大学生活での初恋

 今日で学生生活も終わるので、最後にあたしの一生忘れられない恋について綴っておこうと思います。

 手短に話すとあたしは2年間、大学のゼミ教授に本気の恋をしていました。

 始まりは大学2年の後期。その先生はとある講義の担当教授でした。髪型をかっちりと黒髪ネオ七三分けにし、眼鏡をかけてシャープな一重。きちんと管理されたスリーピーススーツ姿が細身の身体にピッタリと合っていました。第一印象は「あ、この人は他の先生とはどこか違う」でした。今まで出会った大学の先生は、どこかあたし達生徒を下に見るような発言だったり、ヒステリックな先生ばかりで正直この人もきっとそんな1人でなんだろうと思っていました。しかし、この先生だけは、第一印象から他の先生とはどこか違っていました。実際、講義の内容も面白いと同時に分かりやすく、初めてレジュメの周りやノートに授業の内容をぎっしりと書き込むという経験をこの授業でしました。

好きだと気づいたのは、それからすぐでした。講義中ではない日も「これ先生好きそうだな」とか、「これ先生に今度聞いてみよう」とか、先生のことを思う日が多くなり、いつしか先生のことが好きになりました。そして、先生が担当しているゼミが、偶然にもあたしが研究したいと思っていたことと一致しており、あたしはすぐにそのゼミに応募しました。

 3年生になってからは、毎週のゼミが来る日が楽しみで楽しみで仕方がなかった。勿論、毎週休まずに参加し、先生から出される課題やゼミ生とする討論も積極的にしました。内容も、あたしが興味があることばかりだったので、それもあってすごく楽しかったなぁ。

 事件が起きたのは、4年生の後期のゼミの初回。あたしはいつもの席に座り、先生が来るのを待っていました。

 そして、見ちゃいけないものを見てしまった。

 先生の左手の薬指の指輪。

 最初は見間違いかと思いました。何度も確認して、その度に現実を叩きつけられ。そして何も考えられなくなりました。しかし、ここでいきなり泣き出す訳にはいかなかったので、その日はいつものあたしを必死に取り繕いました。

 そして、その日のゼミが終わり帰りの電車の中で、あたしはこれからこの恋の結末をどうするか考えました。当たり前ですが、先生は結婚したのでこの恋は諦めなければいけません。でも、この恋に2年も費やしてしまった。そう簡単に決断は出来ません。

「1週間だけ自分に時間をあげよう。そして、沢山考えて決断を下そう」

 それからの1週間は地獄でした。思い出したくなくても、先生のあの指輪が脳内でチラつき、呼吸が苦しくなりました。部屋で1人になると何もしていないのに泣き出してしまうし、どんな曲を聴いても号泣してしまう、こんな経験は初めてでした。そんなあたしを見た周りの人からは、「大丈夫?」と心配される始末。我ながら情けなくて乾いた笑いしか出ませんでした。

 そして運命の1週間後。あたしは意を決して、本人に真実を尋ねました。

「先生結婚したんですか?」

「したよ」

 あっさりとその真実は本人の口から告げられました。予想外にも、その時のあたしの心境は悲しみよりも、「おめでとう」の気持ちの方が強かったです。

そして、あたしは先生に「おめでとうございます」と、心から言えました。「ありがとう」と微笑みながら返してくれた先生の顔は今でも忘れられません。

ここであたしの初恋は終わりました。京都の縁結びの神社を何件も1人で巡って、「先生と付き合えますように」と必死に神頼みしました。結果的に叶わなかったけれど、それも今となってはいい思い出です。先生に釣り合う女性になろうと、メイクやファッションや仕草や言葉遣いや趣味まで努力した結果、今では周りから「品があるね」と言われるようになったので、先生には色んな意味で感謝しています。

 そして、失恋してから数ヵ月後に、あたしに人生初の彼氏が出来ました! ずっと思い描いていた、見た目も中身も理想の彼氏です。彼氏とは、付き合う前に何度か電話をした時、この失恋の話を全てしました。その時に彼が「素敵な経験をしたんだね。きっとこれから貴女の人生に活かされていくと思うよ」と受け止めてくれ、ホッと安心したことを今でも覚えています。

 失恋の先で出会った新たな出会いのおかげで、あたしは今すごく幸せです。キッパリとこの恋と別れを告げたおかげで、いまの彼氏とめぐり逢えたんだと思います。

 学生生活最後の日に、この話を備忘録として残します。素敵な経験を与えてくれてありがとう、先生。



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