[SIer]重要システムのインフラ基盤に思う事

企業の基幹システム(勘定系 生産管理、在庫管理など企業の活動に必要なシステム)などの重要システムのインフラ基盤は何で動いているでしょうか?銀行や大企業、歴史のある会社は、メインフレーム(サーバーよりさらに大型のコンピュータシステム)を利用しているかと思います。大学で情報工学を勉強してきた人がまさかCOBOLを利用する事になるなんて、メインフレームの担当になった新人などはびっくりでしょうね。
もしくは、新技術に挑戦してメインフレームから各種クラウド(Microsoft AzureやAWSなど)をインフラ基盤としたシステムに作り替えたり、もしくは、そもそもクラウドサービスのアプリケーション利用に変更などをされているかと思います。

それほど規模が大きくない会社の場合は基幹システムとして、他に基幹システムの関連システム・周辺システムや、ちょっとしたシステムのインフラ基盤にIAサーバーを利用している会社は沢山あると思います。IAサーバを効率よく利用するためにIAサーバを仮想化して、今現在vmwareを利用している会社は悲惨ですね。Broadcomの買収によってライセンス形態やライセンスのカウント方法が変わり、ライセンス費用が高額になっているそうです。まぁもともとvmwareのライセンスは、3年毎の更新の際に高額になるような契約形態ですので、システム担当者はそもそも更新のたびに頭が痛かったと思います(DELLに買収前から営業は更新契約時に隠しもせずに「現状に****万追加として契約してほしい」と言ってくるような会社)。さらにVDI(仮想デスクトップ)を利用していて基盤にvmware horizonも利用契約をされているのであれば、horizonはもともとvmwareの製品の一つでしたが、今はvmwareと会社も別になり、システム担当者はさらに頭が痛い事になっていると思います。vmwareの技術の祭典であるVMware Exploreは、今まではアメリカ(ロサンゼルスやラスベガス)まで行く必要がありましたが、日本も開催拠点になったので、無駄な出張が無くなるのはいい事ですね。今後は分かりませんが。
この3年のライセンス+保守の形態は、マイクロソフトボリュームライセンス契約と似ており、マイクロソフトボリュームライセンスは、L+3SA(ライセンス+3年間のサポート)の契約になっていると思います。契約数を超えてライセンスを利用する場合は、過去(前回の保守更新契約時)にさかのぼってライセンスと保守費用が掛かるので、日本企業からみたら意味不明で高額なライセンス費用に思われます。

話を戻します。基幹システムを稼働させるような重要システムのインフラ基盤はどのように決まるのでしょうか?
新規のシステム導入や機材リプレイスを行う場合の選定方法です。

これは架空の話です。
選定は、ゴルフ場で決まります。
何を言っているのか意味が分からないと思いますが、ゴルフ場でインフラ基盤がどのようになるのかが決まるのです。再度になりますが、通常のサーバーではなく、基幹システムを稼働させる重要なインフラ基盤の話です。一時費用で数億、年間でも億以上のお金が発生するインフラ基盤の事です。(あくまでインフラとのインフラの保守だけの金額です。運用を委託する場合は別に運用コストがかかります。)
インフラ基盤を選定するにあたり、機器の選定をシステム担当者というか担当するプロジェクトチームが、要件定義をして、RFI(情報提供依頼書)もしくはRFP(提案依頼書)各社ベンダー(メーカー)に対して依頼を出したりして、調査を行い、製品比較や製品を借りてテストを行ったりして、要件をどれだけ満たしているか調査を行い、機器というか技術の選定を行うと思います。
しかし、ベンダーの上層部(営業)は別の動きをします。ベンダー側は会社総動員で力を入れて、接待ゴルフを購入する会社上層部(プロジェクトの責任者ではなく、社長など本当のトップ)に対して行います。その接待ゴルフで購入するベンダーが決まります。いわゆるトップマネージメント・トップセールスというやつです。
担当するプロジェクトチームは、一生懸命選定を行っていても、通常はありえない会社の上層部から、どこを選定するようにとお達しがあります。そうなっては、担当者やプロジェクトチームは面白くなくとも、そのように動くしかなくなります。作成した要件定義はそのまま利用して、いかに選択されたベンダーが優れており、まるで検証をしてそのベンダーを選定したかの様な資料を作成します。自身で良いと思っていたメーカー&技術が不採用となり、選定を反対していたベンダーに決まった事、ゴルフ場で決まった事を知れば、モチベーションは下がると思います。また、選定漏れした会社に対しても、不採用の説明を求められるので、システム担当者は大変です。このような事が発生すれば、会社に見切りをつけ退職をする人も出てきます。
なぜベンダーはこれほどに取りにかかるのでしょうか?答えは簡単で、機械を売りたいと言う事、その後のインフラ基盤の概要設計から運用設計までのプロジェクトに入りたい事。自社の基盤が入る事で、他のプロジェクトにも入りたい事。保守費用とミドルウェア費用として継続してお金を稼ぐことができるからです。例えば、概要設計一つとってもベンダーへの支払いは数千万ほどかかります。それが、システムが稼働する前の各フェーズ毎に発生します。莫大な金額です。

