【有料記事】 僕たちの心を繋ぐ希望のロックアンセム 50曲
「ロック」とは、何だろう。一人の音楽リスナーとして、そして、音楽メディアに携わる者として、この10年間、僕は数え切れないほど多くのロックフェスに参加してきた。そして、自分なりの一つの結論に辿り着いた。
「ロック」とは、コミュニケーションの回路、つまり、アーティストと僕、そしてあなたを繋ぐ、感情のメディアである。歓び、哀しみ、切なさ、孤独。そして、願い、覚悟、決意。「ロック」は、そうした全ての感情や想いを等しく包み込み、優しく、時に爆音として激しく、「私たちの唄」として響かせてくれる。
その時に僕たちは、名前も、年代も、そのフェスの会場に来た理由も異なる知らない誰かと、一つの同じ感情を共有することができる。大いなる一体感に包まれながらも、同時に、ありのままの自分の感情を肯定することができる。「ロック」は、そうした奇跡のようなコミュニケーションを可能にする。この現象を前にして、僕は涙が止まらなくなるような経験を幾度となく重ねてきた。
そして僕たちは、そうした奇跡を呼び起こす楽曲を「ロックアンセム」と呼ぶ。僕たちの心を一つに繋ぐ唄。そのステージに集まった一人ひとりの観客を主役に変えてしまう、まさに「ロック」の魔法。そうした楽曲たちに、これまで、どれだけ多くの人が奮い立たされ、導かれ、救われてきただろうか。僕たちは、これからも「ロックアンセム」を求め、アーティストはその期待に応え続けてくれるだろう。だからこそ、フェスの奇跡は、起きるべくして起きるのだ。
今回は、フェスカルチャーが隆盛/定着した2010年代(2010〜2019年)における日本のロックシーンを振り返りながら、「僕たちの心を繋ぐ希望のロックアンセム 50曲」のリストをランキング形式で編纂した。(なお、編纂にあたっては、この記事を公開した2020年8月時点で活動を継続中のアーティストに絞って楽曲をセレクトしている。)
この記事が、あなたが新しいアーティストや楽曲と出会うきっかけ、もしくは、ライブやフェスのステージで再会するきっかけになったら嬉しい。
※50位〜11位のテキストは無料でお読み頂けます。
【50位】
THE BAWDIES 「HOT DOG」(2010)
2010年代の幕開けに合わせてリリースされたこの楽曲は、まさに、日本におけるロックンロール・リバイバルのムーブメントの象徴であった。濃厚なブラックグルーヴ。軽やかに爆走するビート。そして、ソウルフルに轟くROYのシャウト。そのどれもが、多様なアーティストが集うフェスにおいて、今もなお異彩を放ち続けている。彼らが高らかに鳴らすロックンロールの精神は、次の10年においても、その普遍的な輝きを増し続けていくはずだ。
【49位】
My Hair is Bad 「真赤」(2015)
どうしようもなく脆くて繊細な恋心を、今、これほどまでにダイレクトにロックの爆発力に転換できるバンドは、他にいないだろう。何千人、何万人もの観客が集まるフェスのステージにおいて、一切の躊躇いなく放たれる極めてパーソナルな心情。そんな椎木知仁の想いが、激情が迸る爆音を伝って、数え切れない人たちの心と共振していく。ロックとラブソングの最も熱き共犯関係を、ここに見た。
【48位】
Mrs. GREEN APPLE 「WanteD! WanteD!」(2017)
快楽へと誘うシンセのリフ、一気にトップスピードに至る大胆な楽曲構成。まるで、EDM全盛の世界の音楽シーンとダイレクトに接続したかのような楽曲だ。メロディや歌詞は言うまでもなく、その卓越したアレンジセンスが鮮やかに光っている。この10年の間に現れた新世代アーティストの中でも、大森元貴は、シーンに最も鮮烈なインパクトを与えた人物の一人だ。2020年7月、Mrs. GREEN APPLEは、ベストアルバム発表のタイミングで「フェーズ1」の完結、および、一時活動休止を発表したが、この次の5年、10年へ向けたさらなる飛躍を期待せずにはいられない。
【47位】
SiM 「KiLLiNG ME」(2011)
