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あいみょん新曲「桜が降る夜は」に見る桜ソング考

なんだか春めいてきた今日このごろ。春という言葉に瞬く間にテンションが上がる人、むしろこの季節特有の浮かれた雰囲気に気分の下がる人、その人の特性次第で春に対する心持ちは変わるだろうが、ここでは前向きな意味で春を感じる桜ソングについて考えてみたいと思う。

文/小島ミミ

2021年桜ソングのトップバッターを切った感のある、あいみょん初の桜ソング「桜が降る夜は」。本編に先駆けて公開されたティザーはふわふわのハットをかぶったあいみょんに、桜の花びらが降り注ぐ映像。

どちらかというとボーイッシュでクールなイメージのコンセプトが多いあいみょん作品のなかでは、ふんわりとラブリーな印象。こちらの楽曲は現在Abema TVでオンエア中の人気番組「恋とオオカミには騙されない」の主題歌ということもあり、かなり直球のキラキラとしたラブソング。「裸の心」で「この恋が実りますように」「今、私 恋をしている」と切ない心を朗々と歌い上げていたあいみょんが、「桜が降る夜は」では「貴方に会いたい、と思います」「この体ごと貴方に恋してる」と柔らかくポップに歌う。同じラブソングでも、発声方法や、声の表現で、まったく違う魅せ方をしているのはさすが、の一言である。「恋とオオカミには騙されない」はオンエアが始まったばかりなので、出演者の恋模様が進んでいくごとに、この楽曲の響き方もより切ないものに、もしくは恋をする2人を祝福する歌になっていくことだろう。今後、音楽番組などで披露されるであろう歌唱パフォーマンスも楽しみである。今年の春は、町中の至るところで桜が降り注ぐのではないだろうか。

さて、日本人は桜ソングが好きだという定説がある。まあ確固たるソースはないのだが、この時期になると、アーティストたちが桜をテーマにした楽曲をリリースする傾向にある。パッと浮かぶ代表的なものだけでも、楽器のような歌声に度肝を抜かれた宇多田ヒカル「SAKURAドロップス」、MVの鈴木えみがえげつないほどの美しさを放っていたケツメイシ「さくら」、近年演技方面でも才能を発揮している森山直太朗「さくら(独唱)」などなど、旅立ちの季節にふさわしい明るさと、郷愁を誘うようなセンチメンタルさも内包している楽曲が並ぶ。

ここでは、筆者の脳裏に焼きついた印象的な桜ソングを紹介していこうと思う。まずは中島美嘉の「桜色舞うころ」(2005年)。中島美嘉の14枚目シングルであり、ノンタイアップシングルであるとのこと。なんとなくアシンメトリーなウルフショートでふわふわした衣装を着て歌う中島美嘉の姿が目に浮かぶのだが、街中やテレビで良く聴いていたイメージがあるので、まさかのノンタイアップという事実に打ち震えてしまう。彼女特有の華奢な体から振り絞るように歌う、ちょっと演歌ちっくなパフォーマンスで「桜色舞うころ 私はひとり」という歌い出しから始まるこの楽曲。まさにアラサーアラフォーには思い出深い桜ソングではないだろうか。

松たか子の「桜の雨、いつか」(2000年)は「明日、春が来たら」「サクラ・フワリ」に肩を並べる彼女の代表的な春曲。松たか子がヒロインを務めたドラマ「お見合い結婚」の主題歌であり、女優としてのイメージの強い彼女の、艶とハリのある歌声を楽しむことができる楽曲だ。余談だが、2021年4月期のドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」で彼女が主演を務めることが先頃発表された。しかも脚本は坂元裕二。三人の元夫の中には、「カルテット」でも共演した松田龍平も名前を連ねているため、「カルテット」の主題歌「おとなの掟」で聴かせてくれた美声よ再び、と甘い期待を持つことをやめられない。余談ついでに、「明日、春が来たら」は作詞を坂元裕二が手がけているというエモすぎる事実もここに書き記しておこう。

他にもスピッツの「チェリー」(1996年)やYUIの「CHE.R.RY」(2007年)、aiko「桜の時」(2000年)なども我々世代の心をこちょこちょくすぐってくる桜ソングであるが、ここは独断と偏見でWhat’s Love?の「恋の味」(2002年)を強く推したい。メジャー感は薄いかもしれないが、スカのビートに乗せて浮かれた春の訪れを歌ったこの曲、青春時代にうんざりするほど聴いた人もいるのでは。というわけでノスタルジーに浸りながら、「恋の味」の歌詞をじっくり確認したところ「風が匂いのせて 梅が散り始める」とあり、トリを飾ったのは梅ソングであったというまさかの結果で本稿の〆としたい。

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