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美術館のすすめ

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2023年1月の記事一覧

金曜の夜の贅沢(三菱一号館美術館にて)

金曜の夜の贅沢(三菱一号館美術館にて)

金曜日の夜、仕事を終えて、いつもと違う電車に乗り、私は東京駅へ向かう。

東京駅で降り、帰宅するために駅へ向かう人々と、逆方向へ私は歩いていく。

東京駅から歩いて5分ほど。赤いレンガ造りの建物が見えてくる。そう、三菱一号館美術館だ。

華金、なんて言葉があるけれど、私はどちらかと言えば、金曜日の夜は飲みにいくよりも、ゆっくり美術館で過ごす方が好きだった。大学4年生の頃、アートにハマり始めた私は、

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厳しい冬を乗り越えて(東京都写真美術館にて)

厳しい冬を乗り越えて(東京都写真美術館にて)

星野道夫さん、というと私が思い出すのが現代国語の教科書だ。内容はあまり覚えていないが、当時私が読んでいた国語の教科書に星野道夫さんの文章が掲載されていた。教科書のプロフィールに記載されていた、彼が数多くの動物や自然の写真を撮っていたこと、そして取材中にヒグマに襲われ、急逝されたことを覚えている。

当時の私にとっては、国語の教科書は癒しだった。幼い頃からたくさん本を読んできたからか、国語は得意でど

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人生、ずっと考え中(国立新美術館にて)

人生、ずっと考え中(国立新美術館にて)

六本木で降りたのは久々だ。前に来たのはいつだっけ、と記憶をたどる。いつだかの夏、幼馴染と六本木の国立新美術館に来た。カフェのテラスでお茶をしたのがとても気持ち良かったことを覚えている。青々とした夏の緑と夏の風。夕方になってもまだ明るい空。

もうあれから何年経っただろう。ここ最近の私は、記憶とその頃に見た美術館の展示が結びついていることが多い気がする。まるでそれは、高校生のときに散々自転車に乗りな

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