鋭く響くエッジーな重低音サウンドと、深く轟く渾身のシャウト。そして大胆に施されたレゲエ/スカのアレンジ。まさに唯一無二のSiM流のロック観に、多くのロックリスナーが共振した。そして、自身が主催する「DEAD POP FESTiVAL」が長年にわたって成功を収め続けている事実こそが、SiMの実力とシーンからの支持の大きさを何よりも雄弁に物語っている。盟友を集めた自身の主催フェスの開催に挑戦し、見事に定着へと導いた彼らの功績は、やはりあまりにも大きすぎる。
【46位】
クリープハイプ 「イト」(2017)
いくつものフェス鉄板曲を送り届けてきたクリープハイプ。それでも彼らは、いつまでも現状に満足することはない。それどころか、常に現状に葛藤し、もがき苦しみながら、一歩進んでは二歩下がり、その繰り返しの中で自分たちの存在意義をシビアに問い続けてきた。そうした歩みの先に、彼ら自身を次のステージへと導いた新たな代表曲"イト"が生まれた。ワンマンライブとは異なり、あらゆる要素が相対的に流動していくフェスのステージは、時にアーティストに残酷な現実を突き付ける。それでも、その闘いを超えた先に、ロックバンドの新しい可能性が開かれていくのだと思う。
【45位】
ORANGE RANGE 「以心電信」(2004)
2000年代、J-POPシーンを完全に掌握してみせたORANGE RANGEの音楽は、不特定多数の観客が集うフェスのステージで輝かしい真価を発揮する。問答無用でフロアを沸かせてしまう「切り札」の数々。"上海ハニー"、"ロコローション"、"イケナイ太陽"、そして"以心電信"など、灼熱のアンセムを挙げていけばキリがない。ステージとフロアを結ぶ壮大な大合唱は、フェスだからこそ立ち会える美しい光景だ。いつまでも色褪せぬORANGE RANGEのミクスチャーロックアンセムの数々が、次の10年も高らかに鳴り響き続けていくことを願う。
【44位】
Suchmos 「STAY TUNE」(2016)
2010年代の音楽シーンにおいて、ヴァイブスやグルーヴといった極めて曖昧な概念に明確な輪郭を与え、そして同時に、その定義を根本からアップデートしてみせたSuchmos。彼らがロックフェスのシーンに参入してきた時、僕たちは、そのステージパフォーマンスからただならぬ熱量を感じ取った。平熱のクールさを感じさせるSuchmosではあるが、フェスのステージで彼らのロックバンドとしての鮮烈な気概に触れ、心を震わせられた人はきっと少なくなかったはずだ。
【43位】
Base Ball Bear 「changes」(2008)
2010年代の日本のロックシーンにおいて巻き起こった4つ打ちロックの一大ムーブメント。遡ること2000年代、その礎を作ったバンドの一つがBase Ball Bearだ。繊細な自意識と、決して譲れはしない確固たるアイデンティティ。それら全てが眩く渦巻くバンドアンサンブルに合わせて、気付けば心が躍り出す。彼らのダンサブルなギターロックは、そうした豊かな音楽体験を僕たちに届けてくれる。青春の季節を駆け抜け、いくつもの試練を超えながら、リスナーと共に大人の階段を登り続けてきたBase Ball Bear。彼らのストイックな音楽的挑戦は、次の10年へと続いていく。
【42位】
くるり 「ロックンロール」(2004)
くるりは、日常の中にこそ宿る尊い感情の一つひとつを、そのフラジャイルな輪郭を崩さないまま音に乗せて届けてくれる。いつだって自然体で、誰よりも自由。しなやかで、軽やかで、しかし、それでいて彼らの音楽は、ふとした時に、ずっしりとした深みと重みを感じさせるから油断ならない。"ロックンロール"しかり、岸田繁が綴るリリックは、さりげなく圧倒的な真理を射抜く名詞ばかりだ。また、彼らが主催する「京都音楽博覧会」は、後に続くアーティスト主催フェスの隆盛の一つのきっかけとなったことも、ここに書き記しておきたい。
【41位】
YUKI 「うれしくって抱きあうよ」(2010)
豊潤なバンドアンサンブルの中で輝く清廉なダンスフィール。そして、会場全体を大きな愛で包み込む歌心。ステージを軽やかに舞いながら、力強く歓びの感情を讃えていくYUKIは、まさに、僕たちのロック・ディーバだ。問答無用のポップ・スターでありながら、やはり彼女は、どうしようもなく「ロック」に愛されている。その無敵な装いに、いつも惚れ惚れしてしまう。これからもYUKIには、いくつものロックフェスにおける鮮やかなハイライトを担い続けていってほしい。
