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弓を引くやる気

12月にウキウキと書いた「ラスボスをたずねて三千里」から、早4ヶ月。
正直にいって、最近少々リングフィットに飽きかけていた。

だって何度倒しても、ボスのドラゴは「くっ……お前、強くなったな」的な捨て台詞を吐いて次のステージへ飛び去ってしまうのだ。
そんな感じで、もう20ステージ以上が終わった。

もういい加減、トドメ刺そうぜ!!!


そう血気盛んに咆哮しかけたことは、一度や二度ではない。
とはいえ私の相棒(自称)のリングの目的はドラゴを更生させることだから、彼を抹殺しちまうわけにはいかないのである。

彼らの因縁やゲームの概要紹介は下記の記事で詳しく書いたので、そちらを参照していただきたい。

そんなドラゴのふてぶてしさに嫌気がさしていた私のもとに、インド映画『RRR』が颯爽と現れた。

『RRR』のあらすじをざっくりと説明すると、イギリス統治下のインドを舞台に、故郷に武器をもたらすという使命を秘めて警察官としての出世を目指す青年ラーマ(通称 兄貴)と、イギリス総督に誘拐された部族の娘を取り戻しに森から出てきた青年ビーム(自称 森の無知)という二人の主人公の闘争を描いた物語だ。

なんだかやたら真面目な映画みたいな説明になってしまったけれど、実際には血が湧き肉踊るはちゃめちゃな映画である。
お母さーん!!!」で始まり、「お母さーん?!?」で終わる、そんな映画でもある。どんな映画だ。

痛々しすぎる暴力描写、運命的な熱い友情、むせ返るようなハッピー感、壮大な音楽、圧巻のダンスバトル、悲痛な戦闘……。

こってりした見せ場は書き出すと止まらないのだけれど、私が特に心を打たれたのは二人の肉体の説得力だった。

石を投げた暴徒を捕まえろと言われたラーマは、単身暴動のなかにつっこんでいき、ボロボロになりながらも執念で暴徒を捕らえる。
そこまで身体を張ったにもかかわらず昇進が叶わなかったラーマは憤りに胸をもりっと膨らませ、拳でサンドバックを破壊してしまう。

少女奪還の準備として肉食獣の囮として森を駆け回ったビームは、背中を虎に引っ掻かれながらも虎を捕らえている綱を離さない。
二人とも重大な責務を持っているくせに、軽率に身体を張りすぎでは?

しかもその、身体の強靭さがものすごい。

主人公は二人とも、ここまでやられたらさすがに瀕死でしょう……というところから必ず立ち上がり、そのまま激しい戦闘に身を投じていく。

ラーマに至ってはナートゥを踊り狂った帰り道、塗装屋を聞き込みし、以前逃してしまった男ラッチュに出くわし彼をひっ捕らえて拷問、毒蛇に噛まれて瀕死の状態でアクタル(ビーム)のもとへ行き薬草治療を受け、そして彼の正体を知りビームと対決するのである。
踊って走って拷問して噛まれて死にかけて復活して、親友と戦闘。

身体がいくつあっても足りないコースである。
でも、ラーマならやるんだろうな。
そう素直に思えるのは、それまでにラーマが見せてきた出世への執念(ここではまだ彼の真の目的は明かされていない)と、圧倒的な筋肉の力だった。

対するビームも、兄貴(かなり重そう)を肩車してスクワットできる安定感やナートゥを踊りきる脚力、どれだけ鞭打たれても決して膝を折らない精神力を持ち合わせている。やはりただ者ではない。

そんな二人に出会ってから、私のリングフィットへのやる気があからさまに変わった。

まずBGMに『RRR』のサウンド・トラックを流すようになり、スクワットをするときにはラーマを肩車しているような感覚でおこなうようになった。
それまでの私にとってスクワットは、プランク、マウンテンクライマーに並ぶ「嫌いな筋トレ3選」のなかの一つだった。

ところが兄貴を肩に乗せていると想像した途端に燃えるようなやる気が芽生え、なおざりにひょこひょこ膝を屈することを恥じるようになった。
そしていまや、いざというときに兄貴を肩に乗せた状態で森を駆け巡れるように、深く膝を曲げて己の限界に挑みはじめた。


さらにリングアローという弓を引くような動作をする筋トレは、森のなかで神と化したラーマになったようなつもりでやるようになった。
「ラーマはラグ家の末裔〜」とはちゃめちゃにかっこいいフレーズが繰り返されるなか、ラーマはイギリス兵を矢でヒュンヒュン射まくっていく。
矢をキッと引き絞るその肩の盛り上がりと引き締まった背中の、美しいこと美しいこと!
私もいつか彼のような逞しき身体を手に入れたいものよと夢想しながら、気合いじゅうぶんに弓を引くようになった。

リングアロー

もう間もなく、私はリングフィットアドベンチャーをクリアするだろう。
その日まで私は、ビームのように兄貴を肩に乗せてスクワットに勤しみ、兄貴のように弓を引く。
そうしていつか、どんな兵士をも撃破できる肉体になりたい。

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