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最近の、よしなしごとを 11/26(時には、忘れることも大事ね)

みなさんは忘れっぽい方ですか?それともよく覚えている方ですか?

夫と昔の話をしていると、「え、そうだっけ?」みたいな反応をされることが多くてびっくりする。(これは男性あるあるなのかもしれない。女友だち、みんなわりと記憶力いいかも)いや、私にとっちゃあ忘れるなんて絶対無理、みたいな出来事もあっさり忘れていて結構驚く。正直、めちゃくちゃ羨ましいです。夫は寝ると嫌なことを忘れてしまうタイプで、私はずーーーーっと覚えていてしまうタイプ。なんか、人生損してる?なんて思ってしまう。

小学生のとき眼鏡を馬鹿にされたこと(ちなみに私はものすごく目が悪い、これって人生の半分くらい損してるんじゃなかろうか)、寒冷蕁麻疹になったら感染症と勘違いされてクラスメイトから距離を置かれたこと、電車の中に先生からもらった大切なお手紙を忘れてしまったこと、高校生のとき電車の中で理不尽に怒られたこと…。意外とこんな小さなこと(まあ、おそらく当時の私はショックだったんだと思う、大人にとっては大したことがなくても子どもにとっては大きなことってあるよね)でも、私の脳の海馬の中にはしっかりと刻み込まれてしまっていたりするから人間は不思議だ。

記憶力があることと、忘れる能力があること、果たしてどっちがいいのだろうか。

今のところ、私の記憶力が役に立ったことといえば、学生時代の勉強と仕事のときくらい。正直、あんまりプライベートで記憶力って役に立っていない気がするのです。嫌なことってされた方はずっと覚えているけど、した方はケロッと忘れてしまってることが多いよね。きっと、あの同級生も、あの私を怒鳴ったサラリーマンも、みんなすっかり忘れているんだろうな。

嫌な思い出というのは、思い出自体が一連の出来事にその時の感情が結びついたまま記憶されてしまっているから、なかなか忘れられないんだそうです。(人類が生き抜くために必要だという説もあるらしいけど)

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以前、仕事でお世話になっていた方が、その方もすごーく記憶力がよくていらっしゃったのだけれど、「忘れることも大切な能力だよね」と言っていてものすごく頷いてしまった。

嫌な出来事、過去のこと、辛かったこと、もちろん忘れることって難しけれど、少しずつでも手放していきたいなぁ、なんて思ってしまう。

30年近く生きていると、嬉しいことも悲しいことも嫌なことも色々あるのだけれど、何だか嫌なことの方がよく思い出してしまっているのではないか、とふと考えてしまう。人間って嫌なことの方が思い出しやすくできてるんだろうか。せめて、よく思い出すものは幸せな思い出でありたいなぁ。これって意識したら変えられるものなんだろうか。

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ふと、自分の幼い頃の写真を見たら、さっぱり覚えていないけれど写真の中の私は、兄と手を繋いですごく楽しそうに笑っていて、自然と涙が溢れてきてしまった。

それなのに、私にはこの、恐らく楽しかったであろう日の記憶が全くない。家族4人で夜桜を見た記憶も、キャンプをした日の記憶も、博物館に行った日のことも覚えていない。人間の記憶できる量には限りがあるのかもしれない。だとしたら、なおさら嫌な出来事は手放したいよね。でもそんなに思い通りにいかないあたりもまた人間らしいといえばそうなのだけど。

つくづく、世の中のみんなはこうした記憶たちとどう向き合っているんだろう、と考えてしまう。私は、トリガーみたいなものがあるとふっと過去の記憶が蘇って、すごく悲しくなる日がたまにあります。なぜか私の中で、「記憶」のイメージは「井戸」なのだけれど、それは村上春樹の小説の影響なのか、はたまた祖父の家に本当の井戸があったからか。あの深ーい井戸の中に落ちてしまうように、暗い記憶にすっと引き込まれてしまう瞬間はもうどうしようもない。時間が私を現実世界に戻してくれるのを待つしかありません。

それでも意外とすぐにふっと井戸の水面に顔が出て、ちょっと深呼吸したり、喋ったりしているとすっかり悲しい記憶はどこかへ行ってしまったり。記憶って本当に不思議なものだと思います。

 僕は顔を上げて北海の上空に浮かんだ暗い雲を眺め、自分がこれまでの人生で失ってきた多くのもののことを考えた。喪われた時間、死にあるいは去っていった人々、もう戻ることのない想い。

ノルウェイの森

そんな「記憶」について思いを巡らせながら、村上春樹の「ノルウェイの森」を読んでいたら、冒頭がまさにそんな昔の記憶にとめどなく動揺させられる主人公の記述で、いつも以上にその文書がどこまでも胸の奥に響いてしまった。

井戸の底の記憶たちは悲しいけれど、少なくともふと眺めた写真の中の私がすごく楽しそうでちょっと救われた気がしたし、こうしてこれからたくさん幸せな思い出を積み重ねていければいいんじゃないか、とちょっと気持ちが軽くなりました。

悲しかった出来事は少しずつでも手放して、もう井戸を覗く必要がなくなったら、その余白を幸せな記憶でまた少しずつ、埋めていくことが出来たらいいなぁ、と思うなどしています。





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