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ついに、3年ぶりの開催実現。「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」を振り返る。

【8/6(土)7(日)11(木)12(金)「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」@ 蘇我スポーツ公園】

3年ぶりの「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」が終幕しました。

4日間を通して、本当にたくさんの素敵な景色に立ち会うことができました。

Saucy Dogの"シンデレラボーイ"を聴きながら、タオルで顔を押さえて涙を堪えていた人。

[Alexandros]の"閃光"のイントロが鳴った瞬間、思わず「きた」と小さな声を漏らし、そのまま何度も拳を上げ続けていた人。

ステージから離れたエリアで、遠くから響くフレデリックの"オドループ"のリズムに合わせて楽しそうに踊っていた親子。

KANA-BOONの"スターマーカー"のイントロが鳴った瞬間、お互いに目を合わせながらハイタッチをしていた2人組。

MAN WITH A MISSIONの"Remember Me"が始まった瞬間、「泣いちゃう泣いちゃう」と言いながら、結局最後まで笑顔でジャンプし続けていた人。

あいみょんの"初恋が泣いている"を聴きながら、一緒に肩を左右に揺らしていた3人組。

King Gnuの"白日"のイントロが鳴った瞬間、ハッと息を呑んで、そのまま天を仰いだ人。

キュウソネコカミのステージにゲスト出演した東京スカパラダイスオーケストラのホーン隊4名を観て、感動のあまり「すげえ」と呆然としていた人。

sumikaの"イコール"を聴きながら、嬉しそうな笑顔で、一緒に手拍子をしていた3人組の家族。

BUMP OF CHICKENの”Aurora”を聴きながら、一人、両手で顔を塞ぎ肩を震わせていた人。

ONE OK ROCKの"Stand Out Fit In"のリズムに合わせて、涙を拭きながら必死にジャンプし続けていた人。

ACIDMANの"ある証明"を聴きながら、何度も何度も何度も何度も高らかに拳を上げていた人。

UVERworldの"EN"を聴いた後、隣の友人に、泣きながら「このバンドかっこいいね」と呟いていた人。

このように一つひとつ挙げていくとキリがなくなってしまうほどに、本当にたくさんの美しい瞬間を目にすることができました。現地でレポートを書く仕事があったので感慨に浸っている余裕はなかったはずなのですが、それでも、何度も涙が溢れそうになりました。


そして今回の4日間を通して、やはり、ポップ・ミュージックのリアルは、いつだって現場にあるのだと再認識しました。

ここで言うところの現場とは、ライブ会場やフェス会場を指しますが、もちろんそれだけではありません。それぞれの日々の生活の中でイヤホンやスピーカーを通して音楽を聴くことも、自宅で配信ライブを観たりすることも、大切な音楽の楽しみ方であり、大切な現場の一つです。ただ、そうした数ある現場の中でも、同じ空間に集まった他者と、同じ音楽体験をリアルタイムで共有できるのは、やはりライブの場であり、フェスの場なのだと思います。

ワンマンライブとは異なり、フェスの場には、年代も、音楽の好みも異なる多様な人たちが集まります。隣の人が、どのアーティストが好きで、何を一番楽しみにしてフェスに来たのか、私たちは知ることはできません。それでも、そうした名前も知らない誰かと一緒に、一つの同じ感情を共有することができます。あえて無防備な言葉を使ってしまえば、フェスの場には、そうした奇跡のような瞬間が何度も訪れます。

そうした奇跡を呼び起こす楽曲を、私たちは、ロックアンセム、ポップアンセムと呼びます。そうした楽曲たちが、3年ぶりの「RIJF」で鳴り響くたびに、夏フェスの祝祭感を取り戻すことができた歓びが、何度も心の底から湧き上がってきました。そして、一昨年、昨年、失われてしまった機会が、いかにかけがえのないものであったか、改めて感じました。


今回、初めて「RIJF」に来た人も多かったと思います。また、これまで何度も「RIJF」に参加していて、もはやこのフェスがライフワークになっている人も非常に多いと思います。そして中には、本当はひたちなかでの開催を望んでいた人もいたと思います。

一人ひとりの参加者の数だけ「RIJF」への期待の形があり、今回の「RIJF」は、そうした様々な期待を一身に背負っての開催となりました。その結果については、あの4日間、会場に集まった人たちの笑顔や、会場を満たしていたピースフルな空気が、全ての答えなのだと思います。ネットの情報を見ているだけでは決して迫ることができないような現場のリアルが、これから先、全てを物語っていくのだと思います。

もちろん、コロナによるアーティストの出演キャンセルや、台風による5日目の開催中止など、とても無念な出来事もたくさんありました。チケットを持っていたにもかかわらず、コロナで参加するのを辞退した人も少なくなかったはずです。それでも、そうした数々の現実を引き受けながら、一歩でも前へ進んでいくしかないのだと思います。

開催地について、もし今回、蘇我への移転が実現していなかったら、そのまま、今後の「RIJF」の未来が閉ざされてしまっていた可能性もあったと思います。「JAPAN JAM」の運営ノウハウがあるとはいえ、今回の規模の夏フェスを蘇我で開催するのは初めてだったので、もしかしたら、僕の知らないところでいろいろなトライ&エラーもあったはずです。それでも、そうした数々の現実を引き受けながら、一歩ずつ懸命に前へ進んでいけるのが「RIJF」というフェスであり、それこそが、20年以上の歴史を誇る同フェスの強さなのだと思います。

