見出し画像

東京理科大学の講義「建築構造デザイン」の教材:はじめに

ご利用にあたって

本教材は、東京理科大学・工学部建築学科、学部授業「建築構造デザイン」の講義ノートにそって、作成しています。

建築を専門とする方だけでなく、建物やデザインに興味をお持ちの方にも、構造とデザインという観点から、建物を見ていただき、新しい発見や視点、気づきを得ていただければと、願っております。
そのため、建築学の初学者向け、としてだけでなく、どなたにでもご利用いただけます。


本教材で登場する建物は、私が実際に日本・世界の各地を訪れ、建物を見学し、調査した内容です。
もしかしたら、旅行先で観光した建物や、普段使っている建物が登場するかもしれません。
ぜひ、身近に感じていただけると嬉しいです。


本教材の構成と狙い

本教材は、建築の構造とデザインを学ぶための教材ですが、建築の構造・技術の歴史から、学びが始まります。

義務教育では、世界史、日本史など、歴史を学びます。
建築学のカリキュラムでも、建築の歴史を学びます。
一般的に、世界建築史、日本建築史、そして近代建築史です。
これらの教科は、極めて重要です。

建築の構造の歴史を学ぶことは、必ずしも多くありません。
近代・現代の建築には、歴史があります。そして、構造とデザインにも、歴史があります。
現在の技術やデザインは、歴史の上にあります。


本教材は、10トピックからなります。

前半は、古代から中世までの構造の技術やデザインの歴史を学びます。
古くは五大文明、建築の世界七不思議、そしてゴシック建築など、観光地としても有名な建物に触れます。
タイムトリップしながら、海外旅行の気分で、お楽しみいただきながら、読んでみてください。

後半は、近代・現代の名建築の構造の技術やデザインを学びます。
テレビやSNSで見たことがある、実際に行ったことがある、そういった建物が登場すると思います。
次の旅行先で出会ったら、ぜひ、本教材を片手に、違った視点で建物を見て、感じていただけると嬉しいです。

後半のトピックでは、優れた構造デザインの建物を取り上げて、私なりの解説をいれています。
建築学生の皆さんが、設計製図などで構造とデザインを考える際の資料となり、ヒントになれば、嬉しいです。


建築構造デザインの解説例(後半パートより抜粋)

それでは、後半のトピックで登場する建物の構造・デザインのページ(暫定版)より、本教材の一例を見ていただきます。


立体曲面空間を直線の張弦梁で演出

極限まで高められた透明性で、周囲の自然を景観として取り組む

最上川ふるさと総合公園センターハウス

山形県寒河江市の最上川ふるさと総合公園のセンターハウスは、公園の管理や展示室、休憩所などの施設です。
三日月形の平面形状で、全面ガラス張りとして透明性を高め、周囲の山並みや、建物前面の池と調和しています。
内部空間もシンプルであり、開放的な内部空間となっています。


天井の視線の抜けや採光などに配慮し、細身の鉄骨を用いた張弦梁により、軽量感と浮遊感を感じさせながら、構造的な安定も図られています。
張弦梁を含む各構面は、平面形状に合わせて放射状に配置されています。
屋根の傾斜に合わせているため、来館者の手の届く距離に構造架構が設けられています。

張弦梁は、傾斜しているため、曲げ、せん断、軸力が作用します。
張弦梁の両端は、下段側はピン、上段側は固定、あるいは半固定のディテールとなっています。
下段部は外部の景観の眺望のため、細身の円形鋼管で支持されており、柱への曲げモーメントの伝達を抑えるための工夫が見られます。

張弦梁のストラッド先端より、その他の張弦梁とワイヤネットで接続して立体的抵抗の協働効果への工夫がみられます。
三日月形の平面形状のため、桁行方向の両端に向かって平面が絞られ、それに合わせて張弦梁のスパンも収束します。
鉄骨接合部のディテールも特徴的です。

<<前の記事 | 次の記事 >>


研究室のSNS

鉄骨構造の教材(電子書籍)

東京理科大学・鉄骨構造の授業で使用している電子書籍です。
どなたでもご利用いただけます。 →説明のページ
(リンク先のページ中段のpdfアイコンをクリックしてください)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?