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turtle
2020年5月26日 19:52
「そ、それでは地域の見回り行ってきます。」 ADHDの吉川は、母親に教えられた通りの丁寧な挨拶をして外に出た。看護婦さんとペアで、地域の独り暮らしのお年寄りを訪問するのだ。「この季節は歩いていて気持ちがいいから、ちょっと回り道しない?」 看護婦の井上さん珍しい事を提案した。「そんなに気持ちいいかな?」 吉川は少し疑問を抱いたが素直に従う。実はこの道は井上の通勤ルートで、この先に日赤の募金
2020年5月26日 19:58
山田課長は淡々と仕事をこなす。定時出社、定時帰宅。管理職としてはこの上ない待遇である。彼は自分の処遇になんの不満もない。 妻と二人の夕食。妻は庭木についてぽつりぽつりと話す。山田はうんうんと頷く。特に多弁なわけではないが、話をしないわけでもない。よくある50代後半の夫婦だ。 2年前、前立腺がんのため摘出し夫婦の関係はないが、その遥か以前からそのようなことは無かったし、自分でもそんなものだろう
2020年5月26日 20:03
「相変わらず古藤さんは遅れているなあ。」 安部は貧乏ゆすりをしながら、盆踊りに使う広場前で皆の点呼をとっていた。「まあまあ、主任、古藤さんは準備時間開始には現れますよ。」 ADHD吉川は場の雰囲気に気を配る。 要領がよければいいってもんじゃねえ!再び叫びたくなる阿部であった。でもまあ、今週の勤務態度はまあまあであった。 今回の祭りの目標は「怪我なく、事故なく、そこそこ楽しく。」 ミ