【40位】
SUPER BEAVER 「らしさ」(2014)
傷だらけになりながらも、懸命に紡ぎ続けてきたロックバンドの物語。彼ら4人の歩みの全てが、今、いくつものフェスにおけるメインステージ進出という形で美しく結実している。どれだけ多くの観客を前にしても、いつだって、たった一人の「あなた」と向き合おうとする渋谷龍太。彼の唄が誇る観客の心を撃ち抜く精度と、あらゆる喜怒哀楽の感情を優しく受け入れる包容力は、日を重ねるごとに高まり続けているように思う。2020年、SUPER BEAVERは、2度目のメジャーデビューを果たした。彼らの怒涛の快進撃は、ここからさらに加速していくはず。
【39位】
NUMBER GIRL 「透明少女」(1999)
時代を超えて、この国におけるオルタナティブ・ロックの精神を高らかに轟かせ続ける歴史的一曲。2019年、NUMBER GIRLは幾度かの復活ライブを敢行してきた。その中でも、年末の「COUNTDOWN JAPAN 19/20」において彼らと久々に再会した人は特に多かったはずだ。脳天を突き刺すようなスネアの響き。危機感を覚えるほどに重厚なベースの轟き。そして、宙空を切り裂くように鮮烈なビートを刻み付けてゆくギターフレーズ。その全てが破格であった。あの日、NUMBER GIRLが満場のEARTH STAGEに叩き付けた音塊については、どれだけ言葉を綴ろうとしても決して表し切れはしないけれど、その得体の知れない何かを、僕たちはどうしようもなくロックと呼ぶのだと思う。これからも彼らには、この国におけるオルタナティブ・ロックの精神的支柱であり続けてほしい。
【38位】
MONGOL800 「小さな恋のうた」(2001)
年代を超えて愛され続ける、まさに、日本のロック界の至宝。まるで民謡のように広く開かれたメロディは、いつだって無数の観客に共有され、怒涛の大合唱を巻き起こす。特にCメロの歌唱は、もはや丸ごとオーディエンスに託されてしまうのだから凄い。陽光そのもののような圧倒的にポジティブなエネルギー、そして豊かな包容力を誇るこの楽曲は、これから先、たとえどれだけ時代が変わっても決して色褪せないはずだ。
【37位】
フジファブリック 「夜明けのBEAT」(2010)
狂おしく乱反射するソリッドなギターリフ。シャープネスを極めた4つ打ちのビート。トリップ体験を加速させる豊かなバンドアンサンブル。志村正彦が最後に残した至高のロックアンセム、それが"夜明けのBEAT"だ。2009年12月、彼はこの世を去った。それでも志村の想いは、残されたメンバーたちへとたしかに受け継がれた。そして彼が紡いできた数々の名曲は、新しいフジファブリックの物語の大切なピースとして、次の10年、そしてその先の時代へ、いつまでもステージ上で歌い継がれていく。バンドが続いていく、ということの意味を、意義を、彼らのステージを観るたびに深く想う。
【36位】
サンボマスター 「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」(2005)
山口隆の凄まじいほどの絶唱と、会場全体から巻き起こる「愛と平和」の大合唱。サンボマスターのロックは、誰一人置き去りにしないどころか、一人残らず全員まとめて抱きしめてしまう。それは、どうしようもなく暑苦しくてむさ苦しいコミュニケーションではあるけれど、会場には観客たちのくしゃくしゃな笑顔が咲き乱れている。その光景に立ち会う度に、僕はいつも涙を堪えきれなくなる。ロックンロール・イズ・ノット・デッド。サンボマスターが音楽を鳴らし続ける限り、僕たちのロックは死なないのだ。
【35位】
フレデリック 「オドループ」(2014)
2010年代前半、4つ打ちロックの時代の到来を高らかに告げた楽曲。フレデリックの登場は、シーンの潮流を不可逆的に変えてしまった。脅威の中毒性を誇るリフと、スリリングに加速するタイトなダンスビート。まさに、フリークアウト寸前の音楽体験に、数え切れないほど多くのロックリスナーが熱狂した。もはや、反則級とも言えるほどに磨き込まれたダンスロック。その快楽性は、一度でも味わったら二度と抜け出せなくなるほど危険なものである。
