ルーティンこそパフォーマンスの源泉
こんにちは。
自宅近所の井の頭公園は、紅葉がピークを迎えています。
朝ここでトレーニングをしたり、瞑想したりするのが私の日課ですが、凛とした冬らしい空気を吸い込みながら、ふと「今年はいったい何をやっただろうか?」と考えました。
例年だとこの時期、「ああ。。。今年ももうすぐ終わりだ。今年もがんばったな」などと思うものですが、今年はその感慨はまったくと言って良いほどありません。
行事という行事がすべてキャンセルとなり、季節や時間の経過を感じる節目がなかった一年のような気がします。
さて今回のコラムは、これまで続けてきた「信頼関係」についての考察を、もう少し掘り下げます。
■「安定感」こそが、信頼を得る
私の周りには、「何があっても、例外なく決めたことを淡々とやっている」人が数人います。
いずれも、尊敬すべき人たちです。
例えば、
・毎朝、5時台に朝日を浴びながらトレーニングをしている人
・毎朝、かかさず座禅を組む人
・会食をしていても、9時で必ず切り上げて帰宅する人
・飲み会の2次会には行かない人
・お酒は最初の乾杯だけしか飲まない人
・毎日、メルマガを配信する人
なかには、
・目覚めて最初の一歩を右足から踏み出す人
・毎朝トイレと玄関の掃除をして出かける人
・離れて暮らす奥様に、毎日決まった時間に電話をして愛情を伝える人
などなど。
いずれも、皆さん口をそろえて「これがルーティンだから」と言います。
■ルーティンのすごさ
じつは私、ルーティンが大の苦手でした。
決められた時間に決められたことをすることに抵抗を感じてしまい、どちらかというと、”気分”で決めて物事に取り組んしまう方でした。
しかし経営者となり、私の周りには、頑なに「ルーティン」にこだわる人がたくさんいるのを見聞すると、
ルーティンのすごさがあらためてわかりました。
それは、決めたことを淡々とやることで、
・鉄の意志のような、メンタリティが鍛えられる
・行動変容が定着化する
・「気分で選ぶ」ことが、エネルギーの無駄遣いだと気づく
さまざまなメリットを感じるようになったのです。
そして何より、私が実感したのは、こんなことです。
雨が降ろうが風が吹こうが、飲み会が盛り上がろうが、
いっさいの例外を作らず、決めたことを淡々とこなすその姿こそが、
見る人たちの心に、安心感を与えるということです。
つまりは、「安定感」という信頼感。
そんな気持ちを、周りが持てるのです。
そして、ある経営者の知人から、こんな話を聞いたことがあります。
例えば朝目覚めて、「今日何を着ようか」と考え、迷う。たったこれだけのことで、一日分の集中力の数パーセントを使ってしまう、と。
これを聞いて、なるほどな、と思いました。
有名な話ですが、前Apple社の故スティーブ・ジョブズ氏は、いつだって「黒のタートルネックに、ジーンズ、白いスニーカー」といういで立ちでした。
これは、「余計なことに集中力を使いたくない」という、意思の表れです。
世界を代表するほどのイノベーターが、そんなことでたった数パーセントでも集中力をそがれると、それこそ大損害でしょう。
私の頭の中で、知人の話が、このエピソードとつながったのです。
その瞬間、「気分で決める」ことを極限まで減らしてしまおう、と思ったわけです。
思えば、
「やろうか、やるまいか」と迷うことは、それ自体、力をそがれてしまうことだな、と。
結局、どっちかを選ぶしかありません。
なのに、それについて、時間と集中力を浪費する。
そして、本当に集中して取り組むべきときに、その集中力が空っぽだったという状態に。。。
経営者として、それはとてもばかげた行為だと思いました。
■私が服もアプリもフレンドも捨てまくった理由
私が今最も力を注ぎたいのは、会社のこと、お客様のことです。
自分の着る服、食べるもの、起きる時間、このようなことに力をそがれている場合ではないな、と。
ですから、まずやったのが、着るものについてです。
つまり、服選びという”浪費”をやめました。
なるべくシンプルで、人から評価されにくい、単色の組み合わせだけ済む服を残し、無駄な装飾や模様のある服は、捨てました。
1シーズンに3~4パターンの組み合わせができれば、じゅうぶんです。
(もちろん、服が大好きな人は、けっして無駄な浪費でなく、かえって気分をあげてくれるものだと理解しています)
次に、スマホのアプリを3割減らしました。
気づけばほこりがたまるように、自分にとってはどうでも良い、惰性でダウンロードしたようなアプリが何十個とありました。
