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構造デザインの講義【トピック1:構造とデザイン】第3講:身の回りのモノや自然から学ぶ

東京理科大学・工学部建築学科、講義「建築構造デザイン」の教材(一部)です



建築を考えるうえで、自然は最高の教材です

地球上のあらゆる生命は、環境に適応しながら進化を遂げてきました。
それは、生命を維持し、安全に動ける仕組みを備えるために、体などのつくりが最適化された結果です。
すなわち、身の回りの生命体の形から、建築のための、様々な構造を学ぶことができます。


樹木は、地に根を張り、幹を中心に枝が伸びます。
これは、環境に合わせた最適な形態であるとともに、生物的機能の合理化によるとされています。

樹木の構造をいかした東京ミッドタウンのガラスキャノピー

蜜蜂の巣・ハニカム(honey comb)は、六角形をしています。
これは、平面を隙間なく埋められる形状(1種類の多角形という条件のもとでは、三角形、四角形、六角形)であること、面積が最大となる正多角形であること、強度を確保できること、などの理由から、六角形の形状で最適化されています。
なお、隙間なく詰める操作を平面充填と呼び、これにより構造体として強度が増します。

ミツバチの巣は、六角形の網目上のユニットによる構造として、最小限の材料で、最大限の空間を得るうえで、究極の幾何学形状です。
ハニカム構造は、高強度でありながら、軽量化を両立させた構造体となります。
航空機の翼や人工衛星の壁体、そして建築物の壁やスラブの構造として、その原理は幅広く応用されています。

シャボン玉は、液体の表面積最小化による表面張力と、シャボン玉の内部の気圧による、力の釣り合いによって形が決定されます。
なお、石鹸を混ぜることで表面張力を調整(弱める)することで、成立しています。

ヨットの帆や鯉のぼりのように、風を受けて形が安定するものがあります。
このとき、膜に張力が作用しますが、膜など薄いシェルは、曲げやせん断の面外応力に対して抵抗できません。
面内応力による張力膜構造によって安定することができるのです。

膜の張力をいかしたグランルーフの大屋根

貝殻の薄い曲面板を利用した構造は、設計者の自由な発想とフリーハンドのスケッチの感覚を、シェル構造として魅力的な立体曲面構造となります。

蛇の目傘とのアナロジー、出雲ドーム
パラグライダーをイメージした赤湯駅

植物の葉は、適度な強度をもっています。
睡蓮の葉脈の放射と交差のイメージから着想を得て、繊細でシャープな鉄骨で骨組を構成し、クリスタルの輝きを持つ水晶宮(クリスタル・パレス)が誕生しました。

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