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【読書メモ】『八月の六日間』(著:北村薫)

富士山は山梨県側の「吉田口登山道」が7月1日に山開きし、9月10日までの登山シーズンが始まる。過度の混雑やマナー違反への対策として、山梨県は今シーズンから5合目にゲートを設置して時間帯や人数での制限に乗り出し、この登山規制に対応した通行予約システムの予約受け付けが今月20日から始まる。従来は山小屋の宿泊予約以外は事前の手続きがほぼ不要だった山梨県側の富士登山の在り方が大きく変わりそうだ。

出典:「大きく変わる富士登山 山梨県、20日からネットでの予約受け付け開始」
(『産経新聞』2024年5月18日)

富士山、5合目辺りまで(車で)行った覚えがあるかどうか、また登山自体も学生の頃に高尾山に初日の出を見にいったくらいで、、そういえば子供を登山目的で山に連れて行ったこともなかったような、我ながら不思議です。

なんて考えながら思い出したのが『八月の六日間』との一冊。手に取ったきっかけは、何かの雑誌での著者の北村さんと華恵さんの対談にて「年を経ていくごとに繰り返して読みたい」なんて話されていたのが印象的だったから、だったかな。

主人公はアラフォーの編集女子、副編集長からそろそろ長に。役を持たない若いころは男性上司を文字通りに泣かしたことも数知れず、基本的には不器用でただひたむきに仕事を積み重ねてきた、それが故にもうまくこなせずに、未だに独り身。

そんな強い主人公が日常から逃れるためにいくのが。その山登りの様子が5編からなる連作短編としてまとまっています。

徐々に責任のある立場になっていくことで、若いころのように自由に仕事ができなくなるジレンマ。それ以上に自分の思い通りになることが無い自然の中で、その自然の美しさや一期一会の奇跡に魅入られていく主人公。

その山歩きの際に必ず文庫本を持参するとの設定が、個人的には印象に残っています、素敵だなぁ、、と。主人公の職業柄、からは離れられないのでしょうが、ある意味そんな仕事道具を、非日常でどう昇華しているのか。

ずっと本と一緒だった。アメリカでも、日本に来ても、一人のときも、いろんな人に出会ったときも。

出典:『本を読むわたし:My Book Report』

こんな風に本への想いを綴っているのは華恵さん。そのエッセイ集『本を読むわたし』の中にて。これを狙っての(雑誌での)対談であったとすれば、私は見事にやられたことになります。

日常と非日常をつないでくれるのが「本」、ケでもハレでも関係なく自身の軸を思い出させてくれる、私にとっての本とはそんな存在なんだな、なんて風にも感じさせてくれた一冊でした。

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