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これはマネジメントの悪魔的教科書っ…!『中間管理録トネガワ』を観て良き上司像を学べ。

 平素はしがない会社員をやっているし、同期も部下も後輩もいないという特殊な状況下で働いている。人に指示をしたり、動かしたりといった経験が皆無なため、「上司」としての資格も能力も欠いており、そのことへの焦りを感じつつ、いざそうした立場になった際にのしかかる責任の恐怖で日々頭がいっぱいだ。課長職の先輩と一緒に働くにつれ、その思いはどんどん強まっていく。

 部下から尊敬され、上司からの信頼も厚く、業績やプロジェクト成功に向けた望ましい環境づくりができる人を、一般的な「いい上司」と呼べるのだろう。会社の規模が大きくなるほど従業員は増え、人間関係は複雑になってゆくし、自社内社外問わず会社員は忖度と気遣いの連続だ。そんな荒波を乗りこなし、部下が働きやすいような気風を創り出す。果たしてそんなことが可能なのか?その答えを求めてビジネス本に手を伸ばすのもまた一興っ…!だが、時にはアニメがその答えを導き出すこともあるっ…!僥倖っ…!時間を有効に使えてこそ優秀な人材、なれば1話30分のアニメで進むべき道を見定めることも、これまた王道っ…!

 『中間管理録トネガワ』というアニメをご存じだろうか。あの伝説的賭博マンガ『カイジ』の公式スピンオフである同名漫画をアニメ化したもので、全サラリーマン必読と称された原作漫画そのままに描かれる、中間管理職の努力と悲哀の物語だ。

 主人公はカイジと「Eカード」にて伝説的な闘いを繰り広げた男、利根川幸雄っ…!消費者金融を主軸とした巨大企業・帝愛グループに属し、その会長たる兵藤和尊に最も近いナンバー2に位置するこの男。作中屈指のキレ者にして、カイジが評するところの蛇っ…!しかしその有能さゆえに敗北を喫し、焼き土下座という最もインパクトのある制裁を受けた、哀しき一介のサラリーマンっ…!物語は、利根川とカイジの悪魔的対決の前にさかのぼる。

 きっかけはあまりに突然っ…!兵藤会長の退屈を紛らわす悪魔的余興の企画を命じられた利根川は、11人の部下を集め「チーム利根川」を結成。まずは指揮を高めるためにチームの自己紹介を行うのだが、帝愛の黒服は黒いスーツとサングラスがドレスコード。おまけに集まった11人の圧倒的違和感…山崎、川崎、萩尾、萩野…紛らわしいっ…!おまけに全員趣味がボウリング…!!憶えられるかっ…そんなの…!

 困難はそれだけではない。気まぐれで考えの読めない上司(兵藤会長)の介入、部下からの信頼失墜、病気、部下の失態、計算外のアクシデント。会社員であれば誰もが遭遇するそれらに対処しながら、着々とプロジェクトを進行させていく利根川。『カイジ』本編では描かれなかったこの男の有能さと巧みな人心掌握術、そして何より「努力」と「我慢」の人という本質を、この作品は突き詰めていく。そこから現実の教訓として持ち帰るものは、あまりに膨大っ…!

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 例えば会議一つとってもそうだ。多重債務者を用いた、兵藤会長を喜ばせる悪魔的余興の検討会議。ここで利根川は、部下が挙げたアイデアがいかに凡庸であっても、褒めちぎる。採用など到底有り得ない愚かで稚拙なアイデアでさえ、発言したことそのものを褒めるっ…!そして、上司である自らがユーモアを挟むことも忘れない。これによって生まれる、発言しやすい空気っ…!活発なディスカッションっ…!意見の良し悪しにのみ気を払うのではなく、活き活きとした場づくりに注視すること。それこそがプロジェクトの成功への第一歩であることを、利根川は示す。

 だがっ…!圧倒的横やりっ…!突如会議室に乱入した兵藤会長によって、暖まった空気は一点…氷点下っ…!部下たちは揃って口をつぐみ、狭い会議室に流れる圧倒的緊張感っ…!試されるっ…!即断即決っ…!しかし利根川、圧倒的愚策っ…!あろうことか部下のアイデアを、全ボツっ…!上司の顔を伺ったがゆえの、勇み足っ…!これによって失われる、部下の信頼っ…!黒服たちの記憶に刻まれる、圧倒的理不尽っ…!