【34位】
KANA-BOON 「シルエット」(2014)
2013年、新しい世代のトップランナーとして華々しいメジャーデビューを果たしたKANA-BOON。その驚異の快進撃は、2010年代のロック史に刻まれるべき鮮やかなシンデレラストーリーであった。力強い4つ打ちのリズムを基軸としたバンドサウンドは、当時のフェスシーンにおいて強く求められていたもので、彼らはその要請にしっかりと応えながら、一歩ずつ前進し、少しずつ頼もしい存在へと成長していった。その過程では、迷いも葛藤も挫折も喪失もあった。それでもKANA-BOONは、膝をついては立ち上がり、僕たちに笑顔と勇気を届け続けてくれた。等身大のロックヒーローとして、彼らはまたここから走り出していく。
【33位】
ゲスの極み乙女。 「キラーボール」(2013)
「COUNTDOWN JAPAN 13/14」における完全なブレイクスルーを契機に、一気にJ-POPシーンのド真ん中へと繰り出した彼ら。それぞれのメンバーが織り成す美麗で艶やかなフレーズと、それらが真っ向からぶつかり合うことで生じるカオティックなバンドアンサンブル。ジャジーで、ファンキーで、それでいてクラシカル。このように、よくよく考えれば矛盾だらけであるにもかかわらず、彼らの楽曲はどれも極めて端正なポップソングとして機能しているから凄い。2010年代、僕たちは、川谷絵音の鮮やかなバンドマジックに何度も不意を突かれ、そしてその度に心踊らされてきた。次の10年も、彼の不敵な企みは止まることはないだろう。
【32位】
スピッツ 「醒めない」(2016)
広大なステージに降り注ぐ凛とした歌心と、エヴァーグリーンな輝きを放つメロディ。野外フェスでスピッツのロックを聴くと、燦々と降り注ぐ日射しを縫うようにして、そっと涼しい風が吹き抜けていく感覚を覚える。そして、不思議と心が瑞々しく潤っていく。それは、とても言葉では表せないほどの至福の時間である。なお、スピッツはフェスへ出演する度に他のアーティストの楽曲をカバーすることが定番となっていて、その中でも、2019年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」における"前前前世"は忘れがたい名演であった。
【31位】
the telephones 「Love&DISCO」(2008)
徹底的に磨き上げられた七色のダンスビート。そして、濃厚で濃密なエンターテインメントショーとして昇華されたゴージャスなステージング。それまで僕たちが慣れ親しんでいたはずのロックが、天井知らずの熱狂空間の中で「DISCO」とフュージョンしていく。the telephonesの登場によって、僕たちのロック観は大きく更新されてしまった。彼らが高らかに鳴らし続ける「DISCO」という概念は、今や日本のロック史における一つのスタンダードになった。それは、2000年代までは全く想像もできなかったような、とても凄まじい現象だと思う。
【30位】
9mm Parabellum Bullet 「The Revolutionary」(2010)
メタル、ハードコア、パンク、そして歌謡曲。そうしたいくつもの要素が、渾然一体となりながらカオスな狂騒空間を生み出していく唯一無二のロック像。シーンに登場した瞬間から圧巻のオリジナリティを提示してきた9mmだが、その後、結局は彼らのフォロワーバンドが現れなかった事実こそが、この音楽の特異性を証明している。《世界を変えるのさ》という果てしない気概を轟かせたこの楽曲は、これまでに、数え切れないほど多くのリスナーに覚醒感をもたらし続けてきた。次の10年も、9mmは、ただ唯一の存在として僕たちの心を奮い立たせ続けてくれるだろう。
【29位】
ACIDMAN 「ALMA」(2010)
ACIDMANは、いつだって真摯に「生命」について歌い続けてきた。そして同時に、「終わり」「最後」「死」から決して目を逸らすことはなかった。今この瞬間を生きていたいという願いがロックと結び付く時、限られた「生」は輝きを増して、「死」は終わり以上のものとなる。そして、世界は変わる。大木伸夫の長きにわたる祈りが、ついに一つの美しい結実をみせた楽曲。それが、銀河級のスケールを誇る愛のロックバラード"ALMA"だ。たった3人で奏でる壮大で深淵なバンドサウンド、大木が歌い届ける言葉の力によって、僕たちの心の中に「宇宙」を想起させる。そんなことを成し遂げられるバンドは、ACIDMANの他にいない。
