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都庁安倍課~ワケアリビトの勤務格闘記

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~難病、発達障害、鬱、ガンサバイバー、みんな働きたい! ~ 東京都庁49階には、”都庁疾病課”、通称”都庁安倍課”が存在する。 安倍総理の鶴の一声、「少子化の進む日本で、病気を抱…
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#近未来SF小説

都庁安倍課~木曜日はわりと元気

「そ、それでは地域の見回り行ってきます。」
 ADHDの吉川は、母親に教えられた通りの丁寧な挨拶をして外に出た。看護婦さんとペアで、地域の独り暮らしのお年寄りを訪問するのだ。
「この季節は歩いていて気持ちがいいから、ちょっと回り道しない?」
 看護婦の井上さん珍しい事を提案した。
「そんなに気持ちいいかな?」
 吉川は少し疑問を抱いたが素直に従う。実はこの道は井上の通勤ルートで、この先に日赤の募金

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都庁安倍課~金曜日はHAPPY

 山田課長は淡々と仕事をこなす。定時出社、定時帰宅。管理職としてはこの上ない待遇である。彼は自分の処遇になんの不満もない。
 妻と二人の夕食。妻は庭木についてぽつりぽつりと話す。山田はうんうんと頷く。特に多弁なわけではないが、話をしないわけでもない。よくある50代後半の夫婦だ。
 2年前、前立腺がんのため摘出し夫婦の関係はないが、その遥か以前からそのようなことは無かったし、自分でもそんなものだろう

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都庁安倍課~土曜日はみんな一緒~

「相変わらず古藤さんは遅れているなあ。」
 安部は貧乏ゆすりをしながら、盆踊りに使う広場前で皆の点呼をとっていた。
「まあまあ、主任、古藤さんは準備時間開始には現れますよ。」
 ADHD吉川は場の雰囲気に気を配る。
 要領がよければいいってもんじゃねえ!再び叫びたくなる阿部であった。でもまあ、今週の勤務態度はまあまあであった。

 今回の祭りの目標は
「怪我なく、事故なく、そこそこ楽しく。」
 ミ

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