また、別の架空の話をしましょう。
グローバルで利用している基幹に近い重要システムをリプレイスする事になり、インフラ基盤とOSをどうするのか考る必要が出てきました。UNIXで動けばよいらしいので、数社のメーカの製品を比較し機器を選定する事になりました。UNIXと言えば、AIX(IBM)、HPUX(HP)、Solaris(oracle)のどれかになります。新しくインフラ基盤を導入する必要があるので、担当者やプロジェクトチームは、要件定義を行い、それぞれの製品比較を行います。グローバルで利用されるシステムであるため、海外にある同じシステム利用する事になる関連会社のIT部門など、グローバルにヒアリングも行います。欧州からはっきりとは言いませんが、要約するとIBMは嫌いなのでAIXだけは選定してほしくないという意見が出てきたとします(欧州は第2次世界大戦の話もありIBMが嫌われているように思われます。あとミドルウェアに不具合があってもいつまでたっても解決できていない事情があったりしたとします)。グローバルで利用する必要があり、米国や、欧州をはじめとする各国でシステム間連携が必要な為、この場合は、ヒアリングの結果ありきでAIXは非採用として、プロジェクトチームは選定表をまとめます。HPUX(HP)、Solaris(oracle)のどちらかを選定して、プロジェクトチーム内で決めます。ここら辺のやり取りは(邪魔な意見が入らない様に)夜の人の少ない時間に会議室でこっそりと打ち合わせをしている場合があります。そこで、選定した機材/OSで進めていく事をグローバルに仮発信し再度ヒアリングを行います。次は米国から既存システムを調査したところ、米国内だけで利用している重要な既存システムと連携するにはAIXを選定しないといけないと言う事が報告されたとします。もっと早く情報を出して欲しいと担当者は思いますが、グローバルでのコミニケションは難しい事を思い知らされます。その既存システムとの連携は必須の為、AIXの導入に決定です。今まで一生懸命に調査し作成した選定表を、作成し直します。今までいかにAIX以外の機器/OSが優れているかをまとめていましたが、逆にAIXがいかに優れているかの資料に作成を作り直します。関係者に対してAIXで進めていく事を情報共有を行い、再度本当に他に問題が無いのかの確認をグローバルで開発やインフラ担当を含め確認をします。その後は社内の審査会に臨み、稟議を作成し決済をいただき、購入手続きを経て、システム導入全体のプロジェクト計画に遅れが出ない様にインフラ環境を間に合わせ、開発者の人達が利用できるように、機器(この例ではAIX)の導入、設計、構築などを行います。大きな金額を利用する場合は、稟議を起案すると財務や経理と言った部門から呼び出しがかかったりもします。
インフラの基盤が準備できないと、開発が進まない原因を、本当は開発側にあるにも関わらず、インフラの担当者の責任にされるので、全体スケジュールから遅れることなく、機材の導入、設計、構築を行い、環境を準備する必要があります。
システムリプレイスプロジェクトを進めていくと、開発側で導入するソフトウェアが一つ増え、そのソフトウェアがAIXで稼働せずに、別のUNIXでしか稼働しない事が分かり問題が発生したとします。インフラ基盤を担当しているプロジェクトチームにとっては、後出しじゃんけんです。すでにAIXは購入済みで構築をしているのです。この場合、どうなるかというと開発側とは最後の最後まで調整をしますが、どうにもならない場合は追加でUNIXの機材を購入し、AIXと同様に、導入、設計、構築を行います。
本来は、どちらか一つの機器/OSの導入だったはずが、2つの機器の導入と機器の導入を行う事になりました。当初のAIXはシステム全体の稼働を考えて選定しているので、非常に大きな性能を持っています。当然ですが、1つの機器は億を超えています。機材の設計・構築などにもそれぞれお金がかかります。インフラの導入予算をもともと準備していたとしても、追加で同じ規模の機器を導入する場合、予算はありません。システム担当者は上司から「予算は無いのではなく作り出すものだ(名言)」と言われ、本来は他のプロジェクトで利用するはずだった予算など、予算をかき集めて予算を作り出します(別のプロジェクトの予算圧縮、他のシステム担当者が進めているプロジェクトの調整をお願いして予算圧縮、他には進んでいなさそうなプロジェクトや、今年度実施出来なさそうなプロジェクト、来年実施に変更できそうなプロジェクトの予算を調整、保守費用は既存の契約会社との交渉での費用圧縮などを行い、少しづつ予算を集めます)。固定資産と保守費は予算費目が別なので、予算を作り出すのは大変です。このような事態になると、社内の審査会での説明も大変ですし、審査会後の稟議書もものすごく考えて作成をする必要があります。また翌年度からは2つの大型の機器を購入したことから、その保守費用の予算を申請する必要が出てきます。

さて、このように高額な大型機器を2つも購入したプロジェクトはどうなるでしょうか?開発プロジェクトがだめ(すべてのシステムの更新はあきらめ、一部機能のみ更新を行う)になって、2つの機器とも直近では不要になりました。会社としてみればとてつもない損失です。
インフラ基盤の視点に戻ります。インフラ基盤はまぁ、不要なら不要で、他のシステムを新規購入した機器に移行をしたり、別に新規開発やリプレイスをするシステムのインフラ基盤を、新規購入した機器にしたりして、新規購入した機器を利用する事で、最終的には2つの機器とも利用が可能です。このような大型の機械は、論理的にパーテーションを分ける事ができる(仮想サーバみたいな感じです/ただしライセンス(ミドルウェア含む)は複雑です)ので、色々なシステムを導入する事が出来ます。ただし、色々なシステムを詰め込みすぎると、インフラの保守メンテナンスを行う時間がなくなりますし、それぞれのシステムがだんだんリソースの利用量が増えて、リソースがひっ迫するほどフル活用する事になります。リソース管理をしっかりしないと、大変な事になります。

再びになりますが、これは架空のお話です。


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