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「すてきなノスタルジー」はいかが?

ノスタルジー(郷愁)のイメージ

みなさん、「ノスタルジー」と聞いた時にどのようなイメージを抱きますか?過去に縋っていて現在を見ていない、限られた人だけが分かる排他的もの、といった否定的なイメージを抱いている人も少なからずいると思います。私もどちらかといえばネガティブに捉えていました。
しかし、最近とても素敵なノスタルジーに出会いました。それは嫌なものでは決してなくて、むしろ新参者の私も包んでくれる、大きなものでした。今回はそのお話をしたいと思います。



the chef cooks me presents "PPP '23"

先日、the chef cooks me(以下、「シェフ」) の"PPP '23"というライブに行きました。2003年から活動しているベテランバンドで、下村亮介さんという方が中心となりサポートメンバーを迎えて音楽を作っています。(現在はオリジナルメンバーのニーチェさんが戻ってきています。)私はこのバンドにたった2ヶ月ほど前に出会ったのでまだまだ聴き始め。新参者でした。

このライブ実は少し特殊で、写真家の山川哲矢さんの写真展"TCCM by Tetsuya Yamakawa"と同時開催され、シェフを14年間撮り続けた山川さんが考案したセットリストでライブをする、というものでした。
最近知ったアーティストの初ライブということでワクワクしていたのですが、ライブ数日前に「ストリーミングでは聴けないレア曲セット」であることをシェフのインスタグラムで知りました。サブスクで新しめのアルバムばかりを聴いていた私は正直、「私これ行っても大丈夫?知らない曲ばかりで浮かないかな。」と少し心配になりました。

そして、当日。開場間際に行くと、すでに往年のファンの方達が集まり「この前のライブは・・・」「レア曲やってくれるの楽しみ・・・」と言っているのを聞き、私の心細さは急上昇。さらには、Zeppで「わあ〜〜狭い〜〜」とか思っていた当人が300人規模のライブハウスに初めて行く、ということも重なり、とても緊張していました。

「こりゃあ、ミュージシャンと長年のファンが昔を懐かしむ(=ノスタルジーに浸る)感じのライブかもしれないぞ。私、場違いかも、、。」

バーカウンターでもらったレモンソーダのグラスを握りしめて、ドキドキしていました。(ライブで蓋閉まらない系のドリンクをもらったのも初めてでした。こぼさないかな!?)

外に開かれた歴史

ついに、開演。私の知っているポップで爽やか、スタイリッシュなシェフとは印象が違いました。なんとパンク!清々しいほどのロック!同一のグループでこんなにも色の異なる音楽を鳴らせることに驚きました。

そして、私がびっくりしていたのは、少し心配していた「閉鎖的なノスタルジー空間」は微塵も感じられなかったことです。むしろそれは「外に開かれた歴史」でした。
私の倍以上の年月を生きている人たちが、シェフと過ごした青春を思い出して全力でライブを楽しんでいる姿。「過去曲をやるにはオーバースペックだよ」だの「あの頃はよく分かんない音程歌ってた」だの言いながらも、昔の楽曲たちを愛おしそうに演奏して、全力で音楽を鳴らして楽しむシェフの姿。その全てが確かにノスタルジーでありながら、新参者の私にとっても心地良いものだったのです。

そこにあったのは、「音楽って楽しいよね!」「シェフの音楽が好き!」と思い、狭いライブハウスに集まり、泣いて笑って喜んでいる大人たちの姿でした。そんな素敵な大人になれる世界線が、そんな大人が集まる素敵な場所がこの世には残っていたんだと嬉しくなったのです。

大人(社会人)になると忙しい、楽しいことが減る、自分の時間が取れなくなる。そんなイメージを抱いていた私は、大人になることを怖がっていました。でも、今回のライブに行ってその不安が少し軽くなって理想の大人像が見えてきました。それは

大好きなものを大好きだと言い合える仲間を持ち、それを全力で楽しむことができる大人。そして、できることならば、そんな空間を作れる大人。

です。

終演後、「モッシュするかと思った〜!」「それは若い頃だから!」とファンの方が話しているのも、とても心が温かくなりました。その光景はもはや私を心細くさせるものではなくなっていました。なぜなら、このライブを通して私はシェフの歴史をそこに見たから。

そして、この「外に開かれた歴史」を実現したのは、シェフの下村さんが持つ魅力なのかもしれないと思いました。(責務を全うしているのは前提として)「大人だから完璧に」「大人げないのはみっともない」という言説をすっ飛ばして、ありのままで取り繕わずそこにいるから、多くの人に愛され続け、常に世界を魅了しているのだと思います。「とにかく感謝を忘れないこと」「人のいいところを見つけることしかできない」とおっしゃっていたけれど、それをできる人を私は尊敬しています。
憧れの大人が1人増えました。

さらに、シェフとの出会いを作ってくださり、このレア曲セットリストを実現してくださった山川さん。山川さんがいなければ、この素敵なノスタルジーにも巡り会えなかったし、大人になることをずっと怖がっていたかもしれません。

好きなアーティストのライブ以上の意味を持ったその日は、私にとって忘れられない日になりました。このライブを作ってくれた全ての人に感謝します。



こんな感じで、初めての本記事はthe chef cooks meというバンドのライブの感想&理想の大人像を見つけたよ、というものでした。「すてきなノスタルジー」味わっていただけましたか?(上手く言葉にできたか不安ですが。)楽曲そのものの感想(この曲のここがよかった!かっこよかった!など)はもっと詳しい方が魅力的に書いてくれるかなと思ったので、ライブというイベント自体(場)がどんな意味を持ったのかということにフォーカスして書いてみました。

悲しいかな、the chef cooks meは来年の3月で活動終了してしまいます。知らなかったという方もぜひ聴いてみて、ラストライブにも足を運んでみてください。素晴らしい思い出になるはずです。


それではまた会う日まで。急にお天気がご機嫌斜めになって極寒なので、風邪を引かぬよう。





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