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【読書メモ】『KANO:1931海の向こうの甲子園』(著:魏徳聖/陳嘉蔚)

パリ五輪は4日(現地時間)、バドミントン男子ダブルス決勝が行われ、台湾の李洋・王斉麟組が中国ペアを2-1で下し、金メダルに輝いた。前回・東京大会に続く金メダルで2連覇を果たした。

出典:「パリ五輪/バドミントン男子ダブルス 台湾の李・王組が2大会連続で金」
(『フォーカス台湾』2024年8月4日)

パリ五輪も折り返しを過ぎ、各種目でのメダリストも増えています。ここ数日では、フェンシングの躍進(団体すべてでメダル)や体操の岡さんの三冠(団体・個人・種目別)が凄いなぁ、なんて思いながら、近隣諸国の中では台湾の活躍具合が気になっており、こちらのバドミントンでの五輪連覇も凄いよなぁ、なんて嬉しくなったりも。

とか思いながらも、この時期になるとそろそろ夏の高校野球も意識の片隅に出始めてきたりします。

高野連は、試合時間短縮で選手の負担を減らすため、試合の「7回制」移行を検討するワーキンググループを設置したと発表した。試合時間が短縮されれば、全日程での2部制実施につながる可能性はある。高野連の井本亘事務局長は「高校野球は大きな転換点にある」と話している。

出典:「夏の甲子園、暑さ対策待ったなし 朝夕2部制実施、7回制導入も検討」
(『産経新聞』2024年8月5日)

母校に野球部も無く高校野球にさほど思い入れがない身としては、「大阪ドーム(京セラ?)」での実施とかにしてあげなよ、7回制とか興を削ぐような小手先の誤魔化しなどせずに、、もしくは甲子園を冷房の効いたドーム化するとか、、位に思ってしまいますが、やはり今のままの甲子園ブランドは捨てがたいものなのでしょうか。

ただ、十年前と比べても日中の暑さが段違いですし、選手に限らず、観客のどなたかが熱中症で亡くなってしまうなんて事が起きてからでは遅いでしょうし、、いっそプロ野球シーズン後の晩秋以降とかにできないものなんでしょうか。

なんて感じながら思い出したのが『KANO:1931海の向こうの甲子園』との一冊。2014年に台湾で大ヒットした映画のコミカライズで、舞台は戦前、題材は甲子園、主人公は台湾代表。

弱小と蔑まれていた台湾のとある学校が、一人のコーチをきっかけに台湾の代表となり、甲子園に出場するまでの物語となります。史実をベースとして、八田與一さんネタも織り込みながらも、台湾に「野球」という文化が定着するきっかけとしての視点も興味深く。

舞台となる学校「嘉農(嘉義農林学校)」は、漢人(台湾人)、蕃人(高砂族)、日本人(内地人)という、3つの民族が混在していて、その中での日本人による他民族への差別の風景も描かれています。

物語の時代に先立つこと10数年、第一次世界大戦の後処理となった1919年の「パリ講和会議」にて、日本は世界で初めて「人種的差別撤廃提案」を訴えています(この時点では最終的に不採決になっています)。にもかかわらず、このような描写がされるとの事は、決して「人種差別撤廃」が日本国内でも広くオーサライズされていたわけではないのだろうなぁ、とも。

ちなみに「人種的差別撤廃提案」に賛成したのは日本、フランス、イタリア、ギリシャ、セルビア、クロアチア、チェコスロバキア、ポルトガル、中華民国、反対したのがアメリカ、イギリス、ブラジル、ポーランド、ルーマニアと、賛成票が反対票を数的に上回ったのにもかかわらず、アメリカのウィルソン議長の「全会一致でないと」との判断で不採決となっています、、閑話休題。

球(たま)は霊(たま)なり

出典:『KANO:1931海の向こうの甲子園』

それはさておき、そんな「差別的な」風潮に乗ることなく、ただ、その能力と強い想いを軸にチームを組み立てたのもまた日本人でした。「球(たま)は霊(たま)なり」、決して「あきらめない」、その気持ちを球児たちに叩き込んだのは、近藤兵太郎という一人の日本人。

その想いは数年かけて積み重ねられ「第17回全国中等学校優勝野球大会(1931年8月13日~8月21日)」に台湾代表として参加する形で結実していきます。そういった意味ではある種の過渡期でもあったのでしょうか。

さて、そんな日本の台湾代表として戦前の甲子園に参加した「嘉農(KANO)」の結末はどこに着地したのでしょうか、こちらは史実ベースで描かれています。

ちなみ映画は翌年くらいに日本で公開されていたようですが、私はアマプラかWOWOWで拝見した覚えが、、永瀬正敏さん、大沢たかおさん、坂井真紀さん、と豪華キャストですよね、またこの時期にどこかでやらないかな。

そういや、同時期にカナダで差別を受けていた日本人の野球チーム、それを題材にした『バンクーバー朝日』なんて物語も手に取った覚えが、、どんな話だったかなぁ。


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