見出し画像

【無人配送・自動運転】Walmartがリードするアメリカと、COVID-19で加速する中国…日本で無人配送車が行き交う日も近い?

かねてから物流業界の慢性的なドライバー不足を解決する手段として「無人配送」の実現が待ち望まれていましたが、COVID-19の影響により、人手不足に加えて「非接触」へのニーズも急増。無人配送に対する期待はますます高まっています。

今回は「無人配送・自動運転」という事業テーマで、国内外の事例も踏まえて動向を調べてみました。

アメリカで「小売大手×スタートアップ」の無人配送・自動運転がヒートアップ

無人配送・自動運転の分野で世界的な注目を集めているのが、アメリカ小売最大手のWalmartの取り組みです。同社は2019年にアーカンソー州で実証実験下での自律走行車の走行を認める法案が可決されたことを受けて、同州内の2店舗間で顧客から受注した商品を自律走行車で配送する試験運用をスタート。自動運転によるミドルマイル物流(※)として実に7万マイル以上もの走行実績を積み上げてきました。

※ ミドルマイル物流とは:物流センターから店舗、倉庫から倉庫など、中継地点をつなぐ物流のこと

そして2020年12月、同社はドライバーが乗車しない完全な自動運転トラックを導入すると発表。ECの在庫管理や物流に特化したダークストアから2マイル離れた店舗まで無人配送を行う計画です。さらに2021年には第2のユースケースとして、ニューオーリンズとルイジアナ州メタリーの間の20マイルのルートで、スーパーセンターからWalmartのピックアップポイントへの配送を自動運転(最初は安全のためドライバーあり)で実施することを計画しています。

これらのプロジェクトでWalmartが協業パートナーとして手を組んでいるのが、2017年に創業した新鋭スタートアップのGatik。自動運転技術に関する専門知識を持つエンジニアが設立した企業で、ミドルマイル物流に特化した自動運転トラックを開発しています。同社はカナダの小売企業Loblawと提携して同国初の自動運転トラックによる商品配送にもチャレンジし、またシリーズAで2500万ドルを調達するなど、「無人配送・自動運転」カテゴリーで急速に存在感を高めています。

このように、小売大手がスタートアップと提携して無人配送・自動運転に着手する流れが一つのトレンドになっています。アメリカ小売大手のKrogerは自動運転スタートアップのNuroと提携し、ヒューストンで自動運転車(トヨタのプリウスを使用)による商品配送サービスをスタートさせていますし、テキサスとメキシコに展開する小売チェーンH-E-BもUdelvと提携し、自動運転で注文客の自宅まで商品を届ける実験を行っています。

ちなみに、WalmartはNuroとUdelvの両者ともラストワンマイル配送の実証実験を実施しているほか、General Motors傘下で自動運転車の開発を手がけるCruiseとも実証実験を行なっています。

なお、スーパーマーケット以外の業種でも、例えばNuroはドミノピザやアメリカ大手ドラッグストアCVS/pharmacyと連携した自動運転による配達・配送をスタートさせており、さまざまなシーンで無人配送・自動運転の活用が実現しつつあるのです。

パンデミック下の物資輸送に中国テック企業が続々と協力

さて、ここまでアメリカの動向にフォーカスして紹介してきましたが、COVID-19の影響で急速に無人配送・自動運転が社会に浸透し始めているのが中国です。

もともと中国は2018年に発表した「コネクテッド自動車道路テスト管理規範(試行)」で、自動運転の公道テストには「テストドライバーの乗車必須」「事前に閉鎖試験区で必要なテストを行う」「走行中の車両の位置、速度・加速度の情報、車両制御モードなどをリアルタイムで地方政府が指定するクラウドに送信する」といった厳しい規定を設けており、自動運転の実現には一定のハードルがありました。

しかし、COVID-19の流行で状況は一変。人の往来の規制や非接触ニーズの急増で、ラストワンマイル配送における無人配送が社会から注目されるようになります。その中で特に自動運転に対する環境整備が活発なのが北京市。同市は以前から自動運転の公道テスト用に道路を政策先行エリアとして開放し、200本以上の走行テストを行ってきました。

2021年4月には、高レベルの自動運転を行う「スマートコネクテッドカー政策先行エリア全体実施案」を承認。北京市が指定したモデルエリアの公道で、政策先行エリア内での実証実験に合格した製品に限り、無人配送事業を行うことが可能になりました。

そして2021年5月には、北京経済技術開発区や中国汽車工程学会(SAE)などが共催する第8回ICV技術年次総会(CICV2021)が開かれ、中国EC大手の京東傘下の京東物流、生活関連サービス大手の美団、無人配送スタートアップの新石器に無人配送専用の車両コードが交付され、モデルエリアでの走行が認可されています。

一方、COVID-19の再流行で封鎖措置が行われている中国国内の一部エリアでは、いくつかのテック企業が自動運転による食料・医薬品・日用品の物資輸送を行なっているようです。2021年5月には百度が運転席無人の自動運転タクシーサービスを北京でスタートさせています。非常時とはいえ無人配送・自動運転の有用性が立証されれば、社会実装に向けた追い風になることは間違いないでしょう。

2021年中の法改正が噂される国内動向

それでは、日本国内の無人配送・自動運転はどこまで進んでいるのでしょうか?

まず現行の道路交通法や道路運送車両法ではロボットが公道を自動走行することが想定されていないため、使用の条件などが明記されていません。しかし、読売新聞や日本経済新聞の報道によれば、日本政府は2021年度中に自動配送ロボットの公道使用を認めるための法改正を目指す方針のようです。

2019年に発足した、経産省と地方自治体、民間企業による「自動走行ロボットを活用した配送の実現に向けた官民協議会」でも、自動走行ロボットを社会実装に向けて、安全性の確保や関係者の役割分担、法的責任の所在などについて検討を進めています。

なお、民間企業は法改正に先駆けてさまざまな実証実験を行っています。2020年にはZMPと日本郵便が全国で初めて物流分野における配送ロボット活用に向けた公道での走行実証実験を行い、宅配・配送ロボットDeliRo(デリロ)が千代田区の歩道を走行する動画が話題となりました。

また、トヨタ自動車のグローバル投資ファンドWoven CapitalがNuroのシリーズCに出資をしたり、ヤマトホールディングスのベンチャーキャピタルファンドKURONEKO Innovation Fundが中国の自動配送ロボット開発企業のYours Technologiesに出資するなど、日本国内での無人配送・自動運転サービスの実現に向けて海外スタートアップと連携する動きも出てきています。

COVID-19の影響もあり、ここ数年で世界的な飛躍を遂げている無人配送・自動運転カテゴリー。引き続き右肩上がりの成長が見込める2021年は、海外のみならず国内の大手企業やスタートアップの動きも含めて注目です。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!