【28位】
東京スカパラダイスオーケストラ 「Paradise Has No Border」(2017)
宮本浩次(エレファントカシマシ)、横山健(Hi-STANDARD)、TAKUMA(10-FEET)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、尾崎世界観(クリープパイプ)、そして、桜井和寿(Mr.Children)。このように挙げていけばキリがないが、スカパラは、あらゆる音楽のジャンルの壁を取り払いながら、数々のボーカリストとロック史に深く刻まれるべきタッグを組んできた。今や、スカパラとのコラボレーションは、あらゆるミュージシャンにとっての夢となっている。そしてその必然として、彼らのフェスのステージで必ずと言ってもいいほどに実現するゲストシンガーとのコラボレーション。もはや、スカパラの存在自体が一つの「フェスティバル」と化している事実に、いつも圧倒される。
【27位】
BRAHMAN 「鼎の問」(2012)
ロックの闘神、BRAHMAN。鬼気迫る激烈なパフォーマンスの間に、ふと、この楽曲が透徹な祈りのように響く時、僕たちは、どうしたって「あの日」のことを思い出す。2010年代、僕たちは、「3.11以降」という現実を生きることを余儀なくされた。そして、そうした日々において、もう一度ロックの可能性を信じさせてくれたのが彼らだった。ロックは単なるエンターテインメントではなく、シリアスでリアルな表現であり、懸命なメッセージであることを体現しながら、そして、変えるべき現実を自分たちの手で変えていくために、4人は、今も絶え間なく闘い続けてくれている。そして、BRAHMANの共闘の呼びかけに、これからも僕たちは何度も奮い立たされ続けていく。
【26位】
THE YELLOW MONKEY 「ALRIGHT」(2016)
2016年、15年ぶりに奇跡の復活を遂げたロックバンド・THE YELLOW MONKEY。その年、彼らは「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」にヘッドライナーとして出演を果たした。あの夜は、あまりにも感慨深いものであった。なぜなら彼らは、今では伝説となっている第1回目の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2000」のステージにおいて記録的な台風に見舞われ、そのままフェス自体が途中終了となる苦い経験を味わっていたからだ。だからこそ、あの夜、THE YELLOW MONKEY が16年ぶりにひたちなかに凱旋した事実に、ただただ胸がいっぱいになった。そして何より嬉しかったのは、往年の名曲たちの中でも、新曲"ALRIGHT"が際立って輝いていたことである。栄光の過去を顧みるためではない。想像もできない未来を描いていくために、4人は再集結を果たしたのだ。王者の風格はそのままに、THE YELLOW MONKEYは、ここから新たなロックの物語を紡ぎ出していく。
【25位】
04 Limited Sazabys 「Squall」(2017)
Hi-STANDARD主催の「AIR JAM 2018」において、トリ前という重要なスロットを担った04 Limited Sazabys。彼らは、あの会場に集まったハイスタ世代の次の世代を代表する存在としてステージに立ったのだ。それは他でもなく、Hi-STANDARDが彼らに寄せる大きな期待の表れだろう。「もうやるしかない。」というGENの決死の覚悟は、極めて鮮烈でありながら、誰一人置き去りにしない包容力を兼ねた輝かしいバンドアンサンブルを生んだ。「AIR JAM」の精神性が、確かに次の世代に受け継がれていることを証明する圧巻のパフォーマンスに、強く心を動かされた人は多かったはずだ。
【24位】
エレファントカシマシ 「RAINBOW」(2015)
