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『KAMEN RIDER memory of heroez』でMOVIE大戦を遊び、迸るライダー愛に溺れよ。

 「正義の系譜に刻まれる」という、期待させたいんだか不安にさせたいんだか判断に迷うキャッチコピーと共に突如発表された新作ゲーム『仮面ライダー メモリーオブヒーローズ』が、ついに発売された。オールライダーではなく参戦作品を絞った作風、ゲームオリジナルキャストの起用、過去のライダーゲーから流用されたモーションなどなど、PVから見え隠れする情報にファンの間でもその評判は割れ、混沌を極めていた(♪Be The One)。果たして、今回は買いなのか?フルプライス払うだけの価値があるのか?そんな悩めるライダーファンたちに贈る、おせっかいなプレゼンを始めよう。結論から言うと、「Wとオーズのオタクは今すぐプレミアム版を買え」である。

※今回遊んだのは Nintendo Switch のプレミアムサウンドエディションであり、原曲補整が施された感想であることをご了承ください。

 初めに断っておくと、探索要素を期待している人は別のゲームを買った方がいい。『バトライド・ウォー』『クライマックス・ファイターズ』シリーズと差別化するための目玉要素であるフィールド探索要素だが、ここに満足度を求めると必ずや後悔するだろう。舞台となるセクターシティは研究所や森林、砂漠といった様々なフィールドが用意されているが、目的地は常にマップとフィールドの双方に目立つ大きさで表示され迷うことはなく、寄り道要素はアイテム収集用の飾りであり、「一方通行」と散々揶揄されてきたあのFF13の方が充実しているとまで思わせる簡素ぶりだ。『W』に登場したメモリガジェットを使用するシーンがPVでは大々的にアピールされていたが、使用する機会は限定的で「使えるタイミングになると通知してくれる」仕様のため、親切だが自由度は限りなく低い。本作を俯瞰してみれば、この要素だけが突出して子ども向けで、ゲームが得意な大きいお友達は拍子抜けしてしまうかもしれない。

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 ただし、一たびプレイすればライダーファンなら退屈を感じないだろう。むしろ、本作のライダーアクション、あるいはオリジナルストーリーを堪能するには、探索要素が複雑であってはテンポを大きく損なっていたに違いない。それほどまでに、本作のアクションと物語は魅力的で、強く心を揺さぶるものであった。

 まずアクション面では、『バトライド・ウォー』のような一騎当千の爽快感ではなく、「敵の攻撃を見切り、隙を突いて攻撃する」ことを要求される、中々骨のあるバトルが楽しめる。操作するライダーにはスタミナゲージがあり、強攻撃やフォームごとの固有技、回避を行うとゲージが消費される。そのため、攻撃と回避をメリハリ良く行う必要性が生じ、連撃を叩きこむか、あるいは敵の攻撃をかわすためのスタミナを確保するかの駆け引きが生まれる。

 また、道中襲い掛かってくる敵やボスキャラクターには「アーマー」が付与されており、これを削り切らない限り怯ませられず、体力を減らすこともできない。敵のアーマーは攻撃の後に大きく削ることができ、タイミングよく回避することができれば「カウンター」でチャンスが生まれるため、敵の予備動作から攻撃パターンを見切り、適切なタイミングでかわして反撃開始。ボタン連打の一辺倒に陥らないボスバトルには、確かな歯ごたえがあった。

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 本作はフォームチェンジをウリにしており、参戦作品を絞ったがゆえに各ライダーはフォームごとに個性付けが施されている。Wであればサイクロンメタルは「攻撃回数が少ないが防御に秀でている」「ヒート系列は敵のアーマーを削る性能が高い」など、得手不得手が異なる9つのフォームを咄嗟に切り替えて闘うことができる本作は、ライダーなりきりゲームとしてかなり完成度が高い。フォームを選択する画面では時間の流れが極めて遅くなるため(完全停止ではない)、敵の攻撃動作に合わせて回避や防御に優れたフォームを選択したり、アーマーを削り切った瞬間に攻撃力の高いフォームに切り替えたりと、各ライダーの個性と場面を脳内で照らし合わせてフォームチェンジを行う様は、番組のライダーバトルを自分で演出しているような実感さえ湧いてくる。これは画期的と言っていいだろう。

 かなり範囲の広い範囲攻撃を行う敵がいたとして、ラトラーターコンボにチェンジして俊足で攻撃範囲を抜けるか、タジャドルコンボで空を飛び攻撃をかわすか。火球を纏う敵に対し、トリガーメモリの力でそれを打ち消すか、メタルシャフトを使って防御するか。フォームの特性を知れば知るほど、戦略が広がるアクション要素。フォームチェンジの必要性がゲーム攻略とマッチングした本作、これってライダーゲーとして完璧では??とさえ思えてしまう。

 過去作からの流用はあれど、各ライダーのフォーム間でのモーション流用は最小限で、攻撃や固有技、超必殺技演出がそれぞれ個別に用意され、原作再現度も高い。「作品数を絞る」ことがここまで効果的に働くとは、購入前には考えもしなかった事態だ。こればっかりは自分で触って、確かめてほしい。W、オーズ、ゼロワンを格好良く動かし、闘わせるのはキミだ!!

