本屋、はじめまして #4 本と喫茶 サッフォー ー後編
本と仕事と店主についての
8問8答
1 オープンから 約半年、率直な感想は?
編集、仕込み、発注&仕入、接客、イベント開催、事務処理……とにかく時間が足りません!
2 仕事の必需品は?
ノートパソコンとデヴィッド・ボウイのマグカップ
3 最近気になったニュースは?
旧優生保護法で強制不妊化の被害にあった名古屋の夫婦が国に損害賠償を求めた裁判で、名古屋地裁が原告の訴えを認めたこと。強制不妊化の被害者は高齢であり、優生保護法問題は一刻も早く政治的早期・全面解決するべきです。
4 今読んでいる本は?
最近の社会運動において、1970年代のリンチに発展した新左翼を思わせる出来事があったため読み直しています。過去の運動の背景や実情を知ることは、これからの社会運動を盤石にするために絶対必要だと思います。
5 読書をするシチュエーションは?
編集中に必要な調べ物をしていたはずが、(時間がないのに)おもしろくてそのまま読み耽ってしまうことが多いです。
6 これまでの人生で記憶に残る1冊は?
『第二の性』
ボーヴォワールの〈人は女に生まれるのではない、女になるのだ〉という言葉に出会っていなかったら、今のわたしもサッフォーも存在していなかったかもしれません。長いこと新潮社で品切れでしたが、河出書房新社から昨年文庫化されてよかったです。
7 山田さんが考える「本の魅力」とは?
生き延びるための知恵や手がかりとなるところ。
8 本屋さんとしてこれからやってみたいことは?
昨年立ち上げた、お客さん主体のおしゃべり会で、手話や音声読み上げソフトなどを使った会を実現させたいです。
店主のおすすめ(本に限らず)
1 RESPECT 男の子が知っておきたいセックスのすべて
インティ・シャベス・ペレス 著/みっつん 訳/重見大介 医療監修
(現代書館)
スウェーデンの性教育者が10代の男の子向けに書いたものですが、包括的性教育が進まない日本ではむしろ大人に読んでほしいと思いながら編集した本です。からだや妊娠についてだけでなく、性的指向、性自認、プレジャー、同性間のセックスなど、学校で教えてくれない内容がたっぷりつまっています。2023年に性犯罪にかんする刑法が大きく改正したにもかかわらず、芸能界の性加害報道などで被害者を責める二次加害が後を絶ちません。「性的同意」とはなんなのかを学ぶ1冊として、この本は最適だと思います。来店してくれた6年生が自分でこの本を選んでレジに持ってきてくれた時は、本当にうれしかったです。
2 莫連たちの読書会〜過去のフェミニストを学ぶ〜
莫連会
過去の日本のフェミニストをモチーフにしてテキスタイルをつくるプロジェクトを立ち上げたグループが、その成果をまとめたzineです。現代のフェミニストにも影響を与えている山川菊栄や金子文子のほか、島成園(画家)や保井コノ(科学者)など、10名の女性を版画とテキストで紹介しているのですが、メンバーが各人物にひとこと推しポイントを吹き出しで添えているところがおもしろいです。男性中心だった歴史の影に隠れてしまった女性たちに光をあてる作業をもっと知ってほしいですし、このzineを参考資料にして、サッフォーでエディタソンを開催してみたいです。
3 障害のある女性の困難〜複合差別実態調査とその後10年の活動から
DPI女性障害者ネットワーク
〈生理があることを、親にめんどくさがられた〉〈障害女児のトイレ介助を男性教員がやっていた〉〈交通事故の賠償は、(…)男女の賃金から算出されるので男女差が大きい。顔の傷の補償額は女性の方が多い。見かけが大事なのか〉。障害のある女性たちが表現できなかった声を掬い上げ、2012年に発行された『障害のある女性の生活の困難』。この報告書が、その後10年の活動と今後の提言とともに再録され、昨年1冊にまとめられました。可視化されにくい障害のある女性の実態を知るとともに、掲載されている声は氷山の一角であることを常に覚えておきたいです。
※2・3は一般書籍ではありませんが、サッフォーで取り扱っています。
📖ぜひ感想をお寄せください。お待ちしております!
後記、はじめまして
入口に飾られたフリーダ・ガーロのファブリックにときめいて、思わず一枚目に撮影。この日はZINEを制作した日韓クィアカップルのハンガン・ヴィーガンのお二人も来店していました。yonieさん手書きのPOPも並びます。
作り手・売り手・読者の立場を越えて繋がって営まれ、誰もが安心できるシェルターのようなお店だと感じました。
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