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パラレルワールド

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小説や詩など!
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2022年10月の記事一覧

追憶

精神安定剤で永遠は手に入らない
永遠なんて別にいらなくて
一瞬の幸福の続きでいい
記憶の連なりと望んでいる未来のその先
夢に出てきた車窓の外
予見は当たるとは限らない平行世界
いつかわかりたい優しさの先
涙を流す理由のその奥
食べられてしまう希望と鳴り止まない轟音
それでも見つけたい
生きていく訳
幸せだと思うのに言葉なんていらなかった
だけどたくさん浴びてきた
流線形に落ちていく月から零される星

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星霜圏

ひとは肉体を失ったら骨になる。それから火に焼かれて煙に巻かれ、その灰は天に昇って星屑になり、宇宙の一つとして天空に撒かれる。魂は星屑として那由多数多であり、かけがえのない世界の光。烟るような白い煙。神羅の導く星座の成り行き。廻り合わせる光と光。それが邂逅。

私は私のままで、私にしか言えない表現がここにあって、稚拙で水の上に浮いた浮薄で溶けた花弁のようでもそれはきっと透徹でありたい倫理だから謎を準

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たゆたい①

手を握られていた。
部屋の中は柔らかな温度に包まれていて、そこにはただ優しさしか存在していなかった。私の手を握ったその手は私をどこか知らない場所へと導いてくれるようだった。そこは私が今まで足を踏み入れたことのない場所で、私と彼しか入れないところだった。私は少し緊張していて、その心地よい浮遊感の中に少しずつ爪先から入っていった。そこには暖かで清廉な水が湛えられているようだった。彼の瞳を見ると、穏やか

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雨が地面に滴り落ちる。一粒一粒の中に小さな魂が憑いていて、やがて静かなみずうみになる。わたしは今静寂の中にいる。どうしようもない消失感に包まれて雨の音を聴いている。雨と音と一つになったらここはどこ。