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ダイバーシティ「あべこべ論」

こんにちは。

少しずつ春らしい陽気を感じる季節になってきましたね。

今回は、ここ最近の、五輪組織委員会や国会での騒動をはじめ、
世間全体になんとなく流れ始めている「異端をたたく」というメンタリティについて、私の考察を綴ります。


■過激化してきた「批判」運動

「あの人の女性蔑視発言はけしからん」
発言自体の問題性はさておき、ある偉い人が最近、こう叩かれましたね。

また、私たちの身近ではこんなことが起きています。
「あいつは体制批判をしている。けしからん」
「あの人はチームの足並みを乱す。けしからん」

という批判の声。

自分が思う正義と違う人がいたら、批判したくなる。
この感情自体、人間であれば、誰だって持っているものでしょう。

ところが、特に最近の世間の流れに、私は少し息苦しさを感じることがあります。

それは、批判が過激化している、と思うからです。


■それは、「臭い物にフタ」運動ともいえる

例えば、
「マスク警察」や「(車の)ナンバー警察」と揶揄される人たち。

あるいは、
例の五輪組織委員会。問題発言をした人を、フクロ叩きにした人たち。

私は、この両者は本質的に同じタイプなのでは、と思っています。

こういうタイプの人たちに共通しているのは、
自分たちの正義とする基準から少しでも外れると、
その人を批判するだけにとどまらず、
とどめを刺すまで、手を緩めず追い込む
という特徴です。

例の女性蔑視発言を受けて、
「追い詰めます、絶対に」とTwitterで発言した、国際オリンピック委員会の委員がいました。

私はこれを見て、背筋が寒くなる思いがしました。

たしかに現代は、ダイバーシティが重んじられる時代ではあります。
しかし、ある人の発言がダイバーシティに反する考えをしたからといって
「追い詰めます、絶対に」と表明するって。

それ自体、「多様な意見が存在することを、許さない」という意思表明ではないのでしょうか。

自分はダイバーシティ推進の旗手のつもりで、
ダイバーシティに反する多様な意見をつぶす。
つまり、その姿勢こそが、ダイバーシティの精神に反している、と言えないでしょうか?

私は、こうした、徹底的に追い込むような、過激化された批判は、
「臭い物にフタ」のわかりやすい行動パターンだと認識するようになりました。


■繰り返される悲しい歴史

世間が「是」とする多数派意見。

これを批判する少数派意見は、おおむね「否」とされます。


多数派によって、徹底的に否定・批判され、
表舞台から消えるまで追い詰めらて、
「なかったこと」になってしまった少数派の「否」の意見は、
いったいどこに行くのでしょう?

とうぜん、消えるはずはありません。

「皆と違うから駄目だ」という理由で、
表舞台から無理やり引きずり降ろされた「個人の意見」は、
当然そこで消えるはずもなく、
表舞台ではなく、まるで地中に深く潜るように、

自分の意見への賛同者を探して歩きます
つまり、本音を言えるコミュニティを静かに、
しかし、強固に形成していくのだと思います。

言いたいけど言えなかった本音と本音。

こういうものは、ものすごく強いエネルギーで結びつきます。

そして、

マグマのように溜まったそのエネルギーはあるとき、
地中では息苦しくなり、
いよいよ、恐ろしく強烈なパワーや影響力をもった状態で、
また表舞台に舞い戻ってきます。
今度は、制御できないほどの勢いをもって。

まるで、核燃料の不法投棄が蓄積したことで生まれた、「ゴジラ」です。

5年前もこんなことがありましたね。
アメリカ合衆国の表舞台に登場したトランプ氏は、
当時はマイノリティと言われた、差別主義者たちの気持ちを代弁する形で、まさに勢いづいて大統領にまでなりました。


■組織運営は「臭い物にフタをしない」こと

ダイバーシティの時代です。

単純な理論ですが、ダイバーシティを推進するためには、
ダイバーシティを批判する人たちを消し去ってはいけません。
これこそ、多様性尊重の精神に反することです。

臭いものに完全にフタをしてしまい、「なかったこと」にされた少数派意見は、
行き場を求めてただよい、
同じ本音どうしでつながり、
見えない場所で増幅していきます。

増幅し、力を蓄えた意見は、
もはや少数派意見ではなく、大きな影響力を持つ多数意見ほどに成長し、
表舞台に戻ってきます。


「体制を批判するやつは、けしからん」
「チームの輪を乱すやつは、けしからん」

よく言っていませんか?

その言動を、力任せに封じ込めようとすればするほど、
いつか、思ってもみなかったような反動を食らいます。


エグゼクティブであれば、することはシンプルです。

臭い物があれば、おそるおそる、嗅いでみるのです。

フタをしてしまい、あとで異臭騒ぎが起きては、もう遅いのです。

フタは、「半開き」ほどに空けておき、ときどき換気をしてあげてください。


風通しの良い組織とはつまり、文字通り、
換気の良い環境のことを言うのです。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。


◆◇◆ 今週の箴言(しんげん)◆◇◆
(ラ・ロシュフコーより)

われわれの美徳は、ほとんどつねに、
仮想した悪徳にすぎない。


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