【日刊辛愛媛】松山私学戦国時代vs公立
◎甲子園球場誕生から100年周年の夏に、愛媛から新しい私学が名乗りを上げた。
その名は「聖カタリナ学園」。女子高時代を知る昭和世代からは、隔世の感があると聞く。同様に済美高校も昭和時代までは女子高であり、共学化まもない野球部の全国制覇は高校野球ファンに驚きをもって迎えられた。
聖カタリナの再起
聖カタリナは近年、部員の集団暴行事件で高野連から厳重注意を受け、対外試合も禁止された。教育の一環を標ぼうする高校野球にあって(それ以外も勿論)、いじめは絶対にあってはならないが、多くの高校球児が加害者と被害者になったとされる。いじめ撲滅へ指導者と選手の揺るぎない決意が問われる。
その意味で不祥事後に就任した浮田(うきた)新監督は、松山商業から創価大学を経てプリンスホテルでプレーし、民放の野球解説者として野球と関わってきた監督で、0からのスタートに厳しい言葉で再起を誓い、創部9年目に県大会で優勝を果たした指導力は注目に値する。
同監督が就任当日、選手と向き合ったのはグラウンドではなく教室だった。チームが置かれた厳しい現実をパネルを交えてありのまま共有し、教壇から球児を見回し「このピンチを超えたら、必ず甲子園に行ける。僕はそう思っている。だが野球人となる前に世間の人から愛される高校生にならなくてはいけない。(中略)人は変われるんです」と、これが同監督から球児を前に語った野球部改革と再起への宣言だった(愛媛新聞より引用)。
粘り勝ちで掴んだ夏の初きっぷ
そして迎えた今夏の県予選。ノーシードから6試合を戦い、第2シード今治西との2回戦や西条との決勝は1点差で競り勝ち、粘り強さと勝負強さを活かし同校は頂点に立ち、初の夏のきっぷを手にした。ちなみに同校は県内で珍しいカタカナ校名で、ユニフォームにはCATALINAの文字が入り、鮮やかな赤いアンダーシャツとストッキングが目立ち、超保守的な愛媛らしくない良い意味で異彩を放っている(野球漫画の名作「ドカベン」に登場するクリーンハイスクールのイメージ)。
松山地区私立の台頭vs公立
同大会を全体的に振り返ると公立と私立の実力は拮抗しているが、ある特徴が顕著だった。
公立で前評判通りの活躍が光ったのは西条、そして夏将軍復活の期待がかかったマッショーこと松山商業。ダークホース的に健闘が光った松山中央。
一方で、私立は優勝の聖カタリナをはじめ、済美、新田の健闘や、松山聖陵と松山学院(旧松山城南)も好ゲームを展開した。
こう見ると近年、松山の私立の台頭が著しくまさに時代は私立戦国時代の中にある(同市外にも帝京第五という強豪あり)。選手獲得や練習環境が充実していて、県大会出場校減少に伴い、どこもが甲子園を狙えるとの思惑から、いわゆる野球留学生も一定数いるだろう。それ自体は筆者は否定しないし、愛媛高校野球レベルの底上げが図れれば効果のほうが大きいはずだ。
もう一方の公立も、松山市内の松山商業、松山北、松山中央。愛媛県東部の東予の今治西、西条、川之江。同南部の南予の宇和島東にも対抗軸としての切磋琢磨を期待している。
昭和の松商、平成の済美、令和の◯◯になれるか?
もし一点懸念があるとすれば、有力選手が各校に分散して戦力が全国水準から後退し、甲子園での勝利が遠のきはしないかという点。野球王国を誇った愛媛県は近年、優勝はおろか1勝すら危うい。そんな心配を聖カタリナが払拭して、昭和・平成初期の松商、平成中期からの済美といった具合に、令和に同校が強豪校の仲間入りを果たせるか、期待が高まっている。
(追記)聖カタリナの浮田監督と同じく、松山商業から創価大という経歴のある指導者が、東京の某私立高(聖カタリナとは宗派は違うが同じく宗教母体)で新しく監督就任。わずか半年で超激戦区の都大会で準優勝に導き、今夏の甲子園予選では準決勝で惜敗した。
テレビ中継で見た印象は、打撃よりも守りの野球で僅差を勝ち上がって行くタイプ。指導者にも、例えば鉄壁の守備といったマッショー(松商)イズムが継承されている証しの一つかもしれない。
(以下随時追記)
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