この国におけるロック界の雄として、いくつもの年代を跨ぎながら、今日も全身全霊でステージに立ち続けるエレファントカシマシ。どれだけのキャリアを積み、たとえ輝かしい貫禄を帯びたとしても、いつだって目の前のステージに明日の命運の全てを懸ける。そのヒリヒリとした生き様を映した骨太なロックは、これまでに数え切れないほどのリスナーの人生を鼓舞してきた。いつまでも昂り続ける宮本浩次の不屈の闘志。その必然として、エレファントカシマシは、今もなお自分たちの黄金期を更新し続けている。何度でも新しい自分自身に生まれ変わりながら、未だ誰も辿り着いたことのないロックの理想郷を目指し続ける。これほどまでに頼もしいロックバンドが、この国の音楽シーンにいてくれて本当によかった。
【23位】
THE ORAL CIGARETTES 「起死回生STORY」(2014)
2010年代、日本の音楽シーンにおいて巻き起こった一大現象。それは、ロックフェスのスロットを奪い合う熾烈なバトルロイヤルだ。2014年、”起死回生STORY”でメジャーデビューを果たしたTHE ORAL CIGARETTESは、その群雄割拠の混戦へと果敢に立ち向かっていった。いくつもの「BKW(番狂わせ)」を積み重ねながら、ついに勝ち取ったメインステージのスロット。新世代を担う決意と覚悟を全身全霊で鳴らす彼らの姿は、とても逞しく、輝かしいものだった。それでも、まだまだ「起死回生」の物語は終わってはいないはずだ。2020年代、いったい彼らがどんな「BKW」を見せつけてくれるのか。これからも期待し続けたい。
【22位】
MAN WITH A MISSION 「FLY AGAIN」(2011)
あまりにも大きすぎるインパクトを与えたデビューと同時に、一気にロックシーンを制圧してしまったMAN WITH A MISSION。野外フェスだろうが、屋内フェスだろうが、一切関係はない。彼ら5匹が降り立ったステージは、問答無用で熱狂の坩堝と化す。ロックフェスが、これほどまでに狂騒的なダンス空間へと変貌を遂げることになるとは、2000年代までは誰も想像できなかったはずだ。それほどまでに、"FLY AGAIN"のドロップは衝撃的であった。ロックリスナーの快感中枢をダイレクトに刺激してしまう同曲は、今もなお、MAN WITH A MISSIONが誇る渾身の最終兵器であり続けている。
【21位】
WANIMA 「ともに」(2016)
PIZZA OF DEATHからのデビューが2014年、そこから始まったWANIMAの快進撃は、やはり、あまりにも痛快すぎるものであった。瞬く間に日本中のキッズのハートを鷲掴みにしたかと思えば、メロディックパンクという枠組みを越えて、老若男女に開かれた国民的アンセムを連発していく。彼ら3人は、いたって自然体のまま、満面の笑顔で爆速を続けているが、これはどう考えたって凄いことだ。その全ての源となっているのは、極上のメロディと、普遍的なエモーションを射抜いた真っ直ぐな言葉たち。つまり、「歌」の力だ。フェスのステージに立つ度に、そこに集まった趣味嗜好がそれぞれ異なる観客たちの心を一つに繋いでしまう。そんなことを無邪気にやり切ってしまうWANIMAは、やはり改めて破格の存在だと思う。
【20位】
King Gnu 「飛行艇」(2019)
2010年代の終盤に突如として現れ、そして既に、次の10年のロック史を力強く更新し始めているKing Gnu。彼らこそ、僕たちのロックを救う若きホープだ。生まれ落ちたその瞬間から、まさに「ロックアンセム」としての壮絶な覇気を放っていた"飛行艇"。この楽曲が示した新たなロック観は、あまりにも不敵で、そして獰猛なものであった。そうか、ロックは、これほどまでに鮮烈で、刺激的で、だからこそ、どうしようもないほどに魅力的な表現なのだ。その原初的な事実を、彼らは僕たちに思い出させてくれた。2020年代、彼らが降り立ったこの新たな爆心地から、いったいどのようなロックの物語が紡がれていくのか。僕たちには、その歴史の証人となる義務がある。
【19位】
ストレイテナー 「From Noon Till Dawn」(2012)