 そしてもう一つ、本作の大きな目玉であるオリジナルストーリーだが、公式からこのような文章が出されるほどに気合が入ったそれは、確かなライダー愛を感じさせるものであった。驚きと興奮、そして感動。過去のライダーゲーで抱いたことのない感情が何度も押し寄せる本作のストーリーは、参戦作品への愛が強いほどに深く刺さるものになっている。

「アイダ博士を探して」というメールを受け、実験都市・セクターシティを訪れた左翔太郎。彼は突如現れた謎の怪人に襲われ、ガイアメモリを落とし単独で生還する。窮地を救ってくれたシティのナビゲートAIであるアイと共に、ライダーとしての力を取り戻しながらアイダ博士の足跡を追うダブル。オーズやアクセル、ゼロワンとも合流し、力を合わせて復活したドーパントやグリードを倒し、真実に迫っていく。

 少なくとも本作における『W』『オーズ』のキャラクターはTVシリーズ本編を踏まえた設定であり、映画での共闘を経た上でのファンサービス的なセリフも散りばめられている。また、ゼロワンの一発ギャグを真面目に解説するフィリップ、警察官という共通点で繋がるアクセルと後藤バースなどなど、クロスオーバーならではのお遊びも嬉しい。

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 「このキャラクターならこういう言い回しする!」という気づきが多く、監修の有無は定かではないが、ストーリーの担当者は相当のファンだろう。開発時期の関係かゼロワンのゲスト参戦感は否めないものの、こと『W』『オーズ』への多大なリスペクトを感じずにはいられない様々な仕掛け、迸る作品愛が織りなすストーリーは、過去のライダーゲームとはハッキリと一線を画する仕上がりとなっている。

 ややネタバレになるが、Wが最初に闘うことになるボスキャラクターは、あのナスカ・ドーパントである。それも、ただの再生怪人ではなく生前のキャラクター、すなわち園咲霧彦その人として再生したナスカとの再戦を、ダブルは強いられることになる。同じく風都を愛する者同士、再び殺し合いをすることに苦悩する翔太郎。その想いを汲んでなお「風都の風」への想いを託す霧彦。その結末と遺されたものが何を成すのかー。

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 本作のストーリーは、例えるなら東映から「予算多めに出すし俳優さんも好きに呼んでいいから、一本映画作って」と言われたファンが書いた脚本である。二次創作めいているが、作品への愛と理解がないと思いつかない展開に満ちている。さながらラブレター、「俺が考える最強のMOVIE大戦」とも呼ぶべき代物だ。実際に製作するとなればバジェットや俳優のスケジュール調整といった面で実現できないアイデアも、ゲームなら可能になる。そんな動機から生まれたのではと邪推するほどに、作り手の情熱が感じられる一作なのだ。断言するが、スクショ制限がされるクライマックスバトルのある展開に、必ずやあなたは驚かされるだろう

 ゲームとしては粗削りで、ボリュームも大作級とは言い難い。どれだけ違和感のない仕上がりといえど、「やっぱりオリジナルキャストに声をあててほしい」という気持ちは拭えない。それでも、ゲームだから可能になったストーリー、なりきり度を増したライダーアクション、参戦作品を絞ったからこそ高まった原作再現などなど、新規シリーズの旗揚げとしては申し分ない出来栄えだったと思う。むしろシリーズが続いてほしいと思えたからこそ、こうして3,000字近いレビューを書いている。それほどまでに衝撃を受け、多幸感を得られたゲーム体験だった。

 繰り返すが、本作の参戦作品に思い入れがあるのなら、間違いなく「買い」の一本である。値段が下がるのを待つ人もいるだろうが、少なくとも私は「次の memory of heroez」が早く遊びたくて仕方がない。作り手の暴走気味な愛に悶絶したいのだ。一介の『W』『オーズ』ファンである私をここまで狂わせた本作を、どうか騙されたと思って遊んでみてほしい。もちろん、選択肢はプレミアムサウンドエディション一択だ。選曲もエグいくらい愛が迸っているし、再現度も臨場感もプレミアム版なら5割増しを優に超えるだろう。多々買え…多々買え…。


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