見出し画像

【読書メモ】『永遠をさがしに』(著:原田マハ)

チェロって、まるでー。お母さん、みたいだ。

出典:『永遠をさがしに』

今の職場、月に何度か市民楽団の方が練習に来られます。私自身、音楽はすっかり門外漢で、、あまりに音痴過ぎて家内からは「人前では歌わない方が?」とも言われるくらいに素養もありませんが、それでも生演奏の妙なる調べは風情があり、そちらをBGMに仕事との何とも贅沢な時間をいただけるのを楽しみにしていたりも。

なんて、ちょうど本日にその楽団さんが練習に来られていたので、その演奏を拝聴しながら思い出したのが『永遠をさがしに』との一冊。

著者の原田マハさん、『楽園のカンヴァス』や『キネマの神様』、『旅屋おかえり』などジャンル的には本当に幅広く書かれていますが、、

今回の主人公は高校一年生の少女・和音、父は世界的な指揮者、数年前に居なくなった母は有名なチェリストという、音楽一家で生まれた背景をもっています。

和音の、母は自分を置き去りにしたのだという屈託と、家庭をかえりみない父に対する反発が膨れ上がった矢先に、、なんとも破壊的な「新しい母」が訪れます。

どこかお約束のような喧嘩を重ねながらも、徐々に心が解きほぐされていく様子が優しく描き出されています。そして、そんな優しい大人達が抱える、それぞれの「大人の事情」はまた、なんともせつなくて。

予定調和と言えばそうなのですが、一人の少女を取り巻く優しい物語、穏やかなクラシックの調べをBGMに解きほぐしてみるのもまた、優しさなのかも知れません。

音楽などの芸術は、人の心の豊かさのバロメータかなぁ、なんて。キュレーターでもある原田さんだからこその物語と感じました。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?