ロックだけが映し出すことができる壮大なロマンの風景を、懸命に追求し続ける孤高のバンド、それがストレイテナーだ。日本のロックシーンは、これまでに何度も彼らが表明するロックのロマンに導かれ、彩られ、救われてきた。そしてきっと、それはこれから先の時代も同じだと思う。デビューから15年以上にわたって、ストレイテナーが強く支持され続けている日本のロックシーンに、僕はとても大きな希望を感じている。
【18位】
[Alexandros] 「city」(2010)
2010年代、一気にスターダムへと駆け上がった[Champagne]。この楽曲は、その怒涛の快進撃のはじまりの号砲であった。数々のロックフェスへの出演を重ねながら、一つずつ大きなステージへと昇格。2014年、[Alexandros]への改名という大きな転機を経て、そしてついに2015年、彼らは「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の念願のトリのスロットを担った。それは、臆面もなく高らかに「頂点」を目指す意志を掲げ続けてきた4人が、鮮やかな完全勝利を果たした瞬間であった。まさに、自分たち自身の手で描き切った美しきサクセスストーリーだ。あの夜の光景は、2010年代のロック史に刻まれるべき、最もドラマティックなシーンの一つであったと思う。
【17位】
椎名林檎 「丸ノ内サディスティック」(1999)
フェスへの出演こそ少ないものの、椎名林檎は、数限られたステージで圧倒的な存在感を僕たちに見せつけてくれた。特に、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」「FUJI ROCK FESTIVAL 2015」におけるインパクトは本当に凄まじかった。ホーン隊を含む総勢9名のビッグバンドを従えて披露したオープニングナンバー"丸ノ内サディスティック"。浮世離れした世界観と、深い文学性を帯びた言葉たち。そして、彼女の凛とした佇まい、冷徹な知性と批評性。全てが鮮烈で、それでいて艶やかで麗しい。あまりにも豊潤な音楽体験であった。あの日、あの時、椎名林檎のロックに出逢い、不可逆的に価値観を変えられてしまった若い世代のロックファンは、きっと少なくなかったはずだ。
【16位】
UVERworld 「ナノ・セカンド」(2013)
長い間、ロックフェスシーンと一定の距離を取っていたUVERworldが、2015年、満を辞して「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に出演を果たした時のことは、今でも鮮烈に記憶に残っている。TAKUYA∞が語った、UVERworldと「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の物語。デビュー時、同フェスへの出演を願い出て断られたこと。その悔しさを晴らすために、自分たちが信じるロックを懸命に磨き続けてきた日々。いざオファーを受けてもなお、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」への想いの強さ故に、すぐには承諾できなかった数年間。そして、ついに至った決意と覚悟の瞬間。その全てが、あの日の8曲に凝縮されていた。なお、UVERworldは、2019年に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」のトリを務めた。アーティストとフェスの物語。あの日、僕たちは、そのあまりにも美しい結実を目撃したのだ。
【15位】
マキシマム ザ ホルモン 「恋のスペルマ」(2013)
魑魅魍魎のロック・モンスター。まさに彼らは、日本のフェスシーンにおけるリーサル・ウェポンだ。あらゆるセオリーを度外視しながら、変幻自在に転げ回っていく超絶怒涛の展開。一切の容赦なく叩き付けられる自意識まみれの怨念と、殺傷力抜群の重厚なヘビィメタルサウンド。それでいて、彼らの音楽は、とびっきりにポップだから恐ろしい。こんなにも破天荒なバンドが、長きにわたって各フェスのメインステージを張り、そしてファンの熱量は衰えるどころか、年を重ねるごとに爆上がりし続けている。客観的には、とても摩訶不思議な現象のように思えるかもしれないが、一度でもホルモンのステージを体験した人であれば、彼らが強く求められ続けている明確な必然を感じているはずだ。