なんだかんだ、すき間時間にスマホを手にし、しかも、どうでも良い情報に目をやっている”浪費”もやめました。
さらに、SNS上でやたらと増えていた、いわゆる「友達」を半分近く減らしました。
例えばFacebookは、いつの間にか1,300人くらいの「友達ではない友達」がいましたが、今は700人ほどです。
知らない人、お互いに意味を持たないつながり。
そういったものは「縁」ではありません。
不要な気遣いだけでつながっているのは、私にとっては、お互いにいてもいなくても変わらない存在でしかありません。
などなど。
自分の力をそがれてしまうような、さまざまな行為やノイズをできるだけ減らし、
本当に集中すべきときに、力が出る環境を整えようと思いました。
■私のルーティン(一日の始まり)
そして、自分にとって意味のあるルーティンを始めました。
・朝起きてすぐに公園に出る
・決まったベンチに腰かけて瞑想をする
・寒くても暑くても、頭から冷水を浴びる(沐浴)
・ゆうべ決めた服を着る(ローテーションで決めている)
・朝食は毎日決まったメニューをとる
例えば、ここまでが朝のルーティンです。
「迷い」によって朝から集中力を削がないための、鉄のルールです。
日中から夜にかけても、いくつかのルーティンを決めています。
そしてもちろん、このコラムも、週のルーティンのひとつです。
けっして、気分で書く書かない、を決めません。
週に一度の筋トレも、同じです。
気分が乗らないから行かない、ということはしません。
そんな不安定さを、お客様や周りの人たちに見せるのは、むしろ人格を疑われてしまうことになるでしょう。
こうして大の苦手だったルーティンをこなすことで、次第にメンタルや体調の安定を実感しています。
実際に、去年9月、人知れず風邪を引いて(夕方発症して、夜中に完治)以来、病気はしていません。
こうしたルーティンは、例えばイチロー選手のように、一流のスポーツプレイヤーでもよく見られる行為ですね。
見方によっては、パフォーマンスを出すための”儀式”と感じさせるほどの神聖さすらあります。
■ルーティンこそパフォーマンスの源泉
その姿こそが、見ている周りの安心感を誘います。
人間、生きていれば、思い通りにいかないことは少なくありません。
辛いことだってあるでしょうし、気分が滅入ることだって、体調がすぐれないことだってあります。
しかしここでいう「安定感ある人」とは、自分に起きるそれらすべてを受け入れたうえで、
それでもなお例外を作ることを自分に許さず、「いつも通り」のことをやる人たちなのです。
最後に、あるエピソードをご紹介します。
私は熊本という土地が好きで、仕事でもプライベートでもよく足を運ぶのですが、熊本市の中心街に、ある有名な喫茶店があります。
度々メディアでも取り上げられ、全国のコーヒーマニアが通うほどのお店で、私も何度か伺ったことがあります。
創業は1964年、最初の東京オリンピックが開催された年だそうです。
お客が5~6人も入ればいっぱいになってしまうような小さなお店なのですが、80才を超えたマスターがひとり、たったひとつの種類のコーヒーを淡々と客に振舞っています。
そして驚くのは、この喫茶店には定休日がないということ。
ある記事によれば、マスターがお店をお休みにした日は、50年以上の間でわずか10日余りとのことです。
私は好奇心に任せて、マスターと直接お話をさせていただきましたが、印象に残っているのは、マスターの”眼光”の強さ、そして当時に仕事にかけるプライドの高さです。
「どの喫茶店やカフェにも、うちのような味は出せない」
と言い切るマスターの言葉の強さは、50年以上の間、いっさい妥協をすることのなかった仕事ぶりがうかがえます。
まさに、品質においても仕事への姿勢においてもいっさいのブレを許さない「安定感」を、身をもって体現している方だと、深い感銘を受けました。
地元の知人が言っていました。
「あの喫茶店の良さは、いつ行っても営業している、という安心感なんだ。そして、いつ行っても同じ味が味わえるという安心感でもある」と。
ルーティンこそ、パフォーマンスの源泉です。
それを50年以上、身をもって示してくれている人のエピソードでした。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
◆◇◆ 今週の箴言(しんげん)◆◇◆
(ラ・ロシュフコーより)
われわれが小さな欠点を認めるのは、
大きな欠点を持っていないと、人に信じさせるためである
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