構造デザインの講義【トピック1:構造とデザイン】第1講:良い建築とは
東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です
トピック1:「構造デザイン」「構造とデザイン」
第1講:良い建築とは(ココ)
第2講:建物の表現と構造
第3講:身の回りのモノや自然から学ぶ
第4講:それでも、建物は壊れます
第5講:建築と構造のデザイン
建物は様々な用途や使われ方のものがあり、多様な形や色のものがあります。
また、当たり前すぎて忘れがちになりますが、建物は安全に建っており、安心して建物の中で生活することができます。
しかし、安全な建物とは、一体どのようなものでしょうか。
以下の建物は、いずれも大空間構造の建物です。
それぞれの建物の目的や用途は異なりますが、特徴的なデザインであり、使用されている材料や構造も異なります。
言い方を変えると、建物の表現に合わせて、材料や構造が採用されています。
あるいは、材料や構造が、建物の表現や表情を支配することがある、とも言えます。
どんな建物も、支えるための構造があり、空間に応じて適切な構造を用いることが大切です。
それでは、お聞きします。
「良い建物とは?」
答えは、無限に存在すると考えられます。
例えば、古来より、用・強・美をバランスよく備えた建物が、良い建築である、とされています。(ウィトルウィウス、建築十書、紀元前後)
建築を学ぶ=デザインを学ぶ、というスタンスは、正しいと考えられます。
建築に携わる中で、そのような感覚は持ち続けるべきものの一つです。
また、建築分野のデザインには、さまざまなものがあります。
設計やデザインを考えると同時に、安全な建物を、正しく、確実に作ることも考えなくてはなりません。
建物に対して、ファサードと空間の表現やデザインに目が行きがちです。
それは、建物を支える構造は壁や天井、床などに隠れて見えない場合もありますが、構造が建物のフォルムを決定する事例や、表しとしてデザインされている建物もあります。
建物を作るプロセスの中で、構造をデザインし、設計するタイミングは様々です。
はじめに、建物の設計やデザインが与えられることもあれば、設計の初期の段階から具体的な構造のデザインや方式が議論され、建物の形状やデザインとして表現されることもあります。
レガシー(遺産)としての建物、という言葉があります。
建物が後世に継承され、永く使われ続けることがあります。
そのような建物の、何が遺るのか、何を遺すべきなのか。
我々は、そこから何を学ぶのか、学ぶべきなのか。
オリンピックやワールドカップ、国際博覧会などのイベントでは、
・その時代の、そのホスト国の、
・最新・最先端の建築技術が導入され、
・国を挙げて、
・国の威信をかけて、
施設の準備が進められます。
建築関係者にとって、まさに一世一代のイベントです。
それは、伊勢神宮などの式年遷宮のように、技術や文化の継承、と通じるものを感じます。
2020東京オリンピックでは、メイン会場・新国立競技場は、世界で最も注目される建物でした。
世界的な建築家による当初の案は、斬新、大胆、先鋭的であり、日本だけでなく世界を代表する建築として、大いに期待されました。
しかし、工期やコスト、建設技術など、多くの課題や指摘により、やむなく白紙撤回となりました。
パリの観光名所・エッフェル塔は、建設当時、建築家や芸術家から、酷評を受けて、建設反対などの抵抗を受けました。
ポンピドゥーセンターは、パリの景観にそぐわないという評価がありました。
京都駅は、古都の景観と調和しないなどの反対の声がありました。
シドニー・オペラハウスは、建設当初、様々な意見がありました。
しかし、これらの建築物は、今日では世界的に高い評価を受け、地元だけでなく、世界中の多くの人々に支持され、世界遺産として登録されています。
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