信じていないとできないから難しい。まだ会ったことも話したこともない人に「明日」という貴重な一日を任せるのが不安なのである。今日の自分が良すぎると「今日の自分を手放したくない」と思い、今日の自分が終わっていると「明日の自分も終わっているのでは」と思う。少しでもいいから「明日の自分」の面接をできる時間があればいいのに、と思う。それによって余計に眠れなくなること
006. 有坂塁 Thema 映画をDIGる 『ウディ・オン・アレン: 全自作を語る』 スティーグ・ビョークマン 大森さわこ(訳) (キネマ旬報社) 『STUDIO VOICE VOL.252 -特集:CUT UP CINEMA! 90年代東京の映画環境はどうなっているのか』 (INFASパブリケーションズ) 『80sグラフィティ』 長谷川町蔵、山崎まどか ほか (ブルース・インターアクションズ) 昔、僕はレンタルビデオ屋で働きながら、映画館でも映画を観て、映画の
今回は「脚色」ということをテーマに書いてみます。いつかはこの連載に脚色をテーマにした原稿を書こうと思っていましたが、このタイミングにしたのは『セクシー田中さん』の作者である芦原妃名子さんが亡くなられたことが影響しています。痛ましく、最悪の事態となってしまったこの出来事については自分なりに思うところがありますし、そのことに関してもいつか書いてみたい気持ちはあるのですが、今回はあくまでも「脚色」ということに限って書こうと思います。今回の出来事によって、脚色という作業が世間からはほ
マドレーヌは貝の形。フィナンシェは、金塊の形。 マドレーヌを見るたび、渚の音が聞こえる。 フィナンシェを見るたび、黄金の光が眩しい。 マドレーヌは、午後三時の右手のお供。 フィナンシェは、ウォール街の株価アナリストの左手のお供。 プルーストの『失われた時を求めて』の主人公が紅茶と一緒に食べたのはマドレーヌ。 それをきっかけに田舎町コンブレーの全景が、遠い島国ジャポンの水中花のようにティーカップの中から広がった。 フィナンシェとは、フランス語。英語なら、ファイナンス。
ソウル入門特集[70年代編]の第4弾は、「シンガー・ソングライター編」です。70年代に入り、カーティス・メイフィールド、ダニー・ハサウェイ、ビル・ウィザーズほか、自ら曲を書き歌い、プロデュースやアレンジもこなすアーティストがソウル・ミュージックの新たな時代を築きました。彼らの音楽はブラック・ミュージックだけでなく、その後のポピュラー・ミュージック全般に大きな影響を与えたといえるでしょう。本特集では代表的なアーティストの作品など、100枚以上のアルバムを紹介します。 ★ 70
およそ半世紀もの間、社会に潜伏して市井の人として生涯を終えたテロリストは、ジェームス・ブラウンが大好きで、ライブがあればかけ声をかけ、踊っていたらしい。てっきり革命の妄執にとらわれたまま、孤独で無為な時間を過ごしたのだとばかり思っていたが、友達に囲まれて笑顔で過ごした日々があったらしいと知って、不謹慎だがすこしほっとした。 七年ほど前にわたしがよくライブに通っていたバンドにかつていたメンバーも、ジェームス・ブラウンが好きらしかった。彼は映画館でジェームス・ブラウンの伝記映画
昔の耳かきの先には、梵天というものが付いていた。 子どもの頃は漢字変換できず、「ぼんてん」と音認識のみだった。 見ていると、父も母も、耳かきの際にそのぼんてんを使わない。 だからわたしは、それをタンポポの綿毛を模した飾りなのだと思い込んでいた。 中学生になって「ぼんくら」という言葉を知ると、音の似た「ぼんてん」はぼんくらの仲間、お気楽な怠け者というイメージになった。 そしてわたしは、耳かきの先に付いている「彼」を、ナマケモノの化身のように軽視した。 見ても見ないふりをし、無
「京都の個性的な書店主」として紹介されることの多い、元・ガケ書房店主、現・ホホホ座座長、山下賢二さんの新著『君はそれを認めたくないんだろう』がトゥーヴァージンズより出版されました。編集担当の綾女が本について少しご紹介いたします。 本書奥付の出版日付は「2024年2月13日」。この日は、20年前に山下さんが京都の左京区に「ガケ書房」を開いた日であり、9年前にそのお店を閉じた日(「そしてホホホ座へ」=ちくま文庫版『ガケ書房の頃 完全版』の副題を借りるなら)でもあります。つまり、
本と仕事と店主についての 8問8答 1 オープンから 5 ヶ月、率直な感想は? あっという間でした。想像以上にたくさんのお客様が来てくださって驚いています。ビールが飲める本屋なので、夜間営業や大みそかの年越し営業などもチャレンジしました。今は試行錯誤できる日々が純粋に楽しいです。 2 仕事の必需品は? Instagram。営業時間のお知らせや新入荷本の紹介、イベント案内など、情報発信のツールとしてSNSには日々お世話になっています。ぜひフォローお願いします笑(@riv
002. アカデミー賞なんかこわくない 前編 Edit & Text by Shigemitsu Araki いきなりなんですが、今回のオスカー(アカデミー賞の別名)で個人的に最も注目しているのはフランス映画『落下の解剖学』に主演したドイツ人女優ザンドラ・ヒュラーです。 『落下の解剖学』は、前哨戦としては第 76 回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞、第81回ゴールデングローブ賞では脚本賞と非英語作品賞を受賞。 オスカーでは作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、
以前に脚本学校で講師めいたことをしていたと書きましたが、生徒さんの提出してくるシナリオで多いパターンがありまして、「これ、どこかで見たことあるなあ……」というものです。既視感のある物語が悪いとは僕はまったく思いませんし、僕自身既視感のあるものばかり作っていると思います。ですが、生徒さんの提出してくる既視感のある脚本は、どうしても「どこかで見たことあるなあ」という感想で止まってしまうのもが多いです。少し細かく言いますと、「既視感のある物語を既視感のある場面やセリフ、登場人物で作
脳外が脳内と同一質量であることが、「普通の生活」なのだろう。 何を見ても驚かない。すでにお馴染みの光景だから。 その驚かなさが、安心、平和。 もちろん、日々脳外に微量のニューはある。 しかしそれは、取り込まれるべき脳の餌。 旅行に行くと、外は初めましてのニューしかない。 五感の情報量が多すぎて、脳は更なる情報流入を阻止すべく、シャットダウン(早めの就寝)。 遠くに見える厳島神社の全景を目から脳内に入れると、その圧縮情報は還元され、中で元の大きさに戻る。 するともう、目
株式会社トゥーヴァージンズ(東京都千代田区)が運営するWebコミックメディア「路草」(毎週水曜日17時更新)は、創刊2周年を記念して、3つのスペシャル企画を実施いたします。 ■3日間限定で全話無料公開を実施!株式会社トゥーヴァージンズが運営するWebコミックメディア「路草」は、「寄り道からはじまる、新しい出合い」をテーマに、小規模ながら一歩一歩、堅実に歩みを続けてきました。読者の皆さまに支えられ、お陰様で2周年を迎えることができました。 ささやかではありますが日頃の感謝を込