「RIJF」の物語が再び更新され始めたこと。そして、たくさんの人たちと一緒にその歓びを共有できたことが、何より嬉しかったです。今はまだコロナ禍における制限も多いですが、本当の意味で、フェスが完全復活を果たす日は決して遠くないと信じています。


前置きが非常に長くなりましたが、今回は、僕が「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」で観たアクトの中から5組のミニレポートをまとめてお届けします。


●YOASOBI

「RIJF」初日のトリを担ったYOASOBI。昨年12月の日本武道館公演以来の2度目の有観客ライブであり、初の夏フェスであり、そして、昨年中止となった「RIJF」(本来は、ここで初の有観客ライブを敢行する予定だった)のリベンジでもある。そうした何重もの深い意義が込められていたからこそ、チームYOASOBIが今回のライブに懸ける想いは相当に強かったと思う。フェスの規格を度外視した特設セットや映像演出がもたらすライブ体験は圧巻で、何より、超満員の観客の愛と期待にめいっぱいに応えていくikuraとAyaseのポップスターとしての佇まいが最高にかっこよかった。ラストに披露された"群青"の合唱パートで、ikuraは「みんなの心の声、聴こえてるよ、ありがとう!」と叫んだ。いつか必ず、全員でこの曲を大合唱する景色を観たい。


●King Gnu

"飛行艇"や"白日"といった代表曲を盛り込みながらも、"カメレオン"や"雨燦々"などの新曲を通して最新型のモードを堂々と見せつけてくれたKing Gnu。その規格外のスケールを誇るサウンドに圧倒された。全編を貫く鮮烈なロックヴァイブスに痺れた。喜怒哀楽の感情をまっすぐに射抜いていくエモーショナルな歌に、何度も泣きそうになった。そして、2022年の夏、何万人もの人たちと一緒に、この壮絶なロック体験を共有できたことが何よりも嬉しかった。ラストは「一途」で大団円、圧巻。今回の「RIJF」2日目のトリは、彼らにとっては一つの通過点に過ぎない。11月の東京ドーム公演へ向けて、このまま4人は猛進し続けていく。ロックの未来は明るい。心の底からそう信じさせてくれるロックバンドと、3年ぶりの「RIJF」で再会できて、本当によかった。


●BUMP OF CHICKEN

20年以上の歴史を誇る「RIJF」を最も象徴するバンドの一つが、2001年以降、何度も同フェスに出演し続けているBUMP OF CHICKENなのだと思う。蘇我の地で新しいスタートを切った今年の「RIJF」で、こうして4人のライブを観ることができて心から嬉しかった。"アカシア"や"なないろ"、"クロノスタシス"といった最新曲を中心とした今回のセットリスト。ハイライトは数あれど、その中でも特に無類の感動を呼び起こしたのが、"花の名"だった。同曲の歌詞が《僕だけに聴こえる声がある》《あなたとだけつくれる夜がある》へと変わっていた。今は観客は声を出すことができないけれど、それでも、この夏だからこその唯一無二のライブを一緒につくることができる。一生忘れたくない夜が、また一つ増えた。


●ONE OK ROCK

通常のバンド編成の有観客ライブは約2年半ぶり。もちろん、コロナ禍となってからは初めて。フロアに渦巻く凄まじい熱量の期待を受けて、完全世界水準を見据えて磨き上げ続けてきた渾身のロックが次々と放たれていく。僕は3曲目の"Wonder"から観ることができたけれど、その時点で既にクライマックス級の熱気がフロア一面を満たしていた。圧倒的だった。ライブ中、Takaは、コロナ禍になる前のライブと同じように「歌え!」と叫んでいたが、それは、ライブシーンの未来をつくっていくためにフェスのルールを守り続ける観客に対する絶対的信頼の表れであった。その信頼があるからこそ、4人はいつものように全身全霊でロックを鳴らすことができたのだと思う。ラストは、Official髭男dismの藤原聡をステージに迎えて、一緒に"Wasted Nights"を披露。2人のハーモーニーが、涙が出るほど美しかった。


●UVERworld

ずっとUVERworldは誤解され続けていた。それでも、いや、だからこそ6人は、反骨精神を燃やし、自分たちが信じるロックを懸命に磨き、一つずつ状況を覆しながら支持者を増やし続けてきた。2015年には、悲願の「RIJF」への初出演を果たし、2019年にはトリも経験した。そしてこの日、2度目のトリとして、超満員のLOTUS STAGEへ辿り着いた。6人が人生を懸けて掴み取ったその景色は、言葉を失うほどに美しかった。そして、やはり今回も、コロナ禍で生まれた新たなライブアンセム"EN"の鋭い輝きが圧倒的だった。これを生でくらって刺さらないわけがない。あの日、あの場所で、UVERworldのロックを初めて体験した人も多かったと思う。そして、間違いなく、何かしらの形で感情を動かされたと思う。6人の人生を全て懸けた11曲には、それだけの確かな重みと深みがあったはずだ。



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