【14位】
UNISON SQUARE GARDEN 「シュガーソングとビターステップ」(2015)
僕たちが求める音楽を、僕たちの予想を上回るクオリティで提示して、そして、僕たちの心を最大限に満たすライブをする。そのストイックで誠実な姿勢、つまり、音楽の送り手としてのスタンスの正しさこそが、UNISON SQUARE GARDENが信頼され続けている理由だ。そして、"シュガーソングとビターステップ"は、彼らの音楽的探求の最も美しい結実の一つである。イントロが鳴った瞬間に生まれる会場の一体感。鮮やかな拍手の音色と歓声。ポップ・ミュージックの眩い可能性が、この楽曲に燦々と輝いている。今後どれだけシーンの潮流が移り変わっていったとしても、彼ら3人は、ロックバンドとしての揺るがぬ信念と誠実なスタンスをいつまでも貫き続けてくれるはずだ。
【13位】
the HIATUS 「Bittersweet / Hatching Mayflies」(2011)
the HIATUS、MONOEYES、そして、2018年に復活を果たしたELLEGARDEN。3つのバンドのフロントマンを務める細美武士は、まさに、日本のロックシーンにおける精神的支柱だ。3つのバンドの中でも、ELLEGARDENの活動休止後、細美のソロプロジェクトとして始動したthe HIATUSは、僕たちのロック観を抜本から覆す楽曲を次々と送り届けてくれた。万華鏡のように次から次へと巡り変わるサウンドは、どれも圧倒的な未知性を放っており、それら一つひとつの音が描き出していく雄大なサウンドスケープは言葉を失うほどに美しい。the HIATUSのステージでは、ロックの可能性が高らかに飛翔してゆく瞬間に立ち会うようなスリリングな音楽体験が約束されている。数え切れないほどのフェスのメインステージを彩り続けてきたthe HIATUSの至高のオルタナティブ・ロックに、今こそ改めて最大限の敬意を表したい。
【12位】
10-FEET 「その向こうへ」(2011)
全ての瞬間がハイライト。いつ観ても、何度観ても、10-FEETのステージは、やはりこの言葉に尽きる。バカみたいに笑えて、抑えようもないままに心が躍り出して、不思議なことにどうしようもないほどに泣けてくる。でも、それだけではない。10-FEETは、沸き立つエモーションの全てを、僕たちが生きる現実に立ち向かうための力に変えてくれる。3.11以降、10-FEETの3人は、等身大でリアルな感情を込めた数々の楽曲を通して、「俺たちは、このクソみたいな現実をどう生きるべきか」という生き様を明確に示してきた。笑って、踊って、それでも最後には涙が溢れてくるのは、ライブを通して、彼らの揺るぎない闘志に触れた必然だろう。
【11位】
Dragon Ash 「The Live feat. KenKen」(2014)
2019年時点における唯一の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」皆勤賞アーティスト。それがDragon Ashだ。日本のロックフェスの歴史は、彼らの歩みと共に紡がれてきたと言っても過言ではない。バンドと観客の剥き出しの魂と魂が火花を散らしながらぶつかり合う。そして、灼熱の熱気の中でお互いの魂が共震していく。これこそが、ロックの、ライブの、激烈なコミュニケーションであることを、彼らは僕たちに熱い実感を通して伝えてくれた。また、幾多の困難と逆境を乗り越えながら懸命にステージに立ち続け、日本のロックシーンを力強く牽引してくれた。彼らの「The Show Must Go On」の精神に、そして、「ロックフェスは、お前らのもんだ!」というKjの渾身の叫びに、僕たちロックリスナーは、何度も奮い立たされ、そして救われ続けている。幾度となく板の上に立ち続けながら、日本のロックフェスの礎を築き上げてきた彼らの功績は、やはり、計り知れないほどに大きく深いものであると思う。
《50位〜11位 タイトル一覧》
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