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 この会議によって、生まれかけた利根川への部下の信頼は一気に失墜。だが、利根川の起死回生の一策、「社員旅行」が始まる。社員旅行と言えば聞こえはいいが、貴重な休日を潰して上司に気遣わなくてはならないと部下たちの間では不評。しかし、利根川流社員旅行は一味違う。最高級の神戸牛と厳選された酒で胃袋を掴み、そして上司が率先して動くっ…!バスの手配もBBQの火を炊くのも全部、部下に奉仕するため、上司がやるっ…!「日頃の労をねぎらう」ために、全てを自分で賄う。これぞ利根川流人心掌握。部下と同じ目線に立ち、上下を設けず同じ作業を行い、楽しい時間を演出する。仕事とプライベート、メリハリの付いた姿勢を見せることで、親しみやすさが生まれチームの結束が高まるのだ。

 なんという教訓っ…!このように『中間管理録トネガワ』は、今部下を持つ者、いずれ部下を持つ者全員がバッグに忍ばせておくべき、マネジメントの悪魔的教科書である。ただ厳しく律するのみが上に立つ者にあらず、しかし時にはビシッと締めるところは締める。そんな理想的だが実行は難しい上司像を目指し、上との軋轢に悩みながらも一つ一つ積み上げていく中間管理職・利根川の姿は、同情であれ共感であれ、ビジネスマンにとっての良い教材になるはずだ。

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 ところで、『1日外出録ハンチョウ』という漫画をご存じだろうか。ご多分に漏れず、本作も『カイジ』の公式スピンオフにして、この『トネガワ』2クール以降を度々ジャックする、圧倒的グルメ漫画である。

 主人公はあの男、カイジと地下労働施設にて「チンチロ」の名勝負を繰り広げた、E班班長大槻っ…!帝愛グループが所有する地下労働施設で日夜働き、ビール・お菓子等の物販と地下チンチロリンにて囚人たちからペリカを巻き上げ、私腹を肥やす狡猾な男。そんな大槻のペリカの使い道は、もっぱら「1日外出券」のみ。大槻はこれまでの食べ歩きの経験や外界の情報網を用いて、限られた24時間を最大限楽しむ、いわば外出玄人っ…!これは、そんな大槻の一時の癒しの瞬間に密着した、悪魔的飯テロアニメである。

 この作品が提唱するのは、「時間の有効活用」だ。たった24時間しか自由が与えられないとしたとき、普通の人間ならアレしようココにも行きたいと希望だけで自分を縛り付け、結果として満足した時間を過ごすことが出来ず徒労に終わる。だがこの大槻は何より焦らないっ…!時間が限られているからといって不用意に動かず、事前の念入りなプランニングと、そこに至るまでの経験の集積や情報収集といった、自らの知能の持てる限りを一日の余暇に注ぎ込む。これが成功の近道だ。

 とはいえこの男も債務者、決して褒められた男でないのは確かだ。だが、この一日だけは(黒服の監視があるとはいえ)自由、解き放たれたライオンのようなもの。そして何より、仕事や家事といったルーティンに縛られていないのだ。これこそが最大の強みと言っていい。

 とある日、昼休憩のサラリーマンが集う立ち食いソバ屋に、彼ら同様にスーツで現れた大槻。回転率が命のこの店であろうことか大槻、揚げ物の単品を複数注文っ…!肝心のソバはシメで食べると宣言し、必殺の注文、悪魔的飲料っ…生ビールを注文…!時刻はまだ昼下がり、数分後には会社に戻らなくてはならないサラリーマンたちに、この様子はどう映るか。スーツを着こなした中年男性が、臆することなく昼から飲酒っ…!間違いなく重役か、半休のサラリーマンに見えるだろう。これだ、皆が飲みたくても飲めない時間に、あえて流し込むっ…ビールをっ…!大槻の心に宿る、圧倒的愉悦っ…!

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 借金という大きな枷を背負いながら、何者にも縛られない24時間。その時間を使った贅の沢を尽くす、一日外出の王者・大槻。彼から学ぶべき教訓は、「余裕」という我々社会人が忘れがちなものの偉大さだろうか。やれ納期だ予算だと、常に何かに追われているような現代日本において、大槻だけはブレない、焦らない、動じない。そうした生き方でこそ、見えてくる景色や人の暖かみがあるのだと、彼はこの国に投げかけているのかもしれない。

圧倒的